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なぜスプラトゥーン3は半年で100万人に飽きられたのか

アクティブユーザーが半年で100万人減ったゲーム、スプラトゥーン3

 この記事ではアクティブユーザーが半年で100万人減ったゲームであるスプラトゥーン3(以下本作)がなぜそんなことになってしまったのか、どうすれば良かったのかを解説していきます。

 普段から本作をプレイしていることで積りに積もった怨嗟によって生まれた記事ですが、本作をプレイしていない人にもなるべく分かりやすく客観的に事実を書き連ねていこうと思っています。

 この記事は通常プレイでは得られにくい情報も含まれています。そういったものに忌避感を覚える方は読まないことをお勧めします。

本当に100万人飽きたのか、それは想定外なのか

 100万人が飽きたことは客観的な事実です。ビッグラン(3ヵ月に一度程度のペースで開催されるイベント)の参加者数を調べた方がおり、その方によると発売から半年で約100万人が減っています。

 二日間の開催期間中に一度でもプレイすればカウントされるため、3ヵ月に一度の大型イベントでさえも半年で全くプレイしなくなったユーザーが100万人いたということになります。

 前提として、こういったゲームは初動が最もプレイヤーが多く、そこから徐々に減っていくのは当然です。

 しかしこの減り方は本作の開発元である任天堂のスプラトゥーン開発チーム、通称イカ研究所(以下イカ研)も想定外の減少のようで、ビッグランの報酬ボーダーの分け方が参加プレイヤーの上位%から固定値に途中から変更されました。

 上位%ではユーザー数の減少と共に難易度が高くなり続けるため、イカ研は事前に想定した難易度を大幅に超えたと判断したのでしょう。

 まとめると

・アクティブユーザーは半年で100万人減った
・その減り方はイカ研の想定以上だった可能性が高い

 ここまで飽きられてしまった要因は、決定的にこれがダメ! といったものではなく、様々な問題が積りに積もった所にあると思っています。ここからはそれらを個々取り上げて分析していきます。


運営の問題

長すぎるアップデート間隔と、それによる目新しさのなさ

 本作はシーズンという概念を取り入れており、シーズン毎に新しいブキやステージ、服装といった目新しい要素を追加しています。カジュアルに遊ぶプレイヤーにとっては、対人戦のバランス等よりもより視覚的かつ直感的な嬉しい要素でしょう。

 その間隔は3ヵ月です。結果から言えばこれは長すぎたようで「アプデ間隔が長すぎる」といった声をよく耳にしました。最近は聞かなくなりました。多分もう声を上げる人もいなくなったのでしょう。

 シーズンの追加要素をユーザーが消費する速度は凄まじく、話題になるのは最初の一週間が関の山であり、カジュアルなユーザーはそこで満足、あるいは飽きます。

 カジュアル層には不評だったアップデート間隔の長さ、では毎日プレイするガチ勢には好評だったのかというと、そんなことはありません。ガチ勢が注目するバランス調整もシーズン開始時と中間に一度ずつであり、つまり1.5ヵ月に一度です。

 対人戦のバランスに関しては後述しますが、ガチ勢にとって1.5ヵ月間隔の調整は、変わり映えのしない環境に幽閉される期間という認識が強いと思っています。

・カジュアル層にとってアップデート間隔に対して内容が不十分
・ガチ勢にって環境が変わり映えせず面白くない

でもイカ研も有限のリソースを割いているのだから、そんなに新要素を追加出来ない

 個人的には知ったことではありませんが、イカ研も任天堂の一開発チームであり、そこには金銭的な、あるいは時間的な事情が存在します。出来ることなら本作を誰もが認める神ゲーにしたいとイカ研も思っているでしょうが、有限のリソースを使っている以上それは難しいです

 問題だと思っているのは、リソースの割き方を間違えている点です。

 ロッカーという、集めた置物やファッションアイテムを飾って他プレイヤーにも見せられる機能がありました。

 もう誰も見ていません。

 というのも、ロッカーはゲーム中に自然に表示されることもなく、わざわざ見に行かなければ見られません。そのロッカールームも他に意味がある場所でもなく、一番暇なマッチング中は見られません。

 しかし、そんなロッカーのための置物はシーズンの度に追加されます。既存の3Dモデルのサイズを変えるだけなので簡単に実装出来るのでしょうが、リソースの使い方としては間違っている気がします。

 バトルの勝利画面をロッカールームで着替えているような映像にすることでロッカーを自然に映す、などの工夫があれば興味を引く要素になったとも思うのですが、現状は忘れ去られた毒にも薬にもならない追加要素です。

