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#58 「毒気のない」の末路 | 古性のちの頭の中
何を思ったのか突然はじめたグルテンフリーの暮らしは自分に驚くほどよく馴染んだ。気づけばカフェのスイーツのページも自然と見なくなり、パンにも麺にも興味をもたなくなり。粛々と和食中心に食を楽しむようになった。
小麦粉から足を洗ったあとの体は驚くほどに軽くて、寝起きは快活、就寝は速やか。気のせいか頭もいつもよりクリアな感じがして「あれ、今日なんか顔がすっきりしてるな」と思う日も増えた。
なんだかそれがハイペースで理想の自分に近づいているような感じがして、
「ああもう自分はこのままずっと小麦を食べずに生きていきたいなあ」とほんやり考えていた矢先、わたしはこの小麦大国「タイ」に来てしまったのだ。
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わたしの生活は一変して(そう、文字通りとても大きく変わった)ココナッツミルクがよく効いたカレー味のラーメンやら、ぱりっぱりになるまで油で揚げた、中がもちもちのクレープやら、甘い練乳にひたっひたになったパンやら。とにかく小麦と関わらない日がなくなってしまったのだ。
体は重いがどうにも美味い。顔も丸いがどうにも口寂しい。
いつしかグルテンフリーをやっていた記憶すらどこか曖昧になって、当たり前のように摂取するようになってしまった。
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