見出し画像

【Event】バーチャルマーケット2024Summer 企業展示ワールド速報レポート

 2024年7月20日から、同年8月4日の期間中にオンラインVR対応SNSサービスである「VRChat」にて、株式会社HIKKYが主催する「バーチャルマーケット 2024 Summer」が開催されている。
今回の記事では、企業が出展するワールドである「パラリアルドバイ」「パラリアル横浜」「パラリアル大阪」の三箇所とエントランスである「パラリアルセントラル」を紹介する。


仮想世界の一雫から広がる世界

 今回のエントランスエリアである「パラリアルセントラル」は、漆黒の空間にひと粒の水玉が浮かんでいるところからスタートする。
その水玉に近付こうとすると、不意に上空からそれが落ち、波紋となって足元に伝わったかと思えば――――その先が、エントランスであるパラリアルセントラルである。
今回は前回同様メッセージを残せる機能を提供するオブジェクトが設置されている「インフォメーションエリア」、ライブイベントが行われるステージがある「交流エリア」、そして各ワールドへのハブとなる場所が存在する。

 特に今回真新しい機能として、エントランスに入場後に目の前に案内役である「Vketちゃん1号」が立っており、バーチャルマーケットに参加したはいいものの右も左も分からないユーザー向けに行き先を案内してくれる。
必要があれば何度でも話しかけることが出来る為、このエントランスの特徴を掴みたい人にもうってつけだろう。
また、ハブとなるエリア中央では行きたいワールドを任意に選択することが出来る機能もあり、自動的に該当ワールドのポータルが生成されるというギミックが搭載されている。
これまでとはまた違う導線で探索を楽しむことが出来るだろう。

イマジナルのドバイへようこそ

 今回の海外展示ワールドとして選ばれたのは、中東にある世界有数の観光都市でありアラブ首長国連邦ドバイ首長国の中心都市ドバイだ。
ここをベースにした「パラリアルドバイ」は、まさしくそのドバイを詰め込んだ様なワールドとなっている。
ワールド入場後に目の前にある高級車らしき車両が空中へ飛んだかと思うと、やけにメカニカルなラクダやメカニカルな案内人が登場する。
彼女曰く「ブルジュ・ハリファとアトランティス・ザ・ロイヤルホテルが一望出来る」という光景に嘘はなく、天を衝く光り輝くブルジュ・ハリファがそびえ立つ。
だがドバイに詳しい方ならば、この位置関係は現実にはなく、その上背後に見えるビルのうち一棟はアトランティス・ザ・パームホテルである事を見抜くだろう。

 そこから順路を進めば、ドバイの景観地区であるバスタキヤ地区を「再現」した場所に当たる。
左右に株式会社 大丸松坂屋百貨店やUUUM株式会社、突き当りに株式会社ベルクのブースが存在するこの場所も、実は現実のバスタキヤ地区、あるいはアル・ファヒーディ歴史地区と呼ばれる地域と比較して広い街路となっており、建物の間を縫うような構造ではないことがうかがえる。
ここで現実世界のドバイをよく知る方がいるならば、案内人の言葉を聞いてこのワールドの背景事情に気付けるかもしれない。
とはいえ案内人が「地球圏文明」と称している辺り、SF作品に親しい方であればこのワールドそのものの背景事情を察するのはもっと楽だろう。

 中東世界といえば太陽よりはむしろ月のイメージが強い人もいるのではないだろうか。
このワールドの中央部にきらびやかに存在する巨大な三日月、そしてそこにある「KAO」の三文字。
花王グループカスタマーマーケティング株式会社のブースでは同社の製品で臭いの王「臭王」を退治したり、同エリアには札幌駅総合開発株式会社の案内ブースやVketStoreのブースも存在する。
そこから奥へ進めば、エリア上層の通路に繋がるエレベーターが存在する。