 個人的な見解として、優先すべきは新ブキ追加バランス調整だと思っています。それが最も多数のユーザーに支持されるコンテンツだから、というのが理由ですが、なぜかイカ研はあまり注目されていないロッカーや新ギア、ナワバトラーのカードといった要素にリソースを割きます。

・有限のリソースを非ユーザー目線で使っている

 これがイカ研の運営方針での最も大きな不満です。

遅すぎたDLC

 2024/2/22、本作のDLC第二弾であるサイドオーダーが配信されました。第一弾は街のスキン(スプラ1の街)だったため、実質的に最初のDLCと言えます。

 一人用モードであり、それが良かったかどうかについてはここでは省略します。問題は追加までが遅すぎたことです。

 本作の発売は2022/9/9であり、サイドオーダーまで一年以上間が空いたことになります。DLCの販売自体は第一弾から始まっていたため、Twitterにて「子供が欲しいというから(第一弾の頃に)DLCを買ったが、サイドオーダー配信時には飽きてやらなくなっていた」というツイートを目にしました。

 遅すぎましたね。

 エキスパンションパスのロゴに四色使われていることから第四弾まであるのではないか、という予想がありましたが、結局第二弾で終わりそうです。風の噂程度ですが、本作の開発が様々な事情で遅れたため色々削られたとも言われています。

 次回作スプラトゥーン4があるのであれば、十分なリソースと無理のない開発計画で進めて欲しいです。

・DLCが出る頃には飽きてたユーザーも多かった

対人戦の問題

 今までのカジュアル層も含めたコンテンツとは異なり、対人の環境や仕様といった踏み込んだ話をしていきます。

 ここからの前提として、私が良い対人バランスだと考える基準をお話しておきます。

 なるべく実力が近いプレイヤーが公平に集められ、その勝敗が正しくレートに反映されること、です。

バランスとか仕様以前にラグい

 ラグいです。なんと同じswitchの前作スプラトゥーン2よりもラグいです。これまでの、まだ好意的に捉えるユーザーがいるかもしれない要素に対してこちらは明確な悪です。ラグくて喜ぶプレイヤーはいません。

 ラグの原因は任天堂が自社サーバーを持っていないことや通信方式のP2P、プレイヤーの回線やswitchのスペック等様々な要因が考えられていますが、そこを議論しても仕方がないので無視します。

 スプラトゥーン4はラグくないといいな、と願うだけです。

ウデマエが上がりやすすぎて達成感がない

 詳細は省きますが、本作は前作までと大幅に異なるウデマエシステムを取り入れており、その結果やり続ければ勝率4割程度でも上がり続けるシステムになっています。

 ウデマエが最高であるS+に到達するとXマッチという独自のマッチングに参加出来るため、良い捉え方をすればより多くのプレイヤーがXマッチに参加出来るようになった、と言えます。

 しかしその過程でウデマエは無価値になり、プレイヤーにとって分かりやすい達成感は失われました。

「ウデマエがAからSになった」

「XPが2000から2200になった」

 どっちが嬉しいかは人によるとは思いますが、成長の実感は前者の方が強いのではないでしょうか。

直感的でモチベーションにしやすい指標がない

 これもアクティブユーザーがいなくなった原因の一つだと思っています。

ではXPは公正なのか→いいえ

 Xマッチではウデマエに変わり、XPという独自の指標があり、それを考慮されたマッチングが組まれます。早い話、他の対人ゲームにもあるレートです。

 やり続けたプレイヤーが皆Xに辿り着くであれば、XPはしっかり実力を反映した数値なのかと言えば、かなりNOです。

 XPの現在の仕様は3回勝つか負けるまでXマッチを行い、下記の表+レート差考慮分(ほぼ0)が増減する形になっています。

スプラトゥーン3公式より引用

 まともにゲームを遊んだことがあればおかしい計算式であることが分かると思います。

 XPの変動に最低保証があるのです。

 そのせいで、セット内で3敗しない限り上がり続けます(逆も然り)。本来実力の指標となるべきXPは、負け越さずにどれだけ上げられるか、という要素になり、レートとしての意義を失いました。

 前作スプラトゥーン2でのXPは3000以上は到達者が限られた世界トップクラスであり、3100に至っては全ユーザー中2人しか達成出来なかった偉業でした。

 本作でのXPは最低保証のせいでインフレにインフレを重ね、先日メロン選手がXP5000を達成しました。メロン選手が超実力者であることは間違いありませんが、そのメロン選手もシーズン期間中はほぼ毎日Xマッチをこなしていました。

