【Event】京都府精華町 京町セイカと歩む受け入れられる地域キャラクターの在り方
2024年4月28日、29日の両日、千葉県千葉市の展示会場である幕張メッセにおいて「ニコニコ超会議2024」が開催された。
本記事では会場内で出展を行っていた「超京町セイカ@精華町」の様子を軸に、ご当地キャラクターである京町セイカの与えた影響を取り上げていく。
地方における宣伝キャラクターの存在意義と立ち位置
多くの人々が暮らす街や地域、それらを包括しているのが自治体だ。
日本全国津々浦々、様々な地域の自治体が常に魅力を発信し続け、人々の興味を惹こうとしている。
いわゆる「ゆるキャラ」の様な存在も、そういった情報発信やアプローチの一環として生まれたものであった。
今でこそ御当地Youtuberといったキャラクターも出つつあるが、古くはゆるキャラ、あるいは萌えキャラといった属性で大別されたキャラクター多数が地方の顔を務める時期があったのである。
キャラクターが地方の顔として定着するには2つの柱が重要になる。
一つはキャラクター自体の認知度の高さである。
いくらデザインや魅力に溢れたキャラクターが作られたとしても、それが公の場に出ず埃を被る状況では宝の持ち腐れとなってしまう。
積極的な広報や関連製品・グッズといったものを展開し認知度を上げる事は戦略の一つである。
そしてもう一方はキャラクターと地域における連携である。
キャラクターが良いデザインや設定を包含しており人気が出たとして、それを押し出す自治体と地域がキャラクターと積極的にコラボレーションを行わなくてはこちらも片手落ちになってしまう。
そのため、キャラクターを活用したい自治体・地域側も理解を示し、積極的に「協同する」事が重要だ。
こういったキャラクターの活用例が増えつつあるなかで、歴史の長い御当地キャラクターも存在する。
それが今回取り上げる、精華町のキャラクター「京町セイカ」である。
京町セイカというキャラクターの在り方
京町セイカは京都府精華町のご当地キャラクターである。
2013年7月5日に漫画作成ソフト「コミPo!」で作成した女性姿の広報キャラクターを発表。これに愛称が公募され、同年9月9日に京町セイカと名付けられた。
コミPo!で使用可能な3Dデータも公開され、同サービス内で自由に利用可能なキャラクターとしても公開される事となった。
ニコニコ超会議ならではの出展という事もあるので、ニコニコ動画内における京町セイカのスタートラインについてもデータを出してみる事にしよう。
2024年5月18日現在で確認できる最古の動画は『【ISAO式京町セイカ】なくしたつばさ【キャラミん】』となっており、こちらは音楽データを元に自動で振り付けを3Dモデルに付与し踊らせる事ができるサービス「キャラミん」を利用した物となっている。
その後幾つか動画が投稿された後に、京町セイカというキャラクターの知名度が爆発的に伸びる出来事が起きる。
2015年11月27日にクラウドファンディングにてVOICEROID(ボイスロイド)化の寄金を募集を行い、12月8日に第一目標を達成。期間内に第一目標の約2倍の寄付が行われ、ボイスロイド化が決定したのである。
VOICEROIDとは合成音声を利用した流暢な発声による読み上げを可能とするソフトの一つであり、様々な合成音声ソフトウェアの中でも利用度・認知度が高い製品群が特徴である。
2016年6月10日に「VOICEROID 京町セイカ」として発売されて以降、それまで35件程しか動画が無かった京町セイカタグの動画が日間で最低でも1~2本程投下される程に活性化。
現在キャラクターモデルを踊らせるMMD(MikuMikuDance)系動画なども含めれば、京町セイカタグにおける動画数はなんと9,416件にのぼる。
これはタグ「Voiceroid」でヒットする件数が58,363件である事を考えても、相当な割合を京町セイカが占める事になる。
勿論動画によっては独自タグや「実況プレイ」「車載動画」等の文字列を含んだ派生タグで埋められているため正確な数ではないものの、現状これだけの人気を誇る存在となっている。
2022年1月27日には歌唱ソフトをベースにした「Synthesizer V AI 京町セイカ」が、2023年10月5日には音声読み上げソフトウェア「VOICEPEAK 京町セイカ」が販売されるなど、現在もその人気はますます伸びているのである。
もちろんキャラクターとしても京町セイカは人気であり、イラストコミュニケーションサービス「Pixiv」では現時点で2,177作品のイラスト・漫画が投稿されている。
「Voiceroid」タグでは72,299作品とかなりの数だが、結月ゆかりや弦巻マキといった有名どころのVOICEROIDのイラスト化も多い中で、地方自治体発のキャラクターがVOICEROID化を果たした上で、キャラクター性を人気としてこれだけ描かれる事はまず無い話である。
同サイトにて奈良県のイメージキャラクターである「せんとくん」は1,391作品、2025年大阪万博の公認キャラクターである「ミャクミャク」は909件となっている事から見ても、これだけ多くの人に受けいられ描かれるだけの魅力的なデザインである事は言うまでもない。
そして何よりも忘れてはならないのが、京町セイカというキャラクターが地元に与える影響だ。
京都府の文化・学術・研究の拠点「関西文化学術研究都市」であるという事は、ともすれば学問や研究という「固い」物事に取り組む印象が強い都市という影響を与えかねない。
そこに広報誌などの様々な場所に京町セイカというマスコットキャラクターを提示し、生活する住民に対しても強くキャラクターがいることをアピール。
その結果として、地域住民にも広く受け入れられるに至っているのである。
株式会社ハンクルズが調査する「ご当地キャラクター人気ランキング」では全国4位(総勢4411体)の位置に付けている。
地方自治体におけるマスコットキャラクターの歴史を紐解けば、これだけ波風を立てずに順風満帆に地域振興とアピールに貢献しているキャラクターは非常に稀有なものである。
この人気に精華町はニコニコ超会議へと参戦する事を決め、2022年のニコニコ超会議より「超 京町セイカ@精華町」ブースを開いて各種京町セイカグッズなどの販売を行っている。
例年VOICEROID京町セイカは完売し、その上ニコニコ超会議2024ではSynthesizer V AI 京町セイカも販売と至れり尽くせりである。
今回話を伺った担当者の方も、京町セイカが好きで精華町の広報を担当するに至ったというから驚きである。
地方自治体のマスコットキャラクターに愛を注いで仕事場に飛び込むだけの情熱を持つ人物を生むに至るだけの、圧倒的な魅力を備えていると言ってもいいだろう。
精華町の魅力を発信し続け、ファンをこれからも増やしていく京町セイカの次の一歩に大きな注目が集まっている。
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