 下層を一望できる上層の構造は更に現実のドバイとは違い、生成される摩天楼や空の巨大な門を通過する宇宙船の様な乗り物といったSFめいた要素が強くなる。
そんな中で涼し気なプールを展開するいつもの大丸松坂屋百貨店メソッドと共に、国境なき医師団のブースや㈱ユニバーサルエンターテインメントのウォータープールといったこれまた特徴深いブースを巡る事になる。
そしてその先の円状の転送装置をくぐった先にあるのは、ホログラムの「THANK YOU」の文字。
案内人から内容を聞く限り、このワールド自体が「地球が消失し地球圏文明と称される文化圏がある程度残った状態で、過去に険悪な関係であった『アクサル帝国』という国家との友好のために地球のドバイを模倣したエンターテイメント会場を創り上げた」というものであるらしい。
だからこそ宇宙船が飛び、また入口付近の車両も空を飛び、様々な建物がホログラムから構成されていっているのである。
観光の都は宇宙時代においてもまた、光り輝き続けるだけの魅力を持った都なのかもしれない。


 バーチャルマーケットに初参加の方はここで面食らうであろうが、ここはバーチャルな空間である。
時代も空間も、そこに存在できるならば本当に「何でもあり」であり、非日常の世界であってもお構いなしに創り上げることが出来るのである。

ポップライトきらめく横浜の街

 日本の企業展示ワールドの一つとして選ばれたのは神奈川県の中でも文化の中心地とされる横浜市、その中でも今回は特に食を語るに外せない横浜中華街やウォーターフロント地区として名の知られたみなとみらいが舞台となる。
ワールドに降り立てば背後に鎮座する横浜駅を背に、幻想的なスロープの道が広がっている。
その道の先は五差路に繋がり、そこに鎮座するのは「仮想横濱」の文字が刻まれた豪奢な門。
こここそがバーチャルな横浜中華街である。

門の右手側にある特徴的な外観の建物は、横浜に詳しい人間であるならば恐らく誰もが知る中華街の名店「SARIO 聘珍茶寮 横浜中華街店」である。
中華の名門「聘珍樓(へいちんろう)」でお馴染み、運営元である株式会社聘珍樓がそのままの外観でパラリアル横浜内に店舗を再現したのだ。
その他にもどこかで見たような名称の中華街の店舗を見つつ、キーン・ジャパン合同会社や文部科学省、ヤマハ発動機株式会社やサミー株式会社など様々な企業や団体のブースが立ち並ぶ通りを突き進む。
通りの右手側には桜木町駅からも見える横浜ランドマークタワーが鎮座している。
中華街の終端からは桜木町駅付近の遊歩道「汽車道」を歩いていく事となる。
屋形船を横目で見ながらノンアルコール飲料を大々的に宣伝するサントリー株式会社のブースを通り、いよいよ後半のエリアである。

 後半は左手側に横浜でも大規模なショッピングモールである横浜ワールドポーターズや、そこに発着するロープウェイであるYOKOHAMA AIR CABINを見つつ、コンテンツ開発企業であるフォービジョン株式会社のブースを経て左手側に花咲き乱れる豪華な建物が見えてくる。
この建物に入ると別のエリアに飛ぶ事になるが、ここはコワーキングカフェ等を手掛ける株式会社メッセホールディングスのブースである。
ここではカフェでのコーヒー淹れ体験の他に、なんと「サウナでととのう」体験として、超高温のサウナと超低温の水風呂を往復し、外気浴をする事で「ととのう」ことが出来るとの事である。
筆者もコンテンツを体験してみたが、段々と見えなかったものが見えてきそうなエフェクトに少々気圧されてしまったのはここだけの話である。
このブースと向かいあう形でヤマハ発動機株式会社のブースがあり、こちらではマウンテンバイクをかなり細かくカスタマイズ出来るギミックが設定されている。
自分だけの一台を見つけてみるのはいかがだろうか。

