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酔猫の棲む街

猫は越して来たばかりの街を散歩していた
喉が乾いた猫はなにも知らずに水瓶座から滴る極上の美酒を飲んだ
あまりの美味しさに猫は喉を鳴らして飲み続けた

そこに一人の乙女が通りかかった
猫さん、一緒に遊びましょ
乙女は猫の手をとると踊り始めた
くるくると猫の眼もまわり始める
そして勢い余った猫は高く放り投げられた

気がつくと猫は天秤の上にいた
同じく天秤には一匹の蟹が乗っている
猫さん、助けてください
猫はふらふらと蟹を押し出した
蟹は礼を言うと去って行った

猫が眠ろうとしたとき大きな獅子が現れた
蟹は何処へ行った
猫は逃げようとしたが足がもつれて走れない
欲張りな双子どもに売る蟹を逃したな
獅子が怒って声を荒げた

瞬間、獅子はぐったりと眠り込んだ
一匹の蠍が獅子の脚を刺したのだ
さあ早くお逃げなさい
猫は蠍に礼を言うとふらふらと歩き出した

すると牡羊と山羊がどちらが強いか争っていた
猫が立ち尽くしていると牡牛がやって来て二人をいさめた
ところが牡羊も山羊も納得しない
そして今度は牡牛も加わって争いだした
猫は踏まれないように逃げ回った

その時光る矢が飛んできた
驚いた三人は争いを止め逃げ出した
矢を射ったのは半人半獣の青年だった
だいぶ酔ってるな
彼は猫を背中に乗せると水辺まで連れて来た

猫が水を飲んでいると一匹の魚が現れた
猫さん、家まで送りましょう
猫はきらきらと光る魚の背に乗った
魚は冷たい光を放ちながら空を游いだ
猫はいつの間にか眠りについた
何処かで乙女の笑い声がした




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