『国をつくるという仕事』(西水美恵子)

本書は世銀で副総裁まで勤め上げた西水さんの彼女自身の腐敗した政治との闘いの記憶、現地民への共感の足跡、そして優れたリーダーの記録である。

自分自身、現在世銀で働きたいという思いがあり、手に取った本書だが、単なる世銀の仕事を知るに留まらない様々な思いを学ぶこととなった。

単純な感想を述べると、まず世銀で働きたいという思いがより高まった。自分が知らなかった事実として、世銀の運営は各国からの援助金でなく、世銀が発行する債券で賄われているということである。つまり、「国」が顧客でなく、国連加盟国の一人一人の国民が顧客たり得、また顧客であるというというのだ。こうなればこそ(当然、現実には異なるのであるが)、特定の国の意思に動かされることなく、真にその国・国民の発展に努めることができると考える。思えば、資本主義が良くも悪くも浸透した「企業」という存在にとって、最大の目的は(一般的に語られるところは)「利潤の最大化」である。私は競争がより高品質な製品やサービスを生み出す資本主義には、比較的賛成の立場であるが、それでもなお、製品・サービスの受益者と所有者・経営者の分離は組織として、齟齬を生み出すことも多いと考える。また援助金で運営されている国連も、各国の意図に左右されうる。当然、世銀もマーケットにさらされるとはいえ、国連よりも持続的に、かつ企業よりも多面的に投融資ができるという点において、非常に魅力的な職場であると再確認できた。

また世銀のような大きな組織体においても、開発を本当の目的にする以上、現場の重要性は極めて高いということを学んだ。大学で学んだように、上がってくる調査におけるデータは多様にゆがみ、多くのことを捨象していることが多い。自ら、現場で見聞きし、感じること=一次データに触れることを心がけるべきである。

本書は図書館からのレンタルであったが、長期的なことも踏まえて、購入してもよいと思える良書であった。

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