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完全版奴隷日記

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映画業界・映画を教える高等教育機関で実際に私が経験したことを、ノンフィクションでお届けするシリーズ。
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#業界あるある

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#13】

昨日までの記事、長々とご愛読ありがとうございました。キリよく全10回にまとめようとしていたのですが、色々と描写を削っていくうちに、 「映画業界の実情を話すのなら、カットしちゃいけないんじゃないか」 と思うようになり、結局全13回となりました。 私がこのハラスメント体験記、奴隷日記というのを書き始めたのは、2020年の夏にまで遡ります。このnoteに活動を移行させる前、個人ブログにて多くの反響を読んでいたシリーズで、noteに移行させる上で、このシリーズだけはきちんとした

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映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#12】

突然のクビ宣言!昨夜の胸糞悪い居酒屋のことは、すっかり忘れているアキさん。いつものように早朝、アキさんとJ太郎を乗せ、現場に直行する。この頃には、駐車場での長時間待機も慣れたもので、アキさんのいない隙にコンビニでジャンプを買ったり、仕込みで買っていた小説を読みながら過ごしていた。悠々自適、明日には撮影休日で大阪に帰れる。いい気分だった。 昼時になって、J太郎が入ってくる。 J太郎「お疲れ〜!暇やろ〜、飯休憩やって」 飯場に向かった。J太郎は周りのスタッフに可愛がられてい

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#11】

※今回の記事では、差別用語が複数出てきます。ありのままの事実を伝えるためのものです。差別を助長させるためのものではありません。読んで不快になる方も、存在するかと存じますが、ご承知の上でお読みくださいますと幸いです。 無人の居酒屋、明日が終われば撮影休日前回の1000円事件から一夜明け、J太郎が金を払った日の夜の事。 本作品の現場では、新型コロナウイルス対策として、全スタッフ・キャストに外食禁止令が出され、現場でのマスク着用や、手洗い消毒の徹底管理が為され、現場に入る人間に

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#10】

訣別の狼煙、周到なJ太郎!前回の記事から数日が経った日のこと。この日は現場へアキさんだけを送っていった。その後、私とJ太郎は別シーンの家の掃除に向かった。清掃の他に、仕込みの美術(家具)を買い出し、運び込んだ。ずっと愚痴を吐いてはいたが、作業だけは手を止めず続けていた。そんな我々は、反逆の狼煙を上げる。 この日、アキさん抜きでの作業途中、ナガサワさんが遊びに来る。彼も美術助手としての仕事がない一人だった。実際には仕事はあるのだが、何度も言うように、ギャラを払いたくないが為に

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映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#9】

激動の一日、それぞれの空前日の酒も覚めぬまま、「今日はクランクイン」と、意気揚々と起床した。散々な仕込み期間を終え、ようやく訪れたクランクインだ。 が、私は前日から「次の場所の仕込みの買い出し」をナカと共に仰せつかっていた。買い出しとはいえ、朝の6:00に店は空いていないので、ナカはまだ寝ていた。名古屋までお使いを頼まれていたハチ子も、同じくまだ起床の必要はなかった。J太郎とアキさんと恋ちゃんは現場組だったので、私は彼らを送るために同じ時間に起床した。 アキさん凡ミ

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#8】

深夜の爆走、タイムリミットは日の出までに前回の予告通り、クランクイン前日の深夜の居酒屋の話を始める前に。 その前日の夜のこを書こうと思う。私は前作『濡れたカナリヤたち』の映画祭出品の締め切りのために、大阪に戻らなければならなかった。当初は3日間だけの愛知滞在予定だったが、それが延びに延びたことが要因だ。 私「大阪戻らないといけないんですが」 アキさん「なんや」 私「カナリヤの件で」 アキさん「それやったら今から帰るか?あ、でもそれじゃこっちが動かれへんなるなぁ。夜に

映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#7】

美術予算問題ハチ子たちが来て2日目のこと。私が愛知に来て、5日目のことだ。クランクイン前日であり、アパートの仕込みに監督チェックが入る日だった。前日に間に合う算段はついたとは書いたが、その算段は、あくまで7:00~22:00の労働を前提としている。やはり早朝から作業は始まり、ここまで5日連続15時間労働を繰り返した我々は、かなり疲弊していた。その日の昼飯で事件は起きる。もう何度目の事件かわからない。 この日も昼飯をとばして作業を進めた我々は、空腹と疲労感一杯の中、15:30