綾瀬市のロケツーリズム〜地域活性化の新たな取り組み〜
昨日は綾瀬市のロケツーリズムの取り組みを視察してきました。観光地も駅もない東京のベッドタウンとして知られる綾瀬市が、どのようにして地域活性化を図っているのか、その独自の取り組みについて伺いました。以下、商業観光課長のお話しを元に綾瀬市の取り組みを紹介します。
特徴がないことを武器に変えた
綾瀬市では、平成24年にロケツーリズムの取り組みがスタートしました。当時、商業課長は地域活性化センターから市に戻り、観光に繋がる事業を立ち上げるよう指示を受けました。観光地としての特徴がない綾瀬市で観光事業を立ち上げるのは難題でしたが、「どこにでもある風景」が逆にどんな撮影にも使えると考え、ロケツーリズムに着目しました。
平成25年には、地域活性化伝道師でもある藤崎慎一さんの協力を得て、予算300万円(自主財源100万円)でロケツーリズム事業が本格的に始動しました。この年、綾瀬市は関ジャニさんのロケ誘致に成功し、地域の活性化に繋がる一歩を踏み出しました。ロケ誘致の成功は一過性のブームになりがちですが、綾瀬市では継続的な取り組みを通じて地域振興に繋げることを目指しています。
3つの効果
ロケツーリズムには3つの大きな効果があると言います。まず、綾瀬市が映像作品に取り上げられることで、市の知名度が向上します。例えば、テレビのCMと同等の効果を持ち、これまでの綾瀬市が番組で取り上げられた時間を、テレビ広告を出すのに換算すると約160億円相当と見積もられています。次に、観光地としての魅力がない町でも、ロケ地巡りや交流人口の増加を通じて地域経済が活性化します。特に「コト消費」が注目されている現代において、ロケ地を訪れる体験型観光が重要です。そして、市民が自分の町を誇りに思い、地域の魅力を再発見する機会となります。映像作品に取り上げられることで、市民のシビックプライド(地元愛)が高まり、地域の一体感が強まります。
綾瀬市では、商工会と連携して「綾瀬ロケーションサービス」を設立し、支援依頼やエキストラ募集などの体制を整えています。また、市長を筆頭とした「ロケーションサービス推進協議会」を設け、警察や県と連携してワンストップでの対応を可能にしています。さらに、市独自のWEBサイトを運営し、撮影実績やエキストラ募集、ロケの告知などを行っています。このWEBサイトは常に新しく更新され、制作会社に対して魅力的なロケ地としてアピールする役割を果たしています。
ロケ撮影成功のために
ロケ撮影を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、ロケ地の選定においては、観光地として有名な場所よりも多目的に使える場所が魅力的です。綾瀬市さんのサービス精神で西尾市の建物をあげて例えていただきました。佐久島のイーストハウスと西尾市の室場ふれあいセンターです。普通に考えたら、観光地として有名なイーストハウスを推奨したくなるかもしれませんが、映像制作の場合、室場ふれあいセンターの方が多目的に使えるロケ地として魅力的です。普段は何でもない風景でも、この普通の公民館は病院、警察署、市役所、一般企業など様々な見せ方に対応できる点が強みです。一方、イーストハウスはその場所特有のイメージが強く、他のシーンに転用するのが難しいです。
次に、ロケ撮影をスムーズに進めるためには、迅速な対応が求められます。撮影に関する窓口を一本化し、短期間での対応ができる体制を整えることが必要です。また、長期間の撮影になる場合、ロケ弁やケータリングの手配も重要です。市民団体との連携で、ケータリングサービスを提供し、制作費を抑える工夫も行っています。情報管理も欠かせません。撮影前に情報が漏れると、有名人が来ることがSNSで拡散され、多くの人が集まってしまうリスクがあります。ロケ情報の管理はロケ撮影の生命線ですので、厳重に行う必要があります。さらに、ロケ撮影の実績を積み重ねることで、制作側との信頼関係を築くことができます。過去の成功事例として、江口のりこさん主演の映画『愛に乱暴』の撮影では、1ヶ月間スタッフが密に連携し、作品のクオリティを高めることができました。
地域グルメの連携
ロケツーリズムの取り組みでは、地元の商業者と連携し、地域のグルメをプロモーションの一環として活用しています。例えば、視察で提供された弁当に入っていた「とんすきメンチ」は、地域の人気商品であり、イベントでも高い売上を記録しています。こうした地域グルメをロケ撮影の際に配布し、SNSで拡散することで、地域の魅力を広く発信することができます。
ロケツーリズムの成功には、マーケットインの視点が欠かせません。消費者が何を求めているかを深掘りし、その欲求を満たす手段としてロケ地を提供する必要があります。これにより、消費者のニーズに合った撮影が行えるようになります。また、ロケ撮影を通じて市民のシビックプライドを醸成することも重要です。市民が自らの町を誇りに思い、発信者としての役割を果たすことで、地域の魅力をより多くの人に伝えることができます。
ロケツーリズムの可能性
ロケツーリズムの取り組みは、地域活性化の新たな道として大きな可能性を秘めています。京都や東京都内のように観光コンテンツに恵まれた地域ではない場所でも、普段の風景が観光資源となり、しっかりとした体制を整えることでロケ地としての魅力を高めることができます。なによりロケツーリズムは、現状の建物や自然を活用し、ローコストで地域活性化を図ることが可能です。
綾瀬市の成功事例を参考にして、西尾市でもロケ誘致の取り組みを進めていただければと思いますが、綾瀬市はロケツーリズムのパイオニアとしてこれからも新しい方法を切り開いていく姿勢を見せていただきました。全国の自治体はこの綾瀬市をマネしている段階なので、金太郎飴事業ではなくて、西尾市ならではのロケーツーリズムを考えないと本当に良い事業にはならないだろうなと感じました。
綾瀬市の武器は、東京から近いということもあります。日帰りロケは制作会社としても経費を削減できます。西尾市は中京圏内のお客さんを掴むか、滞在してでも撮影してもらえるように何が魅力なのか訴えていく必要がありそうです。
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