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2021年春アニメ 総評・所感


今期の全体的な印象としては「不作」とまでは言いませんが、盛り上がりに欠けるというか、観ていてストレスを感じる作品が多かったというか…個人的にはそんな印象を持ったクールでした。前クールが良かった分、落差が大きかったように思います。

そんな今期タイトルの中でも面白い!と自信を持って言える作品もありましたので、誠に勝手ながら所感を述べていきたいと思います。

毎話ごとに点数(1〜5点)をつけているのですが、それを各話数で割り、Filmarks形式でその作品の最終評価点とします。評価の基準は「アニメとして面白いか否か」、その一点で評価します。


2021年春アニメ 21位

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今期最も酷かった作品はやはり『おさまけ』です。動画工房は個人的に好きな制作会社なのですが、正直言えば脚本が崩壊してました。キャラクターの行動から思考回路まで全部ぶっ飛んでるんですよね。母親の事故死により芸能界を引退した元子役の丸末晴を中心に展開されるラブコメ作品なんですけどね、一応。芸能界への復帰を目論んだ丸が芸能事務所へ訪れるも、急にイキリ飛ばしてしまった彼は芸能事務所の社長にワインをぶっかけてしまいます。社長に訴えられそうになると、今度はその悪行を揉み消す証言をしようとするヒロインの可知白草。もうこの段階で引いてしまいましたね。その状況から助けてくれた可知の父親に対して、悪態をつく主人公の親友・甲斐哲彦。そんな高校生たちがYouTuberとして活動を始める…。他にも、ヒロインが突然記憶喪失のフリをするといった大味すぎる脚本で、ラブコメとしてダメダメだし、当然の結果です。つまらない以上に、ストレスを感じました。何故切らなかったのかと言えば「動画工房だから」、その一点のみです。


2021年春アニメ 第11〜20位

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『聖女の魔力は万能です』
(20位)の作画はディオメディア制作にしては綺麗だったと思いますし、アフレコの脇役が妙に豪華なのが印象的でした。しかし、肝心の脚本がダメダメでしたね。シリーズ構成が『俺ガイル』の渡航氏ということで期待もあったのですが。物語があまりにも平凡で地味だし、スケールが小さかったように思います。問題が起きても何となく解決するという脚本で、これといった山場も迎えず終わってしまった印象です。ただただ、セイとホーク様がイチャコラしているだけで、面白いポイントを語れという方が酷な作品でした。

『ゴジラ S.P〈シンギュラ・ポイント〉』(19位)も期待値以下の出来でした。セリフ数が多くて難しい専門用語を使う割には、内容が薄っぺらいんですよね。誰でも分かりやすいものが絶対的に良い作品だとは思いませんが、難解であればいいってもんでもないでしょう。そこにキャラクターの魅力があり、シナリオの面白さがあってこそのセリフ回しだと思った次第です。最終回もAIが事態を収集する意味のわからなさで、唖然としました。特撮ファンはどう見ているんでしょうか、これは。

『ひげを剃る。そし女子高生を拾う。』(17位)は今期のネタ枠としての役目を果たしたんじゃないでしょうか。そもそも女子高生を拾うという出だしからして犯罪行為なんだけども、周りがそれを受け入れるところやあらゆる設定までもが非現実的すぎて、もはや笑えてしまうアニメでした。日本国において即通報・即逮捕なのは当然で、それは今月弁護士先生が身を以って示して頂いた通りです。しかし、このアニメにはフィクションならではの面白さがあったと思います。仕事を軽んじているかのような脚本で、思わず笑っちゃいました。12話も相変わらずの吉田さんで、『琴浦さん』第1話と同じ台詞が飛び出すシリアスな場面なんですけど、思わず爆笑してしまいました。やっちゃいけないことをフルコンボしているアニメでしたね。


『憂国のモリアーティ』
(16位)は前半クールの「貴族への報復」と「モリアーティvsホームズの対立」が面白かったのに、次々と新しいキャラクターを出し過ぎて話がゴチャゴチャしてたのが残念です。アクションシーンに力が入っていた回もありましたが、このアニメの面白い部分ってそこじゃないよなと思いました。終盤は完全犯罪何のそのといった強硬手段を用いており、1期の慎重ぶりが嘘のような脚本で、終盤に至っては『コードギアス』のゼロ・レクイエム感が拭えない内容でした。

『ゾンビランドサガ リベンジ』(15位)は残念ながら完全にファン向けの作品と化しました。特に佐賀事変は本編への繋がりが浅く、ゆうぎり姐さんのPVとしか思えませんでしたし、2話かけて何がしたかったの?という感想。2018年秋アニメ覇権の面影は皆無だったと言えます。勿論1話単体として見た時には、ゾンサガならではの良い脚本もあったので、全てを無下にはできないんですけどね。これは1期から言えることですが、ダンスシーンも『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の方が上手だと思うし、CG丸出しのダンスシーンを最終回で長丁場されてもね…と思ってしまいました。ゾンサガには普通のアイドルアニメの枠に収まってほしくなかったです。