ととのう~
ととのう~
それ以上いけない。

 この先は3つ星ホテルのナビオス横浜を模したビルをくぐり、もはや恒例となった静岡県焼津市の海産物煌めくブースや株式会社東京マルイの試射ブース、ジャンプ出来る栄養ドリンクBARKを提供する株式会社ベルクのブース、メタバース応援企業である株式会社シーク・アミューズメントのブース、声優である井上和彦氏の音声が楽しめる株式会社 B-Boxのブースやお笑いコンビ「春とヒコーキ」でお馴染みのぐんぴぃ氏を擁する株式会社タイタンのブースが詰め込まれた赤レンガ倉庫のエリアに差し掛かる。
豆知識ではあるが、3つあるパラリアル系ワールドのうちで株式会社ベルクのショッピングカートで爆走出来るエリアが最も広いのがこのパラリアル横浜である。思い切り街中をカートで爆走して堪能してみるのもまた良いかもしれない。
なお会場の各所にはぐんぴぃ氏が存在している為、いろいろなところを探してツーショットを撮ってみるのもまた味のある楽しみ方だろう。

 赤レンガ倉庫から繋がるのは、横浜にある横浜港大さん橋国際客船ターミナルであり、そこから先に停泊する船に乗船することが可能だ。
バーカウンターを備えた客船から次のワールドへ向かうことが可能だが、それまでにこのワールド内のエントランスにいる「Vket1号ちゃん」をしっかり案内してあげることで、このワールド限定ではあるが特殊なアイテムを受け取ることが出来る。
是非隅から隅まで横浜の街を回ってみる事をオススメしたい。

通天閣の大阪流でクールな使い方

 3つ目のパラリアル系ワールドは、関西文化の発信地大阪府大阪市がモデルとなっている。
こちらはこちらでまたユニークなアレンジを施され「パラリアル大阪」へと姿を変える事となった。
パラリアル大阪自体は以前のバーチャルマーケット2022:Summerで同名称のワールドがあり、構造としては現実に近い形での再現がなされているが、今回のワールドはそれとはまた違うテイストとなっている。

 ワールド入場後にエスカレーターを登れば、その先に見えるのは「コンニチハ」という電飾が見える、大阪府民であれば誰もが知っているであろう特徴的な建造物の通天閣…のような、公式曰く「コンニチワタワー」がそびえ立つ。
その先にあるのはもはや出展が恒例となりつつあるお馴染みロート製薬株式会社や、今回初出展ながらギミックに溢れたブースを展開するダイキン工業株式会社といった企業が展開するパビリオンエリアだ。
その先の「OSAKA」と書かれたゲートの側から見えるのは、真っ二つに割れた道頓堀川をたこ焼きが泳ぎ、船を乗りこなしている光景である。
あらかじめ断っておくが、この時点で筆者の意識は正常である。

 

そこから先の道頓堀橋近辺にあたるエリアは、多くの企業・団体ブースが密集している。
晴れて企業出展ワールドへの進出を果たした株式会社Robot Consultingブースや鰻のつかみ取りミニゲームを提供する静岡県浜松市ブース、その付近には田村駒株式会社の提供する輝くビリケンさんと向かい合うように、株式会社ベルクのブースがミニゲームを引っ提げ鎮座している。
大丸松坂屋百貨店ブースを横目に順路を行けば、その先には東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校が展開するバーチャル高校生アイドル「SO.ON project LaV」(ソーオンプロジェクト ラブイ)のブースが登場。
その先のエスカレーターを登れば、Vketちゃん1号と2号がアロハを踊るフラダンスステージが広がる株式会社髙島屋ブースだ。今回の展示もまたハイクオリティなモデルを引っ提げての登場である。
そこから繋がる戎橋(えびすばし)を通れば、ランダムなタイミングではあるが道頓堀川から巨大なカニが飛び上がり、泳いでいるたこ焼きをむさぼり食う光景が見られるだろう。
もう一度言うが、筆者の意識は正常である。


