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養育費(共同親権・共同養育と養育費)

共同親権の国で「養育費」はどういう位置づけになるかというと、まず父母の養育の形態によります。

子どもが離婚前の部屋に住み続け、父母が一週間交代で育児にやってくる場合や、子どもが一週間交代で父母のそれぞれの家に行き来する場合は、両者の養育割合は5:5です。これで、父母の収入差がない場合に、「養育費はゼロ」になります。これは、全員が納得すると思います。ここがスタート地点です。共同親権では、養育費という「カネ」が大事なのではなく、養育という「行為」が大事なのです

しかし、養育割合が同じでも、父母の収入差が大きい場合には、収入が高い方から低い方へ「養育費」が渡されます。収入が低い親のもとで、子どもが困窮しては困りますし、子どもには、なるべく同じ水準で生活ができるようにしたいからです。

また、子どもが収入の多い親のみと住みたがった場合、それが本当に子どものためになるのでしょうか。? ⇒「
子どもは両親に愛されて育つことにより、健全に成長していくのです。ただ、収入差のうち、どのくらいを養育費にすべきかは難しいバランスです。

とはいえ、5:5の養育割合は、共同親権の進んでいるスウェーデンやフランスでも20%を超えません。ドイツだと5%くらいです。

現実的には、パパの家は週末と、夏休みなどの長期休暇の半分を泊まるくらいで、年間100日程度が多いのではないでしょうか。養育割合に差がある方が多いのです。この場合にも養育費は発生します。

例えば、30日の月で、パパの家は5日。ママの家は25日だった場合ですが、本来であればパパは15日分の育児をしなればならないところ、10日間をママに育児委託したことになります。そうすると、10日分の実費を払う必要が出てくるわけです

基本的に、パパもママも、自分の養育割合を増やしたがりますが、5:5だと子どもが移動で苦労したりするので、どこかで妥協して、共同養育計画を策定し、そのなかで養育費も確定しなくてはなりません。

なお、共同親権の国では、養育費は、行政が関与して、自動強制徴収にするのが普通です。不払いが起きても、養育費を受給できるはずの親が、わざわざ請求しなくて済みます。

このように、共同親権と養育費はセットなのです。


一方、日本の単独親権で、養育費があるのが不思議です。共同親権の場合は、「親権者同士の養育割合の差と収入の差を埋めるもの」ですが、単独親権だと親権者でない側に責任はないはずです。戦前の日本では単独親権でしたが、もちろん養育費はありませんでした。

現行民法を見ると、
819条で単独親権、820条で単独養育が定められています。単独養育なので、単独親権・単独養育の同居親が費用を負担すべきものです。養育費は原則としてないはずです。

もし、別居親に養育費を払えということは、「養育するな。養育費は払え」という支離滅裂な言い分になるからです。さらに、日本だと再婚相手が親代わりになってしまうことが多々ありますから、「養育するな。養育費を払え。親交換するまでな」というメチャクチャになります。

とはいえ、民法766条では、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。」

となっていますので、父母が協議で定めた以上は、面会交流と養育費などは義務になります。逆に言うと、協議もしていない、する気もないのに、「養育費を別居親が払わない」と批判する資格はありません

また、別居親たちは「面会交流と養育費」の取り決めを望むものです。多くの別居親団体は、面会交流と養育費の取り決め「義務化」を主張しています。

一方、同居親団体は、面会交流と養育費の取り決め義務化に、たいてい反対しています。それなら、別居親に養育費を払えという資格はありません。民法766条の規定に反しているからです。

令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告のP58・P59

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001027782.pdf

を見ると、同居親が養育費の取り決めをしない理由の1位は、「相手と関わりたくない」です。複数回答だと 50.8%にもなります。2位は「相手に支払う意思がないと思った」で40.5%です。要は、同居親が相手と協議する気がないのです。

では、話し合いたくない理由はなんでしょうか。面会交流の話をしたくないのでしょう。そうなら、民法766条の趣旨に反しますから、「別居親が養育費を払わない」と批判する資格はありません。

つまり、「別居親が養育費を払いたがらない」という全体傾向はありません。たいていの別居親は、面会交流と養育費の実施を望んでいます。

にも関わらず「別居親の養育費不払いが多い」とだけ論評されるのは遺憾であり、悪質な印象操作です。別居親差別はいい加減にすべきであり、養育費を拒否しているのは、主に同居親です

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