見出し画像

re:member

2016年から僕はロングステイプログラムの映像を作っています。
松戸で過ごした日々を、たっぷりと詰め込んだその映像は、スタッフ間では「バイバイ動画」と呼ばれ、いつもはアーティストが帰国する日や、帰国したあとにそっと、動画のリンクをアーティスト本人に送りつけています。

外から見たら活動の記録として毎年作っていると思われているかもしれませんが、実は僕にとってこれらの映像はアーティストに向けたプレゼントなのです。そう、ただ単に個人的なエールを贈るものとして映像を作っています。結果、それが記録映像としての役割を担っているかもしれません。

多くの方に見てもらうことをあまり意図していないので
内輪感たっぷりの、外部に出すにはなんとも荒削りで、その場の空気を体験した人にしかわからないポイントがかなり詰まっています。

ご飯食べたり、飲みにいったり、街の人と会ったり、時には苦悩したりして。アーティスト・イン・レジデンスの日常って、外から見たらわからないことだらけですが、動画にはまぎれもない日々の積み重ねが映し出されています。特別な活動かと思われますが、本当に日常とつながっているのです。
それをご覧になった方がどう思うかは、いつも興味があることでした。

今年もその作業を始めようとしたときに、今回のロングステイプログラムの募集要項に書かれた、ゲストリサーチャーの星野太さんの言葉を改めてなぞることにしました。

アンノウン・プレジャーズ——今回、PARADISE AIRのロングステイ・プ ログラムの選考に加わることが決まって以来、このジョイ・ディヴィジョンの1stアルバムのことを繰り返し思い出していました。
わたしはアーティストではなく、何らかのかたちでアートを生業としている人間でもありません。
それでも、わたしがアートやアーティストと呼ばれる人たちとたえず関わりを持ちつづけてきたのは、
彼らとの関係のなかでさまざまな「知られざる喜び(Unknown Pleasures)」を見いだすことができたからにほかなりません。
「すべて」に開かれた人ではなく、そうした密かな喜びを共有できる、孤独な他者との出会いを期待します。

アーティストとの関係のなかでさまざまな「知られざる喜び(Unknown Pleasures)」を見いだすこと。知られざる喜びは、決して誰にでも受け入れられるものではないかもしれません。
現に、僕も今回のロングステイ期間中は様々な疑問が生まれ、問いかけられました。名もなきその現象の数々は、果たしてただの「日常」であるのか、それとも何かが始まるまだ何も名前がついていないような「予感」なのか。

今回、この映像をつくるにあたり、思い出す、出来事の断片を再び集めることからはじめました。
僕が実際に体験した時間もありますし、他のスタッフが見た時間もあります。映像は、いくつかこの活動を紐解くようなキーワードに分類してみました。

出会うこと
食べること/発見すること
日常をおくること/記録すること
別れること

これらはbi-というより、レジデンスをするにあたって本当に毎日起こる出来事の数々です。こうして見てみると、私達の生活と何ら変わりないこと(もちろん出来事や場所は特別かもしれません)が行われていることに気付かされます。

「すべて」の人に開かれた映像では決してありませんが、
今回生まれた、知られざる喜び、とは何なのか。
それを少しだけでも12/8に共有できたらと思っています。

そして、その出来事を見てどう思ったのか。せっかくお話ができる場なので
みなさんとお話できたらと思います。

イベント詳細↓

そうそう、余談ですが、
星野さんはジョイ・ディヴィジョンの1stアルバムを繰り返し思い出していたそうですが、僕はオーラヴル・アルナルズという作曲家のアルバムをよく聴いていました。

bi-の中心メンバーの一人、キキが帰国する前日、何気ない会話の中で「remember」という言葉を何回か言っていて、その途端、目の前のワンシーンとともに頭の中で曲が流れて、いきなり映像が瞬く間につながりました。

そうやって組み立てていったのが上映会で流す映像です。

ちなみに12/6現在まだ出来ていません。もう一捻りできるんじゃないかと思って寝かせています。そして完成形はまだ誰にも見せていません。一回スタッフに見せてしまったので、これから作り変えます。予定されたものをみせるのは、なんか、ちょっと、ね。

(リンクは予告です)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?