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『エクシルディアRPG』ってどんなシステム?

中世ダークファンタジーの同人TRPGシステム『エクシルディアRPG』の魅力をお伝えしていきます。いつもの宣伝と比べるとかなり掘り下げた内容になっておりますので、「初めて聞いたぞ」という方も、「実は気になってるんだよね」という方も、この記事を参考にご検討頂ければと思います。



Ⅰ.ダークな世界観

最初に説明すべきは、やはり中世ダークファンタジーとしての重苦しく陰湿な世界観でしょう。エクシルディアは「悪夢の災厄」と呼ばれる事件の影響で、老若男女問わず全てのキャラクターが呪われた力をその身に宿し、怪物に変身できるようになっています。この呪いはPC・NPCを含めた文字通りの全員が対象であり、どんなモブキャラも一人ひとりが変身後の姿を持っているのです。

そして、変身し続けた人間はやがて正気を失って「異形化」し、二度と元の姿には戻らなくなります。厄介なことに、悪夢の力は生身の人間よりも遥かに強力であり、異形を確実に倒すためには自分達も変身しなければなりません。今日もまた、生き残るために変身した誰かが異形化します。

この異形どもが各地に溢れ返り、魔法の超大国エクシルディアは滅亡しました。PC達は荒れ果てたゴーストタウンを探索し、かつて人間だった異形、混乱に乗じて活動する盗賊、そして後述する敵対勢力などと戦います。

さらに、正気の生き残り同士も対立しています。「翠玉同盟すいぎょくどうめい」と「新エクシルディア」の二大勢力は、悪夢に対する方針や政治的な思想の違いから災厄後のエクシルディアで覇権を争っているのです。ただでさえ危険な異形どもが徘徊しているにも関わらず、両者はほとんど戦争状態と言って差し支えありません。PC達も二大勢力のどちらかに所属しているため、任務によっては人間同士で戦う必要があります。


Ⅱ.「変身」の楽しさ

もちろん、PCも先述した怪物に変身します。キャラクタービルドで選択可能な悪夢は実に21種類、サプリメントの追加データを含めればさらに増加します。デーモン、スライム、マンティコア、ドラゴンなど、ファンタジーらしい個性的な変身能力はいずれも非常に強力です。

本システムはパーセンテージ・ロールによる能力テストを採用しており、1d100を振って能力値以下であれば成功します。ただし、人間の基礎能力はどんなに強くても75%が限界で、常に失敗の可能性があります。そこで、悪夢に変身すると残りの25%が開放され、100%に手が届くようになるのです。実際に強化される能力値は悪夢の種類次第ですが、何にしても頼りになります。さらには変身中にしか使えない特別な技能も複数存在するなど、普通の人間との差は圧倒的です。

しかし、当然ながらデメリットもあります。PCは変身し続けることで徐々に理性点を失ってしまい、これが尽きると直ちにその場で異形化=ロストしてしまうのです。異形化は単にPCが使えなくなるだけでなく、そのPCと同等の性能を持つエネミーが味方を襲うことになるため、これだけは避けたいところ。何とか工夫して人間の力だけで戦うのか、今ここで変身して悪夢の力を借りるべきなのか、セッション全体を通しての駆け引きが求められます。


Ⅲ.重厚なデータ

多いのは悪夢の種類だけではありません。PCの人間の部分、災厄以前の生活を決める経歴は全部で56種類も収録されており、経歴と悪夢だけでも幅広いキャラクタービルドを楽しめます。それらに付属するアイテムや技能などの数も十分です。

ジャンルとしては所謂「データゲー」に分類されるため、キャラクタービルドの作業自体が好きな方には非常におすすめできるシステムです。一方で、ルールブックを読むこと自体に慣れていないと、やや敷居が高く感じられる部分もあります。このため、初心者向けの遊び方として「ライトビルド」が用意されており、細かい調整を省略して比較的簡単にキャラクタービルドを行うこともできます。


Ⅳ.迅速で奥深い戦闘ルール

データゲーとなると、戦闘シーンはかなり時間がかかりそうに思えます。しかし、エクシルディアRPGは処理を高速化するために様々な工夫がなされているため、実際の挙動はデータの量から想像できない程に軽快です。

