日本のAVやホストを取り上げて韓国で炎上しているNetflixのアダルトトーク番組『ココだけの際どい話:日本編』について

こんな記事を読みました。
https://dot.asahi.com/dot/2023050100075.html

内容は、前半がドイツ人女性ジャーナリストが見た日本の性産業に対する批判的なまなざしを紹介、後半が韓国で作られた、日本の性産業を肯定的に紹介する番組を(筆者が否定的に)紹介するというもの。
後半の日本の性産業を肯定的に紹介する韓国の番組というのが気になったので調べたのでメモ。

外国から見た「日本の性」といえば、最近、Netflixで公開されたトーク番組が話題になっている。韓国のテレビで下ネタを解禁したといわれる有名な司会者が中心になり、日本の性産業に従事する人々らと対話するもので、AV女優、AV男優、AV監督、ホスト、男性向けオナニーグッズ制作会社の社員らが出演している。AV産業の#MeTooについては一切触れられず、AVの撮影現場は安全で、プロフェッショナルな職業人の集まりの場であり、女優にとっては仕事であり、またセックスの冒険の場であることが強調されるつくりだった。

番組名は『ココだけの際どい話:日本編』。韓国でのタイトルは、『성+인물』(性+人物)。Netflixで3月に30分番組が6本配信された。すべての回で日本(東京)の性をテーマにしている。6本の内容は、
・18歳未満は入店禁止! アダルトグッズショップ&アダルトVR個室ビデオ店
・3人のAV女優
・AV男優、しみけん
・TENGAのマスターベーション革命
・歌舞伎町、ホスト、ローランド
・日本の20~30代の恋、セックス、愛

 冒頭の記事では、筆者の北原みのりがフェミニストとしてAV出演被害救済を支持してきた立場から、顔射や中出しについて女優に楽しく語らせるだけの番組の構成を批判している。また、ホストにハマった女性が借金を返すために風俗産業に従事するようになっている社会問題を踏まえずに、ホストを「大金を稼げる夢のある職業」と紹介したことを批判している。
 確かに昨今のAV新法ができた日本のAV産業事情やホスト業界に対する批判などを無視した構成で番組が作られていたら苦言を呈す人が出て当たり前である。こういうAVやホストをもてはやすだけの番組は日本では00年代をピークに終息している。さらに今のTwitterを見るとアンチフェミニストの男性たちがホスト業界批判をしているまでになっている。

 この番組は本家の韓国でも批判されている。しかも大炎上して、司会者やプロデューサーらにクレームが殺到しているという。韓国で批判される主な理由は、「そもそもAVの制作流通が違法な韓国の番組にAV女優を出演させていいのか」という点が大きくなるようだ。その上で、日本でも問題とされて規制議論が続いている業界について無批判でいいのか、と疑問視されているみたい。

以下はスポーツソウル日本版5/2(火)の記事。

一部の視聴者は、韓国ではAVが違法であるにもかかわらず、陰の産業を水面上に引き上げたことは望ましくなく、わいせつで刺激的だと不快感を表わした。
それだけでなく、“19禁コメディ”を代表する人物として長い間愛され、同分野の第一人者として領域を開拓してきたはずのシン・ドンヨプにも非難が殺到する事態へと発展。
これまで、『魔女狩り』『SNL』などの“大人向け”トーク番組で大活躍してきたのだが、今回の『ココだけの話:日本編』に限って突如クレームが相次いだ。

スポーツソウル日本版5/2(火)10:41

5月1日のスポーツソウル日本版にこの炎上問題の論評記事が出ていて、炎上の根本的理由が分析されている。

番組製作陣は「普遍的な関心事だが、国と文化ごとに受け入れる方式に差がある“性”を接点に、他国だけの特別な性文化を知っていく面白さがありそうだという考えから始まった」と企画意図を明らかにしている。
陰の文化である姓を表に引き上げたという点で、この番組は賞賛に値する。
だが、ただそれだけだった。
炎上した根本理由
韓国若年層の開放された性意識に対する自由な討論の雰囲気を作ったバラエティ『魔女狩り』製作陣の作品だが、『ココだけの際どい話:日本編』は男性の欲求を解消したこと以外、特に意味を見出す事が難しかった。

