見出し画像

山桜と闇の者

#山桜と闇の者

山桜が
赤味の強い葉と
蕾を付け初める

もう
とうに春風が吹いているのに…

山桜の元に
闇の者の姿が
未だ無いのだ─


#山桜と闇の者

私を呼び付けて何用か?と

春の精霊は
山桜の頼み事は薄々分かっていた

山桜は
春の精霊の前に花弁を降らせる

何時もより
少し濃い色と薫りの花弁を

我が風が
あの者に届くとは限らないぞ と

山桜に言う

一陣の風に乗せ
山桜の花弁が届く様にと
空へ舞い上げた


#山桜と闇の者

ひらひらと眼の前で
舞い落ちる花弁

一枚でも

あの山桜の花弁だと分かるのだ

ずっと
恋い焦がれた山桜だ

花弁の濃い色と香りは
まるで

山桜の
強い思いが篭っている様で…

今は山桜の元に行けぬのだ

此の不快な闇の臭いで

その

気高い 桜の花の香りを

消さぬ為に


#山桜と闇の者
#季節外れの詩

あの山桜の元に行けなくて…

今、此処で

逝く事は出来なくて…

あの山桜が咲く姿が見たかった

あの薫りに包まれ

舞い落ちる花弁を

見て居たかっのだ

気持ちが募り過ぎて

血の臭いも

闇の気配も拭えぬまま

遠目からでも

山桜を一目見たくて…



#山桜と闇の者
#季節外れの詩

遠くから見る
闇の者が居て

血の臭いも
闇の気配も
此の身に預ければ良いと

暖かな風に乗せ
葉を一枚
闇の者に渡す

もう朽ちて逝くならば側で眠れ

と闇の者を誘うのだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?