漫画家がWEBコミックを自身でプロモーションするために自力で試してみたこと

※本noteは2014年に公開したRouteMブログより再掲しております。

こんにちは。漫画家の藍です。
今回は、私がGANMA!で連載しているミリオンドールという作品を、自力でプロモーションしてみた体験レポートについて書かせて頂きます。

なぜ自力でやろうと思ったか

私が自作品のプロモーションを自力でするに至ったのは、主に根拠もなく感じていた以下の理由のためでした。

・自分の作品のファンを可視化して増やすことが作家としての生存条件だと思った。
・GANMA!がローンチ後1年未満の新興サービスのため、媒体のネームバリューに頼れないと思った
・営業部や販売部のない媒体での連載作品のため、自力で集客する必要があると思った

自分のモードを作る人と売る人に切り分ける

なにかやろうと思い立った時に、まずしたことは、「今現在自分のマンガを読んでくれる人が少ない」ことに対してふたつの側面から課題を作ることでした。

【作る人としての自分の課題】  
 ・・漫画そのものが良くない → 画力向上やストーリーの研究を頑張る

【売る人としての自分の課題】
 ・・漫画そのものに辿り着く人の母数が少ない → 読んでくれる人を増やす方法を考える

なぜふたつに分けて考えたかと言うと、世の中の仕事は物を作る人と物を売る人の仕事が分かれていることが多いので、営業部のない媒体で担当編集も自分だけに時間を100%使えるわけではない今の状態なら、自分は物を売る人のぶんの仕事も兼ねた方が都合がいいのかなと感じたためでした。 そしてふたつを分けた方が、「作る人のプライドとしてはこんな売り方許せない」「売る人としてはもっとなりふり構わない方がいい」という自分の中の葛藤に対して、割り切った気持ちでいられていいと思ったためでした。

読んで欲しい人のことを調べまくった

今回プロモーションする私のミリオンドールという作品は、アイドルヲタクのバトルものというジャンルの偏った作品でした。そのため、色々な作品が載っているGANMA!という媒体を読みに来る人で、アイドルに興味がない人は手に取りずらく、王道のものや読みくちの軽いもの、リーチの広い恋愛ものと違って、不利な部分が多いと感じていました。 そこで、この偏りを逆に利用して人を増やすことにしました。

【作る人として】  
 ・・・取材を増やしリアルさやディティールにもっとこだわる。特集コンテンツを作って満足度を高める。

【売る人として】
 ・・・新たに獲得したい読者のTLを収集し、読んでいる媒体や興味のあるコンテンツ、自作品への反応を調べてリストアップした。Yahooリアルタイム検索で作品の反応や人気のある回をチェック 

集めた情報に対して人力営業

読んで欲しい人を調べまくったあとは、作る人としてやれることをやりながら、売る人としては地道な営業活動を頑張るのみでした。具体的には、文章を作ってメールを送りまくるの繰り返しです。

・リストアップした媒体に掲載依頼メールを定期的に送信(数が多かったので担当さんと分業)
・タイアップしてみたい人に営業メールを送る(営業先は自分で厳選する)
・アポがとれたら自分も面談についていってみる

うまくいったこと、いかなかったこと

地道に上記の人力営業を繰り返しているうちに、とてもつもなく有難いことに媒体掲載をさせて頂いたり、タイアップのご縁を頂いたり実を結ぶことも増えてきました。

KAIYOU.net媒体掲載
寺嶋由芙ちゃんとのタイアップ など

しかし、うまくいくことばかりではなく、想像以上に課題も多く厳しい世界と言うことも身をもって体感しました。うまくいったこと以上に実を結ばないメールの数の多さや、面談についていくことで自分の作品のビジネスとしての価値を品定め されることがどういうことなのか、肌で感じている毎日です。 予算もなく無名の新人ということへの風当たりを「売る人」として実感することが「作る人」のモチベーションにも影響するというリスクもとても大きいです。タフになることを覚えざるを得ない状況で、病んだり割り切ったり持ち直したりというメンタルの浮き沈みをどうコントロールしていくかが最大の課題と感じています。

やらなかった時より、やった方が読んでくれる人は増えた

自分のやっている方法が正しいかどうか、作家として必要かどうかは私もわかりませんが、デメリットや新たな課題も抱えながらも、当初売る人として立てた「読んでくれる人を増やす」という課題に対して、PV数など一定の効果を上げることが出来ました。 また「作る人」と「売る人」としての二つの側面からものを考えることができるようになり、どちらか一方だけをやっていた時より、両方が両方に対していい影響を与えられるという新しい自分の手ごたえにもなりました。 メンタルコントロールと言う課題や、PV数が増えたからと言ってすぐに結果に結びつかないという新たな問題も増えましたが、ひとつずつ課題設定して施策を行うというトライ&エラーを繰り返すことで、何もやらなかった時よりまずくなることはないという売る人の自信のようなものを身に付けることができたので、それが一番の収穫かもしれません。

これらは、マンガを読んでもらうために人力でなんとかするための泥臭いやり 方なので、賛否両論も分かれるし成功したかどうかはまた別の話になるので、これから個人事業主として自力でプロモーションする必要に迫られている人の何らかの参考事例になればと思いまとめさせて頂きました。

元記事RouteMブログはこちら

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