 つまり、本作の高XPに求められるのは実力だけでなく長期的に継続する時間も追加されてしまっています。

 仮に3XP5000相当の実力者がいても、忙しくて週末にしかXマッチが出来ないのであればXP5000の到達は不可能に近いでしょう。

・実力の指標が純粋な実力の指標でなくなってしまった

 これは後述するサーモンランでも同様の問題が発生しています。これに対する解決は単純であり、前作までの仕様に戻すことです。しかしどうやらイカ研のプライドがそれを許さないようで、撤廃しろという意見は取り入れずアップデートにて最低保証の計算式などを変更していました。

最悪の内部レートシステム

 本作のマッチングはサーバーで行われるため解析出来ず、その内容はブラックボックスになっています。しかし内部レートが存在していることは解析によって判明しており、それがどのように扱われているのかは分からずとも、どのような場合に変動しているかが判明しています。

 本作のマッチングは
・持っているブキ
・XP
・内部レート
の三項目を参照して組まれていることが推測されています。

 この中で唯一プレイヤーに見えない内部レートは、ルールごとに分けられた数値となっていることが解析によって判明しています。

 つまり、オープンマッチ(フレンドと遊べるモード)とXマッチで共通の内部レートが参照されています。

 これは最悪です。

 自分よりも弱いフレンドと遊ぶと、自分一人よりも勝率が悪くなることは自明の理だと思いますが、それによって内部レートは自分一人で遊んでいるときと同じように減少していきます。逆の目線では、一人で遊んでいるときよりも勝率が良くなります。

 つまりフレンドと遊ぶことで、内部レートが歪んでいきます。

 内部レートは直接的にそのプレイヤーの実力の指標としてゲーム内で想定されてマッチングされているため、フレンドと遊んだことによって歪んだ内部レートは個人戦でもそのままマッチングに反映されます。

 実力の近いプレイヤー同士がマッチングすべきなのに、その基準が歪んでしまっています。

 内部レートの存在によって、Xマッチで実力の近いプレイヤーと遊びたい場合はフレンドと遊んではいけない、という状態になっています。

 また内部レートの変動はイベントマッチにも適応されているため、イベントマッチをふざけて遊んで本来の実力よりも負けが増えた場合も内部レートが歪みます。

 では内部レートが一切不要かと問われればそれは違うでしょう。内部レートがなければXPがリセットされたシーズン序盤は試合の中の実力者の均衡が取れません。

・内部レートがXマッチとそれ以外で別れていない

 そのため気軽に遊びにくい、というのがこの問題の全てでしょう。

バランス調整が薄味

 半年くらい前からボトルガイザーというブキが最強であり、半年以上前からも環境ではないもののかなり強力とされていました。
 発売から半年程度環境ブキだったスクリュースロッシャーやシャープマーカーも、弱体化されたもののまだ準強ブキとしての立ち位置があり、弱体化されて尚もっと弱いブキは無数に存在します。

 本作は強いブキはずっと強く、弱いブキはずっと弱いという調整がされています。

 その要因としてはメインサブスペシャルの総合力でバランスを取ろうとしている点や消極的なバランス調整などが考えられますが、結果的にユーザーからの評価は「目新しさがなく面白くない」に尽きます。

 1.5ヵ月という飽きるには十分な間隔で調整するのであれば、もっと大味な調整を期待しているユーザーが多いのではないでしょうか。

新ブキが「弱い」だけでなく「個性」もない

 本作から追加されたブキは13種ありますが、所謂環境に入ったのはその内2種だけでした。それ以外のブキは「新しいこと」以外に魅力がなく、その魅力も持続しないためほとんどが使われなくなっていきました。

 新ブキというシーズン毎の花形についての話題は大体「弱い」であり、次第に話題もなくなっていきます。

 特に最悪なのはスペースシューターとワイドローラーという新ブキです。

 他の新ブキは弱いながらもコンセプトは分かる中で、この二種は他のブキと差別化が出来ておらず何かの下位互換になっています。

 例えば射程有限のハイパープレッサーのようにする、ジャンプ振りも横振りにする等個性を出すことが出来たはずなのに、これらはゴミとなって埋もれていきました。

 結果シーズン序盤以降使われないため、目新しさのなさを加速させる要因になりました。

サーモンランの問題

 対人コンテンツに疲れたプレイヤーも集まる、PvEコンテンツ・サーモンランにも問題が多いです。

他ステージカンストでも伝説40スタート

 サーモンランには評価という独自のレートシステムがあります。クリアすれば+20、失敗すると段階に応じて最大-20です。これが固定値増減なのは対人ではないので良いと思います。

 問題はその初期値です。40時間ごとにステージなどが切り替わり、レートもリセットされます。このときの初期値は一定以上であれば全ユーザー一律でしたが、途中のアップデートによって持っているバッジによって変わるようになりました。

 そのステージである評価に到達するごとにバッジが貰え、そのバッジに応じてそのステージでの初期値が変わる、というシステムです。
 一見良いシステムですが、問題はバッジが適応されるのはバッジのステージだけという点です。

