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天路の旅人

敗戦をまたいだ8年間、中国からインドを徒歩で旅し、帰国後は一商売人として岩手県の盛岡で静かに人生を終えた西川一三。その生き様を『天路の旅人』の著作で追うことができました。

現代文明とは縁のない地で、西川が大切にしたのはその土地その土地でのコミュニケーションだったように感じました。

蒙古人の巡礼僧になりすますためにひたすら修行し、言葉を学び、真面目に働くことで信頼関係を築く。

おそらくは自分の功名のために争うなどなく、背負う荷物には生きるためギリギリの食糧しか持たず、ただひたすら、見知らぬ土地への旅に必要なことだけに黙々と取り組む姿はとても純粋に感じます。

私自身の人生を内省するには壮絶すぎて比較にならないと思う一方で、現代の私たちの生活との共通点もあるように思いました。

キャリア理論家のクランボルツが提唱した「プランド・ハプンスタンス」(計画された偶然性)という理論があります。それは、複雑な人間社会においては予期せぬ出来事や出会いや、これらによってもたらされる様々なチャンスが個人のキャリアを決定することが多い、という理論です。

クランボルツは、偶然の出来事を自分のキャリアに活かすための5つのスキルとして、以下を掲げています。

①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心。

西川の旅は予期せぬ出来事や出会いの連続、命をかけた選択の毎日だったと思います。西川はこれら5つのスキルを旅を通して磨き、120%発揮することで偶然の出来事を自分のキャリア=旅に活かし続けたのだと。

現代文明の中であろうと、原始的なその日暮らしの生活であろうと、人は決して独りでは生きていけない。社会の中で生き抜くための学びは命をかけるに値するほど重要であるということ。私がこの本から強く感じたメッセージです。

私にとって「社会の中で生き抜くための学び」とは何だろう。これはじっくり考えないといけないですね。

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