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完全版奴隷日記

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映画業界・映画を教える高等教育機関で実際に私が経験したことを、ノンフィクションでお届けするシリーズ。
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#ハラスメント

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#3】

2019年秋、J太郎が遂に爆発する。そろそろ外でダベるのがしんどくなって来た季節の話。この頃、一つ上の先輩、スナフキンと私とJ太郎の三人でよく一緒にいた。スナフキンは卒業後、東映に入社する美術部の先輩で、ポンコツながら愛嬌のある人間で、「飲みに行こうよ〜」と纏わりついてくる姿が脳裏に残っている。いつも木陰から手を振っていた印象があり、私は彼をスナフキンと呼んでいた。見た目は完全にアカルイミライの浅野忠信だが。やはり黒沢清が好きなようで、美術監督の安宅紀文さんを崇拝していた。

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映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#2】

夏きたりて、セット完成!!『濡れたカナリヤたち』クランクイン約1週間前、ずっと付きっきりだったラブホテルのセットがようやく陽の目を浴びる。途中で何度も怒られながら、殴られながら、そして時には孤独な作業を強いられながら、遂にJ太郎はセットを完成させる。嬉しさの余り、予定に無かったセットでの「テスト撮影」を行い、照明を仕込み、俳優部も呼び、本番さながらの予行演習が行われた。セットをスタジオに建て込み、イメージ画と殆ど同じ見栄えになったセットを見て、 「俺、やってみてほんまに良か

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#1】

アキさんと出会った2019年春私がアキさんと親しい間柄になったのは、2019年春のこと。我々は当時、大学3年生だった。それまでは、単なる大学の先生という認識くらいで、ほとんど話したこともなかった。 当時の授業内課題で制作することになっていた、映画『濡れたカナリヤたち』において、ラブホテルのセットを作ろうと画策し、アドバイスを求めに行った事から、交流は始まった。セットを作らないかと私に提案したツイマ君、そして美術志望のJ太郎、私の三人で学内スタジオに赴いたのが始まりだ。以下、

”お前らはタダで働く奴隷” 【映画業界 ハラスメント体験記#0】

はじめにアップリンクの浅野氏によるパワハラ問題の告発に端を発し、続々と映画業界の労働環境を是正するよう求める声がSNS上に溢れている。それはプロフェッショナルとして働く映画製作の場においても例外ではなく、あろうことか高等教育の場に於いても例外ではない。死にゆく現代日本の映画業界とは、こういったハラスメントや暴力暴言・ほぼ無給とさえ言える給与形態、それを甘んじて受け入れている若者がいてこそ成立しているのだ。 今回は、私の実体験を記そうと思う。今後、映画業界で食っていこうとする