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「勝ち続けていく先の景色を」 (リーグ第37節・ガンバ大阪戦:4-1)

 試合前。フィールドプレイヤーがウォーミングアップに出てくると、Gゾーンからはメッセージ付きのダンマクが掲げられていた。

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「ジェジエウ、ここで待っているよ!!」

 怪我の手術とリハビリで帰国したジェジエウに向けたメッセージだ。

ジェジエウのゲーフラもブラジル国旗も出ていた。あとはダミアンが契約延長のサインをした直後だということもあってか、ブラジル国旗はよりたくさん掲げられていた。それを見たダミアンは、うなづきながら、掲げた両手を叩いて感謝の意を示している(ように見えた)。

 思えば、等々力競技場でゲームをするのは優勝が決まった浦和レッズ戦以来だ。あの試合でヒーローになったのが、貴重な先制点を決めた背番号4だった。

そのジェジエウが、再び等々力のピッチに戻ってくるのは、随分と先の話になる。

でも、待っているから。

頑張ってジェジエウ

大好きなサッカーが待ってるから

・・・スラムダンクの最終回みたいなシーンが頭によぎった、ホーム最終戦の始まりとなった。

そしてこの日のピッチには、もう1人の気になるブラジル人がいた。

 試合前の両チームの選手紹介で、その選手のアナウンスに温かい拍手が沸き起こっている。

 その人物は両手を挙げながら手を叩き、ホームサポーターからの拍手に応えていた・・・・ガンバ大阪のパトリックである。

 あまり知られていないが、パトリックが初めて所属したJリーグのクラブは川崎フロンターレだ。

 彼がやってきたのは2013年のこと。

風間体制2年目となったこの年は、個性豊かな選手がやってきたシーズンだった。ヴィッセル神戸から獲得した元日本代表の大久保嘉人を筆頭に、横浜F・マリノスから森谷賢太郎、コンサドーレ札幌から山本真希、ガンバ大阪から中澤聡太、東京ヴェルディから新井章太。そしてブラジルのアトレチコ・ゴイアニエンセから獲得したのがパトリックだった。

 先日、現役引退を発表した大久保嘉人は、この年にやってきて、その後、前人未踏の3年連続得点王という偉業を達成することになるのだが、当初はセカンドストライカーやサイドアタッカーとしての位置付けだったと記憶している。

 ストライカーとして補強したのはパトリックだ。事実、開幕当初にはレナト、パトリック、大久保嘉人を前線に並べた3トップを風間監督は採用している。ただ次第に、重戦車のようなストライカーであるパトリックよりも、小柄な大久保嘉人を中央で起用。

 風間フロンターレのサッカースタイルは、ゴール前にいるターゲットをめがけてクロスを供給したり、スペースにロングボールを走らせて1人で点を取れる重戦車タイプを生かすような攻撃を志向していなかった。求めていたのは、中央やサイドの緻密な崩しに対して、ゴール前の密集で相手を外す動きで仕留めることのできるフィニッシャーだ。これにいち早く適応したのが、大久保嘉人だったとも言える。

 その結果、パトリックはスーパーサブとしての役回りが多くなり、夏には出場機会を求めてヴァンフォーレ甲府に移籍。カウンターサッカーを志向するチームでは抜群の存在感を放ち、ガンバ大阪では2014年に国内3冠に貢献。Jリーグ屈指のFWとして活躍を見せていった。

 そしてあれから8年経った現在も、J1の舞台でスタメンを張り続けている。この日もゴリゴリとした突破力で車屋紳太郎と谷口彰悟のセンターバックコンビを苦しめていた。

 思えば、不思議なものだ。
同じ年にやってきた大久保嘉人は、川崎フロンターレで3年連続得点王という個人タイトルを獲得したものの、結局、チームタイトルは獲得することはできなかった。

一方のパトリックは、川崎フロンターレでは花開かず、いくつかのチームを渡り歩いたが、このガンバ大阪では国内3冠というタイトル獲得の喜びを味わっている。

 前節に対戦した大久保嘉人と今節に対戦したパトリック。川崎フロンターレで歩んできた道のりは、随分と対照的だったが、これもまた人生なのだろう。

 そして先日、契約更新を発表したレアンドロ・ダミアン。彼もまた、川崎フロンターレでストライカーとしてどんな生き様を見せ続けてくれるのだろうか。

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