 戎橋から先のエリアは更に混沌としている。
新製品をアピールするHMDメーカーのHTC NIPPONブースの前、これみよがしに立つ公衆トイレ内にはなぜか金色の便座が鎮座。
その先には株式会社かに道楽完全監修のかに道楽 道頓堀本店のビルに寄り添う形で、吉本興業ホールディングス完全子会社の株式会社FANY提供の『巨大化した千鳥・ノブを倒せ!』コーナーが併設。
巨大化した人気お笑いコンビ「千鳥」のノブ氏を存分に武器でしばけるギミックが搭載されている。
更にその奥にはなんば戎橋筋という商店街があり、その奥には「大阪おばちゃんロボ」という謎のロボットを撃破するべく「30人集めなければ通れないゲート」が存在する。
もちろん筆者は取材時一人であったので、背を向けるしかない状況であった。


 次のワールドに向かうエリアでは真正面に通天閣…ではなくコンニチワタワーがそびえ立つ。
一望出来る台座の横にスイッチがあり、それを押すとタワーを取り囲んでいたビル群が真下に陥没していく。
退避せよとの警告が流れる中、不意にコンニチワタワーの真下から煙と爆炎が吹き出す。
そして次の瞬間、コンニチワタワーはゆっくりと上空へ飛翔。
高く飛び上がった塔は盛大に爆散、跡形も無くなったかと思いきやタワー下層部のハッチから新たなタワーが生えてくるではないか。
周りのビルも生え揃い、また元通りに戻る風景。
大阪松竹座ビルらしき建物を側に置きながらのこのはっちゃけっぷりである。
いよいよもって筆者の意識を疑う声も強くなるだろうが、これは関西人でなくともムズムズするものが芽生えてくるのは必定と言ってもいい。
心のなかで盛大にツッコミを入れるしかないのであった。

リアルを超えてエンタメを取る

 今回の企業展示ワールドは、以前のVketの企業ワールドとしての傾向にあった「豪勢で派手なギミック」「かなり広めのワールド」「現実に即したある種のリアル感」といったこれらの諸要素を相当削り落とす様式で出来上がっている。
そのうえで導線を乱す様なブースの配置を極力避け、別のエリアへ飛ばすギミックについてもほぼすぐに帰って来ることが出来る設定としているのは、他のユーザーとの合流しやすさやコミュニケーションに重点を置いていると見て良いだろう。

 そのうえで各ワールドに共通する要素として、先述の「リアル感」を落として、バーチャル空間であるのを良いことに現実では起き得ない風景を詰め込むという形を取っている。
ワールドの方向性としてはバーチャルマーケット3の「ネオ渋谷」やバーチャルマーケット4の「パラリアルトーキョー」、バーチャルマーケット5の「WORLD Beyond」の様な、やや規模を小さめにしながらもアイコニックな物を散りばめた、より空想感の強いものと言えるだろう。
特に昨今のバーチャルマーケットの傾向として見られた「デフォルメをしつつも仮想空間をリアルの延長線上として定義する」という方向性からは、だいぶ大きく舵を切っている。


 これは同時にリアル感を気にせずエンターテイメント性を高める諸々の要素を詰め込めるという点で、リアリティを重視する空間よりも秀でた点を持つ。
確かにリアルであるように仮想空間を構築するのもまたエンターテイメントの一つであり、あたかも現実に近しい世界を定義するというのはバーチャル・リアリティを主題にしたSF物では往々にしてメジャーかつ受け入れられやすいものである。
しかしそれとは別のベクトル、つまるところまったく持ってリアルではなくファンタジックであったりデジタルである表現が出来るのも、仮想空間ならではの特徴である。
そして何より展示会は「見る人がだれない程度の広さ」が重要だ。
コンテンツが深く広く充実していても、結局それらを堪能する前に帰ってしまうよりかはよりシンプルかつダイナミックな物を用意し、魅力を伝えきる方が良いのは言うまでもないだろう。
そういった意味では、今回のバーチャルマーケットは一つの転換点となるのかもしれない。

 バーチャルマーケット 2024 Summerは2024年8月4日まで開催されている。
ワールドにもよるが、Androidであったりブラウザであったりと複数の会場が用意されている。
本メディアでも継続して追える所は情報をピックアップしていくので、乞うご期待頂きたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?