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『松丸家の育て方』に学ぶ「自分とは何か」※ネタバレ注意

 松丸家は、私にとって特別でした。子供4人をそれぞれの分野で輝かせる理想的な家庭。教育に力を入れていて、リソースが豊富で、環境に恵まれている。そんなイメージがあり、松丸家のファンでありながらも、この本を手に取るまでにはややしばらくの時間が必要でした。
 それは、私自身が自らの出自に甘えていたからです。私の生まれた街は、治安が悪くて、貧困者が多くて、スラム街と自称したこともあります。私は大人しかったので常にいじめの対象でしたが、相手のことは「頭の悪い下等生物」と本気で思っていましたし、「勉強してこんな汚い街出ていってやる」「頭の悪い奴がいるせいで授業のレベルが上がらない、だからいい教育が受けられない」と出自についてはかなりのコンプレックスを抱いていたのです。
 勉強して高校大学と徐々に地元から距離を置くようになってからもそれは持続していて、勉強やマナー、気品、そういったことで挫折する度に「もっときれいな街で生まれていたら」と思っていました。
 だからずっと彼らが羨ましかったのです。正確に言えば彼らだけではありません。通学電車で見かけたどこぞの附属小学校の子供たち。朝の挨拶が「ごきげんよう」だった大学の同級生たち。外見も内面も身につけてきたものが違いすぎて、登っても登っても追いつけない壁があるように感じていました。
 もちろん追いつきたくて努力しました。がむしゃらに努力するのは簡単でした。インターネットの発達した時代に生まれ、わからないことは何でも調べられる。生まれた街から出ていくために、高校の頃は修学旅行にもこっそり勉強道具を持ち込みました。大学に合格して、資格を取って、引っ越して、都会で働いて、でも私は、どんなに努力しても満たされることはありませんでした。みんなの持っている気品が羨ましくて、言葉遣いを変える。みんなの持っている環境が羨ましくて、街を変える。みんなのように綺麗になりたくて、顔を変える。みんなが羨ましい。みんなの持っているものが欲しい。みんなのようになりたい。そこには、自分がありませんでした。
 松丸家の皆さんは、ご自宅が特別中学受験などが盛んな地域ではなかったと、作中でお話されていました。お母様が薬剤師さんということもあり、さぞかし教育には恵まれていたことだろうと思っていたので、これは意外でした。4人とも、ほとんど100%自分の努力で、自分のやりたいことで輝いている。すごく反省しました。私は自分が具体的にどうなりたいかなど、考えたことがありませんでしたし、いじめてきた地元の人たちをいかに見返すか、いや、見下すか、それしか頭にありませんでした。やりたいことがよくわからない。将来どうなりたいかなんて見当もつかない。ただ目に入ってくる豪華絢爛を、片端から手に入れたい。こうやって文字にしてみると、本当に貧しい考えだと自分で思います。
 今自分は、やりたいことを見つけて、始めたところです。まだ一円にもなっていませんが、どんなにやってもつらくない。恥ずかしいとも思わない。ヘタクソでも。成功しなくても。
 もっともっと頑張りたい。身の上は一切関係ない動機で物事をやってみることで、私はようやく解放されたんだと思いました。
 そのきっかけのひとつがこの本です。
 皆様のご健勝とご活躍をこれからもお祈り申し上げます。


 また、今回iBooksにオーディオブックしか売っていなかったことをきっかけに、初めてオーディオブックを購入しました。
  意外にも聞き取りやすくて、少し耳の悪い私でも十分楽しむことができました。
  これはDaiGoさんの発案でしょうか?値段は少し張りますが、読むハードルがすごく低くてあっという間に完走できました。オススメです。

※画像、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。

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