見出し画像

犬を渡す

株式会社石黒金属製作所の犬を両親に渡す北山です。東大阪市で製缶、鈑金、溶接業をしています。

16歳半のマルチーズが亡くなったのが3月の終わりで、それから四十九日が過ぎた頃に犬を渡しに行くことにしました。

姉家族と犬探しに出ていた頃、僕の子供達も何故そんな姉の家に行くのか不思議がっていました。7歳と5歳の息子に、じいじとばあばに絶対に言わない約束で、計画を話しました。

息子たち2人は、じいじとばあばが寂しいといけないからと、毎週末実家に2人で泊まりに行っていました。そこで口を滑らさないか心配でしたが、絶対に言わないと言っていたので信用しました。

そんなこんなで犬を引き取る日になりました。僕と姉と5歳の息子とで、お店に受取りに行きました。犬は初めて会った時より家族の一員ぽい顔をしていました。

店員さんはやんちゃな性格ぽいですと仰ってましたが、やんちゃな方がかえって父も母も手間がかかって、小屋に顔を突っ込んだり、虚空を見つめる時間が減るので願ったり叶ったりです。

まだ赤ちゃんで、お腹はうすいピンク色をしています。めちゃくちゃ可愛くて、僕たちは目がずっとハートマークになりながらも、犬にストレスにならないように、慎重に車で実家に連れて帰りました。

運良く両親は買い物に出掛けていて、実家は留守でした。その間に忍び込み、犬のご飯やおしっこシートなど運び込み、ゲージなどを組立てました。

マルチーズはゲージに入れず、ベッドで一緒に寝たり、家の中全体がゲージの様になっていたので、今回はきちんと自分の寝床ができるようにゲージを設営しました。

O型の僕と姉は説明書も見ずに組み立てていくので、5歳の息子に間違いを指摘されて、テヘヘ、イケネッという風に、やり直したりドタバタしていました。

すると予定より早く両親が家に帰ってきてしまいました。

どうしよどうしよとなりましたが、もう出たとこ勝負で、普通に犬を抱っこして、前から家に居ましたみたいな感じで対面することになりました。

母親が先に入ってきて犬に気付き、なんなん?その子?と言いながら、ポロリと泣きながらも、拒否する訳でもなくスッと抱っこしました。

その後父親が入ってきて、犬に気付き、一瞬眉をひそめました。怒ってるのかな、まずいかなと思いましたが、この子はどうしたんや?と聞かれましたので、軽く経緯を話しました。

すると、父親は難しい顔で犬を抱っこして、また死ぬの見るのつらいと言いました。

一瞬、重い空気になりました。

でも、預かった命やし、大事にしたらんとなぁ、、と言いました。

父親の心はまだマルチーズが亡くなった時のままなのがよくわかりました。

それから、くわしく経緯を話しましたが、その前に僕の子供達が実家に泊まっている時に、チラチラと犬の話しをにおわせていたそうです。

息子が、もしも、もしもだけど、犬が来たらどうする?その犬の名前はこういうのはどうかな?などと言って話していたそうです。母はそんなこと考えられないわ、と子供の冗談と思っていたそうです。

母親は、やけに姉の家族と集まることも不思議に思っていたそうです。そういう前置きがあったことから、母親は案外素直に受け入れてくれたように思います。

父親には受け入れてもらえたのかは、正直わかりませんが、とにかく実家で面倒みてもらうことになりました。

とはいえ、犬は無邪気に寝転んだり、おしっこしたりして、何をしていても可愛いので、家の中の空気が前向きな方向に変わった気がしました。


それから、1ヶ月が過ぎました。


犬はもう我が物顔で、ものすごいスピードで家の中を走り回っています。溢れる生命力で、あちこち噛みまくりのおしっこしまくりで、母親はクタクタになり、父親も甘噛みされまくりですが、すごく可愛がっています。

僕にもなついていて、家に行けば飛んできて嬉しくてオシッコ漏らします。

呼べば体がちぎれるくらいのスピードで飛んできて、空中で反転してお腹が上向きになりながら膝の上に乗ってきます。僕はそれをマトリックス状態と呼んでいます。

店員さんが言っていたように、やんちゃな子ですが、実家に活気が戻ってきました。

ペットロスは簡単には癒えないし、簡単に忘れていけるものでもないと思います。犬を飼うことが解決でもないと思います。そんな難しいことは考えても答えは出ません。

来てくれた犬を大切にして、両親が元気になってくれたら良いなとおもいます。また亡くなった犬に手を合わせて、思い出を懐かしむくらいしか生きてる僕にはできません。

実家に行けば、嬉ションマトリックス犬が飛んでくる、それは素敵なことです。

https://ishigurokinzoku.jp





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?