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「走れ正直者」 (リーグ第33節・清水エスパルス戦:1-0)

 秋晴れの等々力競技場。
清水エスパルス戦ということもあって、スタジアムには「ちびまる子ちゃん」と「コジコジ」が来場していた。

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 試合前、清水側のベンチ前にはエスパルスのユニフォームを着て応援するまる子がいた。フロンターレのロゴが入った水色の服を着ていたコジコジは、川崎側のベンチ前にいた。どっちのキャラクターも存在感がある。

 国民的アニメである「ちびまる子ちゃん」は、さくらももこ先生が育った静岡県清水が舞台だ。原作が「りぼん」で始まったのは、今から35年ほど前だそうである。

 姉がりぼんを買っていたので自分も読んでたのだが、とりわけ初期のまる子は、子供の無邪気な部分よりもちょっとずるい部分、意地悪な部分が反映されているエピソードも多かった印象だ。家族や学校の話題が中心だが、遠足用の予算200円分をどう配分してお菓子を買うのかなど何気ない日常を切り取る視点も斬新だった。

 放映されたアニメはあっという間に人気が出て、社会現象になるぐらい大ヒット。主題歌だった「おどるポンポコリン」のCDも売れまくり、B.B.クイーンズはNHK紅白歌合戦にも出場していたほどだ。ちなみに小学生時代、運動会の演奏パレードの曲に「おどるポンポコリン」が採用されて、リコーダーで必死に吹いた記憶がある。

 作品に出てくるケンタというサッカー少年が、長谷川健太監督(現在FC東京)がモデルであるのもサッカーファンには有名な話だろう。ちなみに試合前、清水側ベンチ前にいたまる子が立っていた、まさにそのエリア、前節は長谷川健太監督が立っていたと思うと、なんとも不思議な気持ちになったのは自分だけだろうか。

 本題に。
試合は川崎フロンターレが1-0で勝ち切った。

 戦前、多くの人が予想していたであろう「攻める川崎フロンターレ」と「守る清水エスパルス」という構図のまま試合は進み、多くの人が勝利を予想していたであろうチームが白星を積み重ねるという結果で終わった。

 優勝のためにもっとも必要な3ポイントを積み重ねた結果に、試合後の鬼木達監督は安堵の表情でこう述べた。

「この時期は結果がすごく大事。1点取ってからは、守り切るところを選手がよく頑張ってくれたと思います」

 結果と同時に、内容的な部分に目を向けると、フロンターレが攻めあぐねていた印象が強い90分だった。前後半あわせてシュート数は9本。3週間のブランク明けということもあり、試合勘不足で思うように攻撃のエンジンがかからなかったこと。

 そして、清水が準備してきた守備組織を崩した形で生み出した決定機の数も少なかった。チャンスを多く作って決めきれないのは決定力不足だが、チャンス自体が少ない、いわゆる決定機不足の試合だった。だからなのだろう。

 清水戦から一夜明けた試合翌日、鬼木達監督は選手たちに向かってこう説いたという。

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