特徴的なのは「セットアクション」のルールです。これは、予めキャラクターシート上で複数のアクションを組み合わせたプリセットを作っておき、実際の戦闘シーンでは作ったプリセットの中からどれかを選んで戦う、というもの。PCがどんな動きをするのか、キャラクタービルドの段階である程度決められている訳です。戦闘シーンの大部分は、手元のセットアクションを呼び出すだけでテンポ良く進行します。

また、ダイスを振る場面も必要最低限になっています。ダメージロールや回避のテストは原則存在せず、計算で使うのはほとんど固定値だけ。ランダム性のない同じ数字を何度も使用するので、GMもかなり覚えやすいです。加えて、攻撃時は命中のテストに失敗しても最低限のダメージが発生する仕組みになっているため、なかなか攻撃が当たらなくてゲームが先に進まない、という時間は存在しません。

以上のようにかなり単純化されていますが、尖った個性を持つ技能が数多く収録されているため、実際のやり取りは寧ろ戦略的です。エクシルディアRPGの戦闘シーンは「速くて楽しい」を目指して設計されています。


Ⅴ.シビアかつ整ったゲームバランス

ルールブックだけでもかなりのデータを抱えている上にサプリメントまで配信されているシステムですが、最新のアップデートを反映した「第6改訂版」のゲームバランスは非常に良好です。特に悪夢に関しては間違いなく全てに使い道が存在し、PLの好みを優先しながらもしっかり戦えるようになっています。

ただし、簡単であるとは限りません。エクシルディアRPGのゲームバランスは整っていますが、同時にシビアでもあります。PCとNPCの間で死亡(ロスト)する条件がほとんど違わず、救済措置もないに等しいため、死ぬ時は本当にあっさり死にます。


Ⅵ.対戦ゲーム風の味わい

エクシルディアRPGには「エネミー専用のデータ」がほとんど存在しません。PC用のデータは全てNPCも使ってくる前提であり、多人数でPvPを遊んでいるかのような戦闘シーンが展開されます。細かな能力値はPCが多少有利になるよう作られていますが、ゲームバランスも相まって白熱した真剣勝負を楽しめるでしょう。

これは同時に、敵も味方も同じ呪われたエクシルディアの民であるという、災厄後の絶望的な状況を表現した要素でもあります。どんな異形も元は人間であり、またPC達も彼らのように異形化する危険と隣り合わせです。そして、正気の人間同士の争いであったとしても、お互い変身して戦うのが当然と言えます。全ての脅威は、常に人間の中から生まれるのです。


おわりに

中世ダークファンタジーシステム『エクシルディアRPG』、いかがだったでしょうか。

自分がエクシルディアRPGを特におすすめしたい方は、大きく2つの層に分類できます。第一にTRPGの「RP」、暗黒の中世とでも言うべき設定の数々に興味のある方です。記事中では主に「悪夢の災厄」に関する情報をご紹介しましたが、他にも貴族と平民の格差社会、異教徒に対する弾圧などを強調する描写に溢れており、全体的に陰湿で不穏な空気が漂います。そして、これだけ暗い世界観だからこそ、困難に協力して立ち向かうPCの姿を美しく感じられるのではないかとイサエギンは考えています。

次におすすめしたいのはTRPGの「G」、戦闘ゲームとしての純粋な遊び応えに興味のある方です。個性的なデータ類を眺め、それを使ったキャラクターを考えて、特徴的な仕様と高難易度のバランスが生み出す戦闘を楽しむ、というのが本システムの醍醐味のひとつです。TCG・シミュレーション・その他対戦ゲームの類を好むゲーマーには、かなり向いているのではないかと思います。作者のイサエギン自身も、元々そういったジャンルが好きで作った節があります。


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また、Discordサーバー「イサエギン卓」では、『エクシルディアRPG』のオンラインセッションを毎月開催しています。体験卓も用意できますので、初心者さんもお気軽に参加ください。サーバー内ではキャラクタービルド・ルール処理・世界観に関する意見交換なども行われています。

こちらは最近作ったミニゲームのようなもので、エクシルディアRPGに収録されている悪夢からあなたのイメージに近いものを診断できます。よろしければ結果をツイートしてみてください。


最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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