『戦闘員、派遣します!』(13位)は『この素晴らしい世界に祝福を!』の暁先生が執筆しただけあり、良い意味での馬鹿馬鹿しさがあったタイトルでした。ギャグセンスは相変わらず光っており、深夜アニメとの相性は抜群。アリスと6号の掛け合いで笑えてしまい、爆笑というよりも深夜アニメ独特の笑いの取り方を心得ていた作品でした。萌えギャグアニメということもあり、本編のシナリオが絡むと内容がスッカスカなのはご愛嬌。

『SHAMAN KING』(12位)について語るのはもはや不要でしょう。「週刊少年ジャンプ」の名作です。アフレコは変われども、当時の雰囲気を忠実に再現しているブリッジさんには感謝。阿弥陀丸と蜥蜴郎の回やホロホロ登場回って、こんなにも良い台詞に溢れていたんだとマンキン原作脚本の強さを再認識しましたね。シャーマンファイト本戦に入るこれからが見所。



2021年春アニメ 第1〜10位

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『86-エイティシックス-』
(10位)に関しては、「戦争が生み出した差別」という設定の脚本を深夜アニメで表現するのは少々無理があったんじゃないでしょうか。A1 Pictures制作なのでアニメーションに抜かりはないのですが、ハリウッド映画の焼き増しにも思えたので、もっと深夜アニメに寄り添った脚本があってもよかったんじゃないかな…と個人的には思いました。某K社作品のアニメ脚本に言えることですが、大味なんですよね。

『イジらないで、長瀞さん』(9位)は、原作者の先生のフェチズムに溢れた作品でした。長瀞さんがきっちり可愛く描かれていたのは言うまでもないことですが、ギャルの長瀞さんが意外にも繊細でピュアだという表現があってこそなんでしょうね。その長瀞さんを支えている背景作画まで細やかに描かれていたのも非常に好感が持てました。とはいえ、萌えアニメであることに変わりはないし、話の展開のマンネリ感は否めないところです。

『不滅のあなたへ』(8位)は、まずアニメーションの完成度が高く、流石はNHK枠といったところでしょうか。主役のフシが無機物のような存在で、そんなフシが「刺激」を獲得する対象となる人物たちの生きる姿が非常に印象深い作品でした。正直、フシの天敵となるノッカーとの戦いには別段面白さを見出せなかったし、ナレーションでの説明が多いのはマイナスポイントでした。

今期最も人気があったのは、間違いなく『東京リベンジャーズ』(7位)でしょう。まさか令和の時代にヤンキー漫画が流行るとは思ってもみませんでした。マイキーやドラケンの台詞にパワーがあるのが、この作品の魅力のひとつでしょう。良い台詞をバンバン吐くんですよね、この2人は。病院でドラケンが頭を下げるシーンだけでも、ヤンキーとしての矜持を感じる訳です。逐一話すつもりはないですが、脚本や台詞の矛盾点は結構多かったです。ヤンキーアニメに緻密な設定を求めるつもりはないですが、流石に気になるレベルだったので、辻褄は合わせてほしいなと思います。

ヤングジャンプ作品ということもあり、期待していた『シャドーハウス』(6位)。序盤はスローペースで話が進んでいきますが、中盤以降は話数が進むごとにシャドー家の謎が明らかになっていき、シナリオとしての面白さを感じることができた作品でした。お披露目会では「リアル脱出ゲーム」さながらの迷宮探索で、新感覚のアニメ脚本だなと思いました。ケイト様とエミリコ、その他の被選別者たちのドラマも勿論素晴らしかったし、ホラーの中に哀しさもあるシナリオメイキングでした。残念な点は、ホラー要素に加えミステリー要素もある作品なのに、その種明かしが些か雑な脚本だったことですかね。キャラクターによる説明も多く、謎は謎のままにした方がシナリオの奥行きが出るのに勿体ないなと思ってしまいました。

津軽三味線を題材にした漫画原作作品『ましろのおと』(5位)。主人公が高校生ということもあり、青春ならではの熱い話もありましたし、友人の祖母の思い出と津軽三味線を絡めた思わず泣かせるような話もありました。今期の中でも脚本の強さが秀でていましたね。個人的には、第1話のキャバ嬢とのエピソードがエッジが効いていて一番好きでした。津軽三味線を弾く高校生とキャバ嬢を組み合わせるところにパンチがありましたね。ただ、最終回はあまりにも話が締まらなさすぎて…。

