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市議会議員の仕事を聞く

LDL(木下斉所長率いるという地域変革に向けたラボ)は僕も所属するオンライン研究会です。そこで一緒に活動する七尾市議会議員の高橋まさひろさんにインタビューしました。市議会議員の先輩として取り組んできた政策や、考え方について聞きました。

写真は画像生成AIで作ったとは思えない雑な切り抜き写真になりました。「石川県能登半島の風景を入れて」とAIに作ってもらいました。


(牧)高橋さんメッセンジャー以外でははじめまして。忙しい中インタビューさせていただきありがとうございます。


(高橋)よろしくお願いします。


(牧)今日は公民連携を推進していく議員の活動を聞かせていただくということで、早速なんですけど、七尾市の職員の方は民間事業者との連携に対して前向きな人は多いですか?


(高橋)過去に何か良い連携があったかというと、あまりうまくいかないですね。これはやっぱりリーダーの姿勢の問題かなと思いますよ。5万人ぐらいの小さい都市であるにも関わらず、行政と民間の交流はあまりないですかね。


(牧)高橋さんは政策提言の中で工夫していることってありますか?

(高橋)どういうマインドで仕事をするかっていうことって、いくらでも言えるじゃないですか。こういう考え方が大事だよね、ということを結果とか事業で示すようにしています。行動で示していくしかない。市の事業一つ一つに対して、民間とどういうふうに関わっていくのかとか、民間と関わっていくにあたってはどんな人材育成が必要なのか、職員の人材育成としてどのような取り組みが必要なのか。そういうことが、僕の議員として大事にしている姿勢ですかね。まあ10数年議員としてやらせてもらっているので、その時々の考え方はあります。


あと、誰がやってもできる白いところには踏み込んでもしょうがないと思っています。


(牧)白いところ、ですか?


グレーの領域が議員が仕事をするべきところ


(高橋)黒いところの間に、そのグレーの領域って結構あるんですよ。お互いが歩み寄れるその分類の領域にしか、良い仕事ってないと思っています。白い領域っていうのは、誰でもできる業務としてやればいい。グレーって、犯罪すれすれって意味じゃないですよ。どこまでが民間で、どこまでが公共なのかって、その役割分担としてグレーの領域が結構あって、そこで仕事をする時に先に歩み寄らなきゃいけないのが、行政サイドだと思っています。なぜかって言うと、条例とか法律の解釈でできたりできなかったりするんですよ。そのグレーゾーンでしっかり活躍できる職員がどれくらいいるかっていうことですよね。良い行政かそうでない行政かって。


(牧)では高橋さんの中で、地域にとってどういう民間事業者が良い民間事業者だと考えますか?


(高橋)すごくシンプルで、市民の皆さんにどれだけ感謝されているか、ですよね。市民の皆さんに対してどれだけ良いサービスを提供しているかということだけですね。民間事業者がパブリックセクターと連携すれば、その力がもっと引き出されるだろうっていうことは、大してないと思います。パブリックマインドが社長が高いとか、地域の貢献活動をしているとか、そういうのは実はあまり関係ないと思いますね。本業で、地域の皆さんにどれだけ喜んでいただいているか、ということが重要にすぎないんじゃないかなと僕は思っています。


(牧)高橋さんから民間事業者を行政に紹介していくことってありますか?

ただで公共サービスを提供するのが行政の仕事だという誤解

(高橋)公共資産を活用させてもらいたい時ですよね。例えば、田舎なのでキャンプ場とか海水浴場の観光分野で公共セクターが持っている資産はどんどん民間に出していけば良いと思います。公共が箱物を建てて、ということではなく。田舎の駐車場でもお金を取ればいいと思うんですよ。公共だと駐車場にしてもミュージアムにしてもタダの事業をやってしまう。儲けてはダメで、タダで提供するのが公共サービスだと誤解していると思うんですよ。それが大きな間違いですよね。


だってタダって赤字にならないんですよ。100円とかもらえば、これ200円したらどうなるのとか、300円にしたらどうなるって考えになる。でも無料だとそういう概念の外にあって、逆にいくらでも突っ込めたり、いくらでもなんかだらしなくやれるじゃないですか。


(牧)ほんとそうですね。


(高橋)だから民間事業者を入れて有償サービスに変えていく、それを当たり前にしていくことだと思いますよ。行政が綺麗に清掃してすごい素敵なアクティビティを準備して、それをタダでやるっていうのは昔はそれでよかったのかもしれないですけど、今はもうそんなことはできないですよ。


(牧)利用率の低い公共施設ってたくさんあるじゃないですか。西尾市は利用率が低くても維持できる財政余力があるので、民間に解放していくような進め方はまだ見えてきません。公共施設の活用で何か良い取り組みがあったら聞かせてもらえないでしょうか?

公民館を無くす政策


(高橋)それで言うと七尾市って公民館がないんですよ。公民館を無くすっていう政策を、僕が議員になったときに一番最初に目指したのが公民館をなくそう、というものでした。今は七尾市は公民館からすべて、地域づくり協議会に変わりました。


(牧)西尾市でいうとふれあいセンターにあたる施設ですね。


(高橋)ふれあいセンターは教育委員会の所管ですよね。そこを外して、市長部局に所管を移しました。なぜかと言うと、公民館って福祉も防災もあって、社会教育だけやっているわけじゃないですよね。地域の人たちがみんな来て、手をかけています。社会教育は公民館活動の一部でしかないんです。だから予算を市長部局にして、社会教育の部分だけ教育委員会が予算化するプランにするという話にしたんです。そこで条例を変えて自主事業、収益事業ができるようになります。七尾市では旅行ツアーをはじめました。地域の民宿とかにお客さんを斡旋できます。


地域づくり協議会の収益部門が、要は電話や個別民宿の予約受付をすれば、手数料としてその協議会がお金をもらう。ちゃんと稼げるようにしました。


事務局の人件費も柔軟に変えられるようにしていきました。白で言うと、やっちゃいけないとされていることなんですよ。事務局員は一応公務員になるので稼いではいけないとか縛りがあります。それをできるような仕組みに変えてしまったんです。


(牧)それはやっぱり条例から変えていく必要があるんですか?


