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「厳しい指導」の弊害を学べる本3冊

はじめに

スポーツの指導方法を巡っては、「厳しい指導」はアリかナシかという議論について、常に意見は真っ二つに分かれています。
2020年3月に日本スポーツ協会(JSPO)が公開した調査報告書でも、「過去5年間にハラスメントを見聞きした割合」のうち、40%弱が体罰(しごき)を見聞きした、60%弱が言葉による暴力を見聞きしたと回答しており、いまだに選手に対して「厳しい指導」がされていることがわかります。

ここでいう「厳しい指導」とは、暴力・暴言・叱責・怒鳴る・威圧的な態度をとる等、子供たちが「怖い」と感じ、その後の行動や態度が萎縮してしまうような方法を指します。
法律用語ではありませんし、どこかに定義されている用語でもありません。ただの造語です。

「厳しい指導」が無くならない理由

こうした、選手や子供たちの尊厳を傷つける指導方法が無くならない理由としては、
指導者側の事情として、
①「厳しい指導」に本気で効果があると思っている
②「厳しい指導」を受けて育ってきた
③「厳しい指導」以外の指導方法を知らない
④「厳しい指導」をしないと、上手くならない、上達しないと思っている
などが指摘されています。
また、保護者が指導者に対して「厳しい指導」を望んでいるというケースもあります。

「厳しい指導」の副作用

私は、こうした「厳しい指導」には、一切賛同できません。その理由は、「厳しい指導」の結果、子供たちの命を失うことがあるからです。
今回は、そんな「厳しい指導」の末、命を失った子供たちの本を3冊紹介します。

「指導死」とは、「学校において教師の指導により肉体的、精神的に追い詰められた生徒が自殺に追い込まれる」ことと定義されています。
法律用語ではないため、裁判の結果、教師の指導と生徒の死亡との間に因果関係がないと判断されたり、教師に過失はないと判断されている場合もあります。

https://touken.tokyo-shoseki.co.jp/keyword/290

1冊目・指導死(2013年)

スポーツの現場に限らず、学校の先生による「指導」の後、自ら命を絶った子供たちの事例が7件、遺族の手記という形で掲載されています。
すべて2000年以降の話で、決して過去の話ではありません。

桜宮高校バスケット部体罰事件の真実(2014年)

2012年12月に大阪の高校で起きた事件について書かれた1冊です。
指導者だった先生は、刑事裁判で有罪判決を受けており、損害賠償責任も認められています

反体罰宣言 日本体育大学が超本気で取り組んだ命の授業(2019年)

スポーツや部活の中で、子供たちが亡くなった事例が7件掲載されています。亡くなった原因は、自ら命を絶ったものと熱中症や頭部の怪我によるものなど様々ですが、どれも適切な対応がされていれば救うことができた命です。

3冊以外の本や記事

紹介した3冊の他にも、遺族の方が作成した手記やインターネット上の記事など、探せばたくさん出てきます。

指導死は無くすことができる

指導死は、必ず無くすことができます。なぜならば、教師(大人)が指導方法(教育方法)を見直して、改善すれば良いからです。
大人の行動次第で、子供たちの命を救うことができるというのは、避けようがない自然災害や、一定の確率で生じてしまう交通事故とは決定的に違うところです。
学校の先生に限らず、全ての大人が
①今やろうとしている指導は何のための指導なのか
②その指導で誰が幸せになるのか
③目先の効果だけに目を奪われていないか
④同じ効果を得られる別の方法はないか
ということを、常に意識して頂きたいと切に願っています。

参考資料

神奈川県バスケットボール協会(アンケート調査結果・2019年)

笹川スポーツ財団(暴力を伴うスポーツ指導の経験と意識・2014年)

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