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不易流行|茶事と宇宙|2022.1.24

 和食が世界遺産となって久しい。中でも「懐石」の貢献度は誰もが認めるところ。懐石料理人中尾英力さんは、富山県南砺市利賀村で野菜や米を育てながら「懐石」を探求する。その簡素なしつらえと豊富な知見が人気で全国から声がかかり、席を設ける。新進気鋭の茶人岡田宗凱さんと中尾さんが東京都大井町で毎月行うのが「懐石秘密箱」、日本の文化の知識を蓄える場ではなく、懐石を頂きながら日本の美と一体になるという試み。茶人でもそうでない人にも人気で毎回満員御礼だ。

 昨日「懐石秘密箱」〜雪見の茶事〜に参加してきた。雪が主となる茶事席は、花の香りのかわりに香木「伽羅」に火をいれて香を聞くところから始まる。雪の灯りだけを頼りに、花瓶には花を生けず、水だけを目一杯張り表面張力で溢れるぐらいに入れ、まるでそこに花があったら…ということを想像させるのだという。皿や懐石道具も白は避け、雪の白にだけ心が向くような結界を作る。それが粋なのだ。

 次元は、世界中のみんな大好きなテーマだ。中でも立体に時間概念を加えた四次元は、物語に幅を持たせるのに有効で「マトリックス」「バック・トゥー・ザ・フューチャー」「ドラえもん」他にも多くの作品のメインテーマに据えられる。20世紀から21世紀の前半の物語は、四次元がメインステージといえる。では四次元のその先、五次元は何なのだろう。「心」なのだという。中尾さんは「茶事は、多くがおもてなしという心、すなわち五次元まで到達を求める」のだという。心が存在するには命という容れ物ががなくてはならない。命が六次元、どうやら十とか十一次元まで存在し、到達点は「宇宙の理」らしい。

 世界が平和であるためには、国家が平和でなければならず、県や地域が平和でなければならない、そのために仲間や家族、最終的には個人の安寧が必要となる。そこの個人の安寧のために茶事があるのだという。宗凱さんが「SDGsの認知率は上がったけど17項目のための行動をみんな知らないのです。そろそろ次のフェーズでしょうか」と問うてきた。SDGsも茶事も同じで「宇宙と個が繋がることが最も重要なのではないでしょうか?」と応えた。雪見の茶事が、そう応えさせてくれたのだ。

 着物ではなく、パタゴニアのフゥーディジャケット、膝が曲がらず胡座で参加した筆者を受け入れてくれ、気づきの機会を与えてくれた中尾さんと岡田さんに心からの敬意と謝辞を。

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