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日本にもチャイ屋があればいいのに。 - - インド・コルカタのチャイ屋事情と、チャイの作り方(ざっくり)。

ここらでお茶を一服。「チャイ」でもいかが?

「チャイっていうのは、アレですよね、ミルクティーで、生姜やスパイスが入っていたりする・・・」ってな具合に、日本では浸透しているのだろうか。
私、インドに通うようになってから「チャイ」が身近になりすぎて、一般的にどうなのかわからなくなってしまった。

・ミルクが入っているかどうか
・スパイスが入っているかどうか
・砂糖が入っているかどうか
・ミルクで茶葉を煮出しているかどうか
・インドっぽいかどうか

こんなことが、議論(?)になっているのかもしれない。

よくよく考えると「チャイ」も「チャー」も、そして「ティー」も「テ」も同義で、もとをたどれば「茶」だ。だから、たぶん上記項目のどれもクリアしていなくても、「チャイ」なんだと思う。

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チャイ屋の店先。コルカタ。
看板には「チャ」と一文字、大きく書かれている。

 

かの岡倉天心も、『茶の本 The book of tea 』で、中国の「茶」がすべての喫茶文化のはじまりだと強調している。

茶は薬用として始まり後飲料となる。シナにおいては八世紀に高雅な遊びの一つとして詩歌の域に達した。
白人はわが宗教道徳を嘲笑した。しかしこの褐色飲料は躊躇もなく受け入れてしまった。午後の喫茶は、今や西洋の社会における重要な役をつとめている。

世界を見渡せばいろいろな国で「チャイ」とか「チャー」と呼ばれているのに、「チャイ」がインドのミルクティとして認識されているのは、インド人が「チャイ」を飲んでばっかりなのが有名だからかもね。

・・・さ、つべこべ言ってないで、チャイ作ろ。


チャイのレシピ

先ほど挙げた項目を全部入れた、「ドゥードゥ・マサラ・チャイ」(牛乳・スパイス・茶)を作る。

BGMをインド音楽にすれば、「インドっぽさ」もクリア!

この「Chai」チャイは、「欲しい」という意味。
Tomake Chai は「君が欲しい」。
「チャイチャイ」と言えば、「チャイが欲しい」と伝わる。

 

用意するのは、
・水
・スパイス(シナモン・カルダモン・クローブ)
・しょうが
・茶葉(CTC)
・牛乳
・砂糖

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料理サイトではないので、分量や詳細は割愛。
・・・というか、いつも適当に入れて適当につくるので、自分でもどうやったらおいしくできるのかまではよくわからない。

手順は簡単。
潰したしょうがとスパイスを水から煮出す。
しょうがはすりおろしたりする必要もなく、包丁の側面を使って荒くつぶす程度でOK。

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沸騰したら茶葉を入れてさらに煮出す。

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濃い色になったら牛乳を入れてさらに煮出す。

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最後に砂糖を入れる。茶漉しで濾す。
以上。

スパイスはこのほかにホールの黒胡椒を入れたり、ナツメグを入れたりする場合もあるし、逆に、あるスパイスだけを1、2種類入れるのでもいいし、何も入れなくったっていい。実はインドでも、露天のチャイ屋はスパイスを入れて丁寧に作るような店は少ない。

ポイントは茶葉に「CTC」を使うこと。
CTCとは、 Crush, Tear, Curl の略で、「潰して、引き裂いて、丸める」製法でつくられた茶葉。紅茶の良い香りはあまりせず、苦めなので、牛乳で煮出すのにぴったり。

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今使っているのは、インドBrookBond社の「TAJ MAHAL tea」。これはまあまあ良いグレードの茶葉だと思う。
日本で探すとこういうのしか手に入らなかったりするが、インドではもっと雑に「Crush, Tear, Curl」 されたいわゆる「ダストティー」と呼ばれる安い茶葉のほうが、一般的に出回っている。本当はこういった安い茶葉で作る方が、より美味しいんだよね。

