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バラナシのほとりで長髪の君と

 「人生の洗濯のために」旅に出た田舎者の大学生は、インドのバラナシに着いた。 上海のドミトリーでは自分の英語が全然通じなくてしょげた。 チベットからほかの旅行者とランドクルーザーをレンタルしてヒマラヤを超えた。明日は雪に埋もれて死ぬかもしれないと思った恐怖の夜もあった。でも、無事にガンジス河のほとりで汚い河を眺めている。
 
当時のインドでは大麻くらいは簡単に手に入った。お酒のほうが探すのが難しかった。お店で普通に売っている大麻入りのバングラッシーを飲んだだけで吐きまくった私はおとなしくしていようと決めた。日系ブラジル人の奥さんと日本人のカップルとはどうやって知り合ったんだろう。 彼らの宿によく顔を出し、ポットを回している横で私はそれを黙って見ていた。 奥さんも、実は妊娠中なのと私の横に座っていた。名前も何も知らなかった。でも、毎日彼らの宿に顔を出した。
次の町に立つとき、彼らの仲間の無口な人が送ってくれた。 ブラジル人の奥さんがいる日本人が「連絡先を聞いておいてね」と無口な人に言った。無口な人と私はガンジス河のほとりに座ってしばらく河を眺めた。それじゃあと私は去り、連絡先はお互いに聞かなかった。無口で長髪の人は今どうしているだろう。あのとき住所を聞けなかったこと、今でも思い出す。そんな人が世界のどこかにいるということ、きっとあなたにもいるということを、知ってほしい。
 
 

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