https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=73961

韓国だけで放送されているならともかく。 あえて全世界190カ国にストリーミングされるNetflixで、韓国人が日本の性文化の特徴を紹介する理由があるだろうか。それならば、日本の性文化が韓国の性文化とどのように違うのか、日本の性産業が発展した根本的な理由が何なのかを指摘すべきだった。

https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=73961

この番組では成人向けトークを通じた話題集めや、それらを見せることに汲々とした印象だった。職業にプライドを持っているAV女優たちやホストたちの徹底したプロ精神が、むしろ戯画化されているような印象さえ受けた。
ここまで来たら、企画意図に向けた制作陣のアプローチは失敗したと言っても過言ではない。

https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=73961

「徹底したプロ精神が、むしろ戯画化されている」というのは、日本のバラエティ番組の炎上の原因としてもよくあることだと思うし納得した。
番組内容を取り上げた韓国の記事を翻訳で読んでも「戯画化」されてるのだろうなと思った。
「AVは私の人生…」「性+人物」に出てきたAV女優3人、輸入芽すべて明らかにした ウィキツリー https://www.wikitree.co.kr/articles/848296

番組を制作したプロデューサーが釈明会見

番組を制作したプロデューサー2人が、5月2日にメディア取材を受けて炎上騒動について語っている。以下はハンギョレ新聞と聯合ニュースの記事。

炎上については、「一部の保守層がやっていること」と判断しているのが日本と差があって興味深かった。今の日本でアダルト産業や番組に対して抗議するのは「フェミニストであり左翼でありリベラル」と断定されるものであろうから。
取材では、AVの契約問題やホストの搾取構造についてなぜスルーしたのかも質問されている。制作陣は、両親に反対されていたことや、子供に職業が伝えられていないというネガティブな部分も放送したとした上で、「『AVは搾取だ』とだけ言うなら、全世界でどうやって合法化をしたのか。 作っている国の人々の話を聞きたかったのだ」と抗弁したという。
日本編の次は台湾編を配信予定ということで、シリーズすべてを見てから制作意図を判断してほしいという。台湾編では同性婚合法化をアジアで初めて定めた地域として性的少数者の性をテーマして番組を作るという。ここでも日本編とのギャップが面白い。

以下の韓国経済新聞のインタビュー記事では、テーマを決める時に未成年搾取に当たる「芸者」を排除したと語ってる部分があった。Twitterや週刊文春での告発で日本でも話題になった、京都の舞妓の未成年飲酒や客との混浴強要のことを考慮に入れていたんだろう。コンプラを意識して番組制作をしていたと強調するためのエピソード。

また、最初にマツコ・デラックスに取材を申し込んだが断られていたことも明かしていた。取材許可が降りて、女装男性というマイノリティの性を取り上げる回があれば、炎上しなかったのではと自己分析している。

その他。
↓の記事では番組でAVパッケージがモザイク無しで映るのはいいのかと問題提起
AV·선정성 등 '정면돌파' 시도...'성+인물', 시청자 납득은 아직 [엑's 초점] https://www.xportsnews.com/article/1719736
↓は多様性の一つとしてAVやホストを取り上げたんだという制作陣の話
[인터뷰] 연출진이 본 '성+인물' 논란, 예상했거나 빗나갔거나 | 서울경제 https://www.sedaily.com/NewsView/29PFPX14KC

以下のスポーツソウルの記事は制作陣の釈明を載せた上で、その釈明に対する批判も入れている。スポーツソウルは総じて厳しい論調っぽい。
플랫폼 차이? 신동엽에게 죄송? ‘성+인물’ 제작진이 인지하지 못한 문제점 두가지 [SS초점] https://www.sportsseoul.com/news/read/1309815

最後、日本で賛も否も話題にならないことを不思議がる制作陣。Netflixの番組配信から2ヶ月。冒頭のコラム記事が出るまで全く知らなかったし他の日本メディアの記事も皆無。

制作陣は「日本内の反応を見ると『性+人物』の話が改めてないようだ。香港は韓国と視聴順位が似ている」と不思議を明らかにした。

https://www.sportsseoul.com/news/read/1309815

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