おそらく、、、
イギリス領インド帝国時代に、「午後の紅茶」文化に味をしめたイギリスが、ダージリンやアッサムに茶葉を発見して、「イギリス東インド会社」で独占してしまった。ファーストフラッシュやセカンドフラッシュのような良質の茶葉はヨーロッパへ流れてしまい、残ったクズの茶葉をなんとか楽しむためにと、インドでは「Crush, Tear, Curl」して、そのままでは苦みの強い茶葉をミルクで煮出して砂糖をいっぱい入れて飲んだ。それが「ドゥードゥ・マサラ・チャイ」、略して「チャイ」なのだろう。

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やっぱりチャイグラスで飲みたい。

 

インド家庭のチャイ事情(コルカタ)


5月某日のヌーベルミューズのラジオ番組ではチャイの話になった。シタールのまり絵さんとはいつも、コルカタでの飲み食いの話がはずむ。


まり絵さんの下宿先では、1日に何度も甘〜い熱〜いチャイが部屋に運ばれてきたらしい。

私はというと、人の家に遊びに行った際は、どこの家でも甘〜いチャイをいただいていたけれど、下宿先では、80代のおばあちゃんとの共同生活だったので、ブラックティー(CTCとリーフティー半々で淹れる)が基本で、ミルクや砂糖はあとから自分の好きな分だけ入れるという、日本と同じ形式だった。
というのは、おばあちゃんが糖尿病を持っていたから。

インドではみんな、甘〜いチャイや甘〜いお菓子が大好きで、若いうちから糖を過剰摂取している傾向があり、中年〜初老のころには糖尿病になってしまう人が多い。もし糖尿病になったら、どこへ行っても甘〜いチャイや甘〜いお菓子に溢れているので、自分を制するのに苦労しそうだ・・。

医学部に通うまり絵さんに、「やっぱりあれだけ甘いもの取るから糖尿病になるのかなあ?」と聞いたら、糖をコントロールする能力は人種・民族によって違うのだけれど、インドの場合、もともとそれほど高い分解能力がないのにもかかわらず、イギリス統治時代に急に食文化が変わって糖を過剰摂取するようになってしまったために、糖尿病が増えたのだと思う、とのことだった。

甘〜いチャイの文化は、イギリス統治の産物ってことだろうか。

「日本にもチャイ屋があればいいのに」とは言ったものの、もしあったらあったで、虫歯・糖尿へ一直線な気もする。
甘さ控えめなチャイをたまに自分で作る程度で満足することにしよう。


チャイ屋紹介(コルカタ)

最後に、コルカタ滞在中によく立ち寄った近所のチャイ屋をご紹介。
大体の店が、1杯5ルピー(10円くらい)前後で、店先で座れるように粗雑なベンチが置かれている。

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よくあるタイプの、道端チャイ屋。最近はちっちゃいプラスティックカップが流行っているが、熱いチャイを入れると変形するし(耐熱じゃないので溶けてるような気がする)、みんなポイポイ道に捨てるからゴミだらけになるし、私はもっぱら土に還る素焼きカップ派。
ルビーホスピタル前、EMバイパス沿い

  

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可動式チャイ屋。小さい紙コップに入れるタイプ。
ラビンドラバラティ大学の門の前。

 

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ここのお店は、店頭に石窯が作ってあって、炭で沸かすタイプ。犬も集う人気店。
コンナガル駅前。

 

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このチャイ屋のおじさん、綺麗好きなんだろうなあと思う。アイロンのかかったクルタ着用、きちっと散髪されたヘアスタイル。ビスケットは瓶にきっちりと納める。インダクションレンジ(電熱調理器具)でチャイ作ったり、時計が置いてあるチャイ屋なんて、他で見たことがない。
バラナガルバザール。

店構えも、チャイワーラーのキャラも、チャイの味も、店によってそれぞれ個性があるので、是非お気に入りのチャイ屋をみつけてね!



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