 例えば
ステージ「アラマキ砦」で伝説999(カンスト)まで至ったプレイヤーは「アラマキ砦」では伝説400でスタートできますが、「ムニエール海洋発電所」では伝説40からスタートです。

 実力の近いプレイヤーと遊びたいはずなのに、本作の仕様はそれを許しません。カンストバッジの価値を下げないである程度緩和するなら「他ステージのバッジは一段階下として(金→銀)参照する」等の解決策が考えられますが、一律で伝説40スタートです。

・実力の近いプレイヤーと遊ぶために時間をかけなければいけない

というのがこの仕様の問題点です。

カンストは実力の指標だが、やはり時間がかかる

 伝説999(カンスト)に到達すると、ステージの金バッジが貰えます。これはサーモンランにおける実力の指標として最もメジャーな立ち位置ですが、これを獲得するためにも案の定実力だけでなく時間が掛かります。

 サーモンランでのレートは40時間毎にステージ更新と共にリセットされるため、その間に何度もクリアを繰り返す必要があります。そのステージの銀バッジ所持により開始レートが伝説300になったとしても、そこから伝説999まで上げるには平均5時間程度掛かります。

 40時間中5時間のプレイが必須です。

・実力の指標に時間が必要

 個人的には、これはXPと同様に今すぐにでも変更しなければならない問題だと思っています。

オカシラゲージのせいでビッグランの理論値は水没

 サーモンランクリア時、オカシラという大きなボスが現れることがあり、オカシラを倒す(HPを減らす)ことで、報酬にウロコというアイテムが加算されます。
 ウロコはここでしか手に入らないアイテムであり、それを使って様々なゲーム内アイテムを交換出来る、という仕様です。

 問題はこのオカシラの出現の抽選方法です。

 サーモンランを一回始めた段階でオカシラゲージというものが一段階溜まります。最大で五段階まで溜まり、一緒にプレイしている味方含めた4人のオカシラゲージが溜まっている程高確率でオカシラが出現する、という仕様になっています。

 詳細な確率は省略しますが、オカシラはほぼオカシラゲージが4段階以上溜まっていなければ出現しません。

 つまり何が起こるか、

 何となく察せるかと思いますが、ウロコ集めの最高効率はスタートした瞬間水没して即失敗×5でオカシラゲージを溜める、という方法になります。勿論レートが犠牲になりますが、サーモンランには内部レートがなく、バッジによって次回の初期値は固定されているため4人全員が同意していれば問題ありません。

 この仕様の悪影響をモロに受けたのがビッグランです。

 ビッグランは途中から獲得出来るウロコの個数が倍になるという仕様が追加され、ウロコ集めをしたいユーザーにはチャンスになりました。そしてほとんど同時期に報酬ボーダーが上位%から固定値に変わり、またビッグラン自体の報酬は微々たるものです。

・ウロコ2倍
・ボーダーは固定化
・ビッグラン自体の報酬は微々たるもの

 つまり、ビッグランはオカシラゲージが溜まっていない間は水没安定です。ビッグランにはバッジもないためクリアに価値はほとんどありません。

 流石にそこまで効率以外を捨てたプレイヤーは少ないため野良は平和ですが、ビッグラン開催期間中は「オカシラ周回」を募集しているツイートが沢山流れます。

・オカシラゲージによりクリアが無価値どころか時間の無駄のゲームが生まれた

 オカシラはWAVE3クリア時に20%で出現、では何がダメだったのでしょうか?

全ての問題は「これ」から生まれている

 ここまで数多く上げてきた本作の問題点は主要な一部に過ぎず、実際にプレイしているとより多くの細やかなストレスフルを体験出来ます。

 どうしてあの任天堂がこれほど杜撰なゲームを作ってしまったのか、その問題は「イカ研内で方向性や目標を共有出来ていないこと」な気がしています。

「どの層のユーザーを狙って」「どう思って貰いたくて」作っているのかが曖昧なものが多い、つまりコンセプトが不明瞭なのです。これはユーザーに届ける手法が悪いから分かりづらくなっている等ではなく、そもそもイカ研も分かっていないのでしょう。

 おそらくswitchの後継機までの繋ぎとして開発されたことや、任天堂としては実験的取り組みである継続的運営や新しい通信方式、何となく見えて透ける人員削減によるリソースの不足など、グループ内でのコミュニケーションの機会が不足した要因は幾らでも考えられます。

 もしスプラトゥーン4を開発することがあれば、もっと何をしたいのかを具体的にした上で、リソースと相談し無理ない開発計画を立てて素晴らしいゲームを作って欲しいと、切に願っています。

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