(高橋)そうですね。まず、まちづくり基本条例という大元の条例があって、その下にその地域づくり協議会とか、コミュニティセンターの設置に関わる条例を新しく作って、その中に収益事業が可能なように条例を書いておくというような感じですね。


(牧)それは僕も勉強したいところです。知りませんでしたけど、めちゃくちゃアクティブに変化を起こしていますね。


(高橋)日本でも数本の指に入るぐらいアクティブだと思います。だから前例もないしグレーなんで、見方によっては「ダメなんじゃないか」という人もいます。実際に市役所職員の担当によってはいい顔もしません。だけど、そういうところで体を張るのが僕ら議員の瞬間ですよね。グレーを黒じゃなくて白だって言い張ることが大事な局面があります。


議員の仕事は「黒じゃないじゃん。白でもないけど黒でもないから、やれない理由はないだろう」って言って既成事実を積み上げて前例を作っていくことですよね。


(牧)前例を作っていく仕事ができる議員として僕もそうでありたいです。


(高橋)そうですか?僕は人気なくなりましたよ、口が悪くて。


(牧)今、高橋さんが特に研究してることって何かありますか?


地域における人材育成


(高橋)地域における人材育成をどうしていくか、ですね。僕が商工会青年部に入っている理由ですけど。その商工会議所にいる事業者の人たち一人ひとりを覚醒してもらうって非常に難しいですよ。でも、地域の中小企業の事業者たち、特に若い人たちがマインドを変えていくことって、すごく重要だと思っていて、僕は政治家ですけど、実際のところ政治に期待するところはないんです。


見ればわかるとおり、1億2千万人の方たち、その暮らしを誰かが何かのスイッチを押したら良くなるとか、そんなことは起きないわけですよ。でも、西尾市は人口何人ですか?


(牧)17万人です。


(高橋)じゃ17万人を一度に幸せを実感できるようなスイッチが押せるかと言ってもないですよね。ってなったときに、結局は地域が大事だと思うんです。「地域が大事」ってみんな口を揃えては言うんですけど、地域ってどのくらいの規模ですか?


(牧)うーん。


(高橋)僕は自分の中で勝手に3000人ぐらいなんじゃないかと思ったんです。3000人ぐらいの幸せは5人ぐらいのグループで実現できるんじゃないか、と考えています。だから、スーパーマンはいないって話はよく出てくるんですけど、地域を支える、あるいは地域を豊かにするための。5人ぐらいのグループが3000人以上を幸せにしていこうぜ、っていう取り組みがどのくらい起きているか、っていうのが本当の地方創生だと思っています。


そこで、1人じゃダメなんですよ。5人ぐらいの仲間集めて何やるかって、そのいくつかある装置の1つが地域づくり協議会で動きました。やっぱり民間事業者が動くことだと思いますよ。起業人5人と政治家1人で3000人を幸せにするっていう取り組みがたくさん出てくるのが、この国の未来を作っていくんじゃないかなと思っています。


この社会がどうなるとかね。日本はどうなるみたいな話はいくらでもできるんですけど、3000人ぐらいだったら顔も名前も分かるから、やるしかないじゃないですか。自分がやらなかったらその人たちは萎んでいくかもしれない。


(牧)僕もまさにJCに入ったのは、やっぱり政治と実業が繋がってこそ意味があると思いました。熱量のある人たちが社会とどう繋がっていくのかに興味があります。高橋さんはどうやって仲間作りをしていますか?


(高橋)だから5人なんですよ。みんながみんなは無理です。僕が10年ぐらいやってきた1つの結論なので、その中でやり切ることを通じて、他の人たちが感化されていけばいいなと思っています。それで、その5人が次のなり手を増やすっていうのが仕事になります。


(牧)このチームを作るって、具体的にどういうことをやればチームってできますか?


(高橋)これも小さい事業をとにかくやっていくことですよ。地域内におけるイベントもそうだし。起業も、そこで「誰がいちばん身体張ってるんだ?」って誰かに言われた時に、それが自分だと言い切れるぐらい頑張れば、5人ぐらい集まるじゃないですか。5人のグループは小さい事業を通じて集まりますよ本当に。マルシェやるとか、小さい週末のマーケットとか、音楽イベントとか、ゲストハウスとかなんでも良いですよ。


(牧)小さなプロジェクトを達成して仲間を作っていくイメージですね!ところで高橋さんはLDLについてどう考えているのか教えてください。


LDLは自分が判断をくだす時の指針になる


コミュニティの形として、自分とは異なる能力を持った人たちがいる場にいることで、自分自身の判断の助けになると思うんです。「あの人ならここでどう考えるんだろう」とか。決断をするような時に、指針になるようなチームの中で自分も活動ができるということは、幸せな時かなと思います。そういうのって、なかなか自分の身の回りにそういう人がいればいいんですけど、それって運じゃないですか。


(牧)じゃ高橋さんたまにはLDLの公民連携議員ミーティングにも参加してください!


(高橋)あの、ちょっとまた機会を見つけて(笑)。


以上

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