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未来を彫刻する。#2

 新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、授業が出来ないでいる大学。地域によっては大学が完全閉鎖にされ、教員が研究室への立ち入りも完全不可の所があるそうだ(ちなみに、経験上、学生のいない大学へ来て、研究室に籠って仕事をした場合、一日中、ほぼ人に会う事はない)。 

 個人的には、特に遠方から入学してきた新入生が心配だ。外出自粛をきちんとしていれば、他の学生と触れ合う機会が全くないので、新しい友達を作ることもままならず、慣れない土地で、1人孤独にこの状況と戦っているのかと思うと、本当に気の毒でならない。学生の心理的な健康状態も非常に心配である。

 この状況をなんとかしなければと、大人達も動いてはいる。だが、前代未聞の不測の事態。そう簡単では無い。

 ところで、多くの方もご存知かと思うが、大学という所は一般の企業に比べれば、年間スケジュールに余裕があるから、数ヶ月でこの騒ぎが収まるようなら、学業的にはさして大きな問題にはならない(だから暇というわけでは決してない)。私の勤務している大学では、GW明けまで春休みを伸ばし、また夏休みを短縮することで、「今の所」は年間の予定されていた講義が全て行われる事となっている。

 しかし、残念ながらウィルスの感染拡大の状況は一向に改善の兆しが見えない(私の住む北海道では2度目の緊急事態宣言が出た)。スケジュールの再変更も可能性としては十分あり得る。そして、当然この状態が年単位で続けば、流石にスケジュールに余裕がある大学といえどもどうにもならない。

 そこで、話題になっているのが、「オンライン講義」だ。すでに始まっている大学もあるようだ。

 Facebook上では、大学教員同士の新たな交流グループが作られ、オンラインの状況について頻繁に意見が飛び交っている。

「〇〇大学では、このような対応がなされている」とか、教員が「こんな感じにアレンジしてオンライン講義をしようと思っている」とか、「アプリはこれがいい・悪い」と言った技術的なものまで情報共有がなされいて、1日に数件の投稿があり、とても参考になる。

 ちなみに、私個人は、偶然なのだが、今年から「TEAMs」と言う、マイクロソフト社のアプリを積極的に使って講義をしてみようと考えていて、かなり準備をしていた。そのためいざ大学が「今年はオンラインでやりましょう」となっても、ある程度対応できると思う。
 また、これも偶然だが、今年から所属大学のWifi環境が大きく改善し、主に制作を行うアトリエでも、ネットへアクセスが出来るからとても便利だ。容量等の詳しい話はわからないが、とにかく学内にいれば、快適にどこでもネットに繋がる環境が整備された。他大学では当たり前なのかもしれないが、これまでの状況を考えると大きな飛躍である。

 今回のコロナショックを機に、様々な企業と同様に大学でもオンライン化が加速度的に進む可能性は十分ある。「全てオンラインでいいではないか」と急進的な発言が出てくるかもしれない。
 事実、少し前に新たな超エリート大学、世界最難関として話題になったミネルバ大学は、全寮制(複数国に住む)と、オンライン講義を組み合わせた、校舎を持たない大学だ。こう言ったスタイルがさらに注目されてくるのかもしれない。

 しかし、この一方で、教育のオンライン化が進めば進むほど、対面でしか出来ない教育により価値が高まるという可能性が十分にある。実践的な芸術教育、その中でも「触覚」と「空間」を主に扱う彫刻は、その最たるものだと思う。

 近年、デジタルの急速な発達もあってか、少し元気のない彫刻分野。しかし、ポスト・コロナ社会では、その重要性が見直され注目される。そんな彫刻の明るい未来を信じて、この難局を乗り切りたい。



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