『家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台(1)』の廃案はない。そして、共同監護を入れ込むのだ!
【法制審議会家族法制部会第31回会議(令和5年10月3日開催)】
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00341.html
法務省たたき台がゼロ点だとか、マイナス点だとか言う人がいますが、私にはどうしてもそうは思えません。理念不明確で、骨抜きで、両論併記で未確定部分が多く、養育費の徴収強化もありますが、一応、共同親権であり、再婚相手が親という『代諾養子縁組』が激減し、『共同監護に合意』した両親はうまくいくわけです。
たたき台の2ページ(注1)を見れば、かなり原則共同親権だということがわかります。ここは、単独親権の抜け道をなくすことが大事です。
現行法で改正がゼロだと、代諾養子縁組という「親交換」=「別居親不要論」が幅を利かせ、地域の人(他人)が誰でも見学できる学校運動会でも、同居親に嫌われた別居親は追放されるという「他人未満」の状態が続きます。
現行法だと、共同監護に合意したとしても、法律が単独親権・単独監護権(民法819条、820条)ですから、単独親権者のきまぐれで、すぐに共同監護は破棄されます。さらに、交際相手という伏兵が共同監護に反対すれば、ほとんど崩壊します。このたたき台でも、合意があった場合は崩壊しないのです。
単独監護(監護者指定)になってしまったとしても、共同親権・共同監護権なので、進学先の決定など重要事項の決定権は一部残ります。「居所指定権」という最重要の親権がくりぬかれているのはひどい話ですが、児童虐待で一時保護になった場合は、別居親にも情報提供されます。そうすれば、監護者変更の審判を申し立てられます。現状だと情報はないし、親権者変更の審判だと認められる可能性は極めて低いのです。
そして、一部の親権を保持し続けられれば、断絶は難しくなります。一部の親権があれば、ないよりも交渉力はあります。
また、中途半端な法改正だと、次はいつになるかわからないという意見についても、廃案という法改正見送りでも、次はいつになるのかわからないことは同じです。廃案の場合でも、長くもなりませんし、短くもなりません。同じとしか言いようがないです。しかし、少しでも良く改正し、改正条文に「施行5年後見直し」の条文を入れれば、5年後には確実に再検討の審議が始まります。ただの廃案だと、何の保証もありません。ただのゼロです。
今することは、骨抜きに骨を入れることです。
特に、「共同監護計画」の策定義務化と、不履行への監護権制限などの「ペナルティー」を条文化することです。法務省案に共同監護計画が入っていない理由は、裁判所のキャパが足りない論だと思います。民間や地方自治体の活用、取り決めの簡易化など実務的な詰めも必要でしょう。
法務省たたき台がゼロ点だとか、マイナス点だとか言う人の傾向は、「一部を切り取り、その場合はどうにもならない」という論調なんですが、なぜ「全体像」を見ないのでしょうか?私には意味不明です。