『スーパーカブ』(4位)は、礼子ちゃんが登場してからがいいアニメになりましたね。小熊ちゃんがカブを通じて礼子ちゃんと仲良くなっていく…その友情の描き方が王道ながらにして良い脚本だなと思いました。カブに乗って修学旅行に行ったり、修学旅行中にこっそりとカブで抜け出したりと、この2人がカブで「少しだけ悪い遊び」を共有する様子が青春そのものでした。小熊ちゃんがカブのおかげでどんどん開放的になっていくところを見ていると、ちょっと泣けちゃいました。マイナス点を挙げるとすれば、『86-エイティシックス-』でも述べたように、某K社系列作品の例に漏れず、終盤の脚本が大味なことですね。終盤の小熊ちゃんの回想や発言内容は、イマイチ腑に落ちなかったんですよね。ちょっと無理筋な脚本じゃないかな?と思いました。カブを主語にする台詞回しもちょっとくどかったですね。


2018年秋アニメ『SSSS.GRIDMAN』のシリーズにあたる『SSSS.DYNAZENON』(3位)ですが、個人的には前作よりも面白かったですね。特撮は専門外なので語れない部分なのですが、ラブコメの描写が秀逸でしたね。今期ラブコメ枠の『おさまけ』があまりにも頼りなかった分、蓬と夢芽の恋愛描写をきっちり描いてくれた本作がより素晴らしいものに思えました。もちろん本作はラブコメじゃないんですが。ヒキニートの暦が抱く葛藤やその従姉妹のちせが抱える孤独といった、人間の精神的な「不自由」を描く脚本も説得力のあるもので、本当に見事だったと思います。ラストはTRIGGERの一流スタッフ陣による超パワフルな作画を拝むことができましたし、もう何も言うことはございません。立花&アカネという名ヒロインが登場する『SSSS.GRIDMAN』と比べればキャラクターの魅力は少し落ちるかもしれませんが、本作の各キャラクターのアフレコが本当に上手だったので、負けずとも劣らない魅力のあるキャラクターに仕上がっていたと思います。


『Re:ゼロから始める異世界生活』の長月先生と『進撃の巨人』を制作した超一流アニメスタジオのWIT STUDIOがタッグを組んだ作品、『Vivy-fluorite Eye's Song-』が第2位です。「未来から来た、人類滅亡を阻止すること(シンギュラリティ計画)を使命とするAI」マツモトと「歌を歌う事を使命とする自立型AI」ヴィヴィの間で繰り広げられる会話だけ見ても、素晴らしい台詞が盛り沢山なんですよね。人間とAIではなく、AI同士だからこそのジョークや皮肉があり、機知に富んでいたと思います。戦闘シーンの描写は流石のWIT STUDIOで、AIらしい──機械的な所作がきっちりと表現されていました。ヴィヴィが走るシーンや敵にふっ飛ばされるシーンを見たら一目瞭然でしょう。オリジナルアニメでこれだけ面白かったら充分なんですが、最後の『リゼロ』感はあまり肯定できない部分で、個人的にはしっくり来ない幕引きでした。ここは賛否あると思います。


今期最も面白かったNo. 1タイトルは、『オッドタクシー』。こちらもオリジナルアニメで、小戸川というタクシードライバーがとある「事件」に関わっていくというミステリー要素の強い作品です。登場人物は皆動物化して描かれていますが、その描かれ方は人間そのもの。序盤から中盤にかけて謎や伏線をびっしりと引いていく様子は、さながら『ケムリクサ』を彷彿とさせます。そして、終盤にはどう転んでも面白いとしか言えない展開が待ち受けていました。他のタイトルが失速していく中、『オッドタクシー』は最初から最後までずっと面白かった、それだけのことなんです。
シナリオ本編だけでなく、小戸川と彼に関わる人物たちの間で繰り広げられる台詞が絶妙にリアルなところも面白いかったと思います。また、キャラデザはポップなのに、裏社会の半グレたちの描き方が超絶リアルなのも、良いんですよね。
吉本芸人のダイアンが芸人役としてアフレコに参加しており、彼らのラジオトークや漫才が生み出す雰囲気は、声優さんには真似できないものでした。これをやりたかったが為のキャスティングだったのではないでしょうか。




以上が2021年春アニメの総評となります。

最後に。面白いとか全部差し置いて、今期で好きな作品を挙げるとすれば、『戦闘員、派遣します!』ですね。オタク御用達おバカ萌えアニメだし、ギャグも下ネタばっかりなので簡単にオススメはできないんですが、こういったTHE深夜アニメみたいなのは嫌いじゃないです。


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