【論文メモ】Norwegian ship-owners' adoption of alternative fuels (Mäkitie et al., 2022)

1. 概要

海運業界のGHG排出量の増加は、止めるのが難しい(hard-to-abate)と考えられている。本論文では、281社のノルウェー船主をアーリーアダプター(既に代替燃料を導入している)、アーリーフォロワー(5年以内に導入予定)、レイトフォロワー(将来的(6年以上)に導入予定)、ラガード(導入予定なし)に分類し、調査・分析を通して、船主毎の代替燃料への対応の違いを分析する。

2. メモ

・アーリーアダプターは革新的な技術の供給者のためのマーケットを形成し、更なる技術発展と代替燃料の供給・生産に必要なインフラの整備を促す。

・誰がアーリーアダプターで誰が対応が遅いのか、また何が(代替燃料の導入への)致命的なハードルで何がドライバーなのかを理解することは、エネルギー転換を支援したい政府にとって非常に重要である。

・著者の知り得る限り、船主の代替燃料への対応およびその多様性は、体系的な研究がなされていない。

・船主の代替燃料への対応は非常に限定的である。国際的なタンカーやドライバルクのセクターでは、市況のドライバーである荷主の環境への意識が低い。

・一方で、ノルウェーにおいては公共事業やエネルギー会社(エクイノール)からの需要が、それぞれフェリーや海洋補給船へのバッテリーエンジンの搭載を決定づけた。

・バッテリーエンジンは短距離フェリーに適したソリューションと見なされているが、長距離輸送においては、エネルギー密度の低さからピークシェービング(エネルギー消費のピーク時に備えてエネルギーを備蓄しておくこと)の目的に留まっている。

・Leeuwen and Koppen(2016)は多くの船主は危機志向(環境規制に従うことを志向する)であると述べ、Rojon and Dieperink(2014)は船主は風力推進の導入には「wait-and-see」戦略を好むと述べた。

・しかしながら、Algeret et al.(2021)は、大手海運会社は中小競合他社のコストを上げるために環境基準を引き上げることを望んでいると述べた。

・ノルウェー船主は、2000年代初頭にLNG推進システムを導入し、また2021年時点で世界のバッテリー推進船の40%を有している。

・世界初の水素燃料船が2021~2022年冬にノルウェーで運航開始すると予定されている。

・IMOよりも厳しい排出規制がノルウェーのフィヨルドに寄港するクルーズ船に適用される予定で、また複数のノルウェーの港が代替燃料の使用を動機付ける料金制度を導入している。

・代替燃料導入への障壁は経済的(イニシャルコストは非常に高い)、情報的(新技術への情報不足)、サプライチェーン(インフラ整備不足)、技術的不明確さ(代替燃料の変化は見通しづらい)が挙げられる。

・海洋支援船を保有する船主(その多くがアーリーアダプター)は内航船主(アーリーアダプターは少数)よりも船齢の若い船を持っていた。

・複数の船主は既にバッテリー、LNG、バイオディーゼルを導入している。

・一方で、49%以上の船主がバイオガス、アンモニア、メタノールは導入しないと回答した。

・海洋支援船や外航貨物船、水産養殖などのセクターでは、大多数の船主がアーリーアダプターかアーリーフォロワーに属している。

・一般的に、アーリーアダプターは規模が大きく、歴史が古く、また国際的にビジネスを展開している。

・アーリーアダプターは他のグループと比べ、情報面や政策面、サプライヤー不足などの障壁を低いと感じている。

・一方で、全てのグループが高い障壁と感じているのは経済面の障壁(高い投資費用)である。

・旅客船や海洋支援船においては、公共事業(ノルウェー当局)や契約上の要求(エクイノール)がバッテリー推進船の導入を促進した。

・長期間の収益、競争的優位、パブリックイメージの向上はアーリーアダプターやアーリーフォロワーの重要なモチベーションとなっている。

・Saether et al.(2021)は、ノルウェー船主は代替燃料を導入することで将来のビジネスチャンスを逃さないように努力していると述べた。

・ノルウェーや他国の政策立案者は、リソースを持たない船主へのR&D支援プログラムを作成中である。

・主な荷主(オイルメジャー、コモディティトレーダー、大手消費財メーカー)が船主に排出削減を求めるよう仕向けるような、マーケット・プル型のメカニズムの発展をサポートすることが重要である。

3. 出典

MÄKITIE, T., STEEN, M., SAETHER, E. A., BJØRGUM, Ø. & POULSEN, R. T. 2022. Norwegian ship-owners' adoption of alternative fuels. Energy policy, 163.

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