【meets】#6 児嶋真人さん~「素材の背景を知ることで、豚革を選択肢の1つとして考えて欲しい」”豚さんの魅力”を真摯に伝え続けている人
インタビュー専門ライターのいろろです。
このマガジンでは、私とご縁があった方の魅力をインタビュー企画としてお伝えします。
今回は第6回目として、児嶋真人さんにインタビューをしました。
児嶋真人さん
児嶋真人さんとの出会いは、東京都台東区で今年の5月に実施されていた『モノマチ』というイベントの台東区デザイナーズビレッジに出店されていた児嶋さんのお店に私が訪問した時でした。
台東区デザイナーズビレッジでは多くのデザイナーさんが入居していて、イベント期間中は特別にアトリエを公開して販売会を実施していました。その中でも、児嶋さんの出店していたブランド『Sai』は、爽やかな色合いの水色、ピンク、黄色がお店の外からでもパッと目に入り、素敵な空間だったのでお店に入ってみました。
すると、販売していた児嶋さんがブランドの説明と共に、ブランド『Sai』のことや、ブランドで扱っている商品の素材【豚革】のことを丁寧に教えてくださいました。【豚革】のことについて私が初めて知る情報も多く、児嶋さんからもただならぬ情熱を感じ、その場で後日インタビューをさせていただきたいとお伝えしたところ、快く引き受けてくださり今回のインタビューが実現しました。
■国産の豚革の良さを活かした商品を通して、豚革が素材として存在している背景を伝えたい
ーーー『国産の豚革』について知ったきっかけを教えてください。
オリジナルブランドで商品開発をしていた時に、仕入れ先の牛革を扱う墨田区の会社で、牛革ではなく豚革をメインに扱っているということを教えてもらいました。それまで豚革のことについて、あまり詳しく知らなかったのですが、豚革のことが気になり始めていろいろ調べるようになりました。
ーーー革製品というと牛革が多いイメージですが、豚革をメインに扱っていらっしゃったんですね。
私も豚革について調べ始めてから知ったんですが、豚革の産地は日本産がほとんどなんです。それは日本の食文化の影響もあり、世界では豚さんの皮を食べる習慣があるのですが、日本では豚さんの皮を食べないので、食用に加工した際に、副産物として豚さんの皮が存在するんです。
ーーー豚革は日本産がほとんどだということを知りませんでした。もう少し詳しく教えてください。
日本の養豚場で育てられた豚さんは、屠畜場という食肉加工場で加工されます。お肉とは別に皮は皮専門の輸送業者さんがなめし工場に運びます。その次に、なめし工場では皮が腐敗しないように不要物を取り除き耐久性を持たせます。その後に、染色をして豚革になります。豚革を作る職人さんと革製品を加工する職人さんがいて、私は墨田区内でそれぞれの業者さんと直接やり取りを行いながら『Sai』の商品化をしています。墨田区内の信頼できる方々の力を集結して商品が出来上がるので、私は責任を持って商品をお客さんに届けています。
■国産豚革ブランド『Sai』に込めた想い
ーーーオリジナルブランド『Sai』の名前の由来は「アジサイ」からとっていらっしゃるんですよね。
はい。紫陽花は日本発祥のお花ですが、むかしは日本で人気がなく、先に海外で人気になってから、日本でも人気になったそうなんです。
そんな紫陽花のように、豚革も日本で人気になって欲しいという願いもこめました。
ーーー紫陽花は海外からの人気が先だったんですね。ちょうど今の時期、街を紫陽花が彩っていて、綺麗な様子に足を止めてる人をよく見かけます。
豚革は繊維がきめ細かいので、優しい色味が出しやすい素材なんです。彩りのある商品展開にしたいという思いもあり、『Sai』には「彩(サイ)」という意味も込めました。
ーーー最初にブランド名を知った時は、豚さんなのに「サイ」なのが不思議でした。
動物のサイは全く名前の由来には関係なく、『Sai』という名前に決めた時は、動物のサイのことは忘れていました。お客さんからも豚さんなのに「サイ」っていうところに突っ込んでもらえることもあるので、今では話が弾むキッカケにもなっていて逆に良かったなぁと思ったりもします。
ーーー『Sai』は優しい色合いの世界観で、とても目をひきました。
ありがとうございます。元々商品を作ろうと考えた時に、パステルブルーの色がすごくきれいだったので、パステルブルーの豚革小物をメインに展開していこうと決めたんです。その次にメインのパステルブルーに合う色で、パステルピンクとベージュも一緒に商品にしていこうと決めました。
ーーー児嶋さんのファッションは黒色が多いイメージなので、パステルブルーの色味が好きと伺って少しギャップがありました。
そうですか?今日も黒は多めですが、ココ(脇から肩にかけて)に少し薄いピンクが入っていますよ!
ーーー本当ですね、少し入っています!
あっでも、少し計算して黒を多く取り入れています。本当はもっと色を取り入れたいんですけど、むかし友達から「顔がこどもっぽいから色を抑えた方が良いよ」とアドバイスを受けて、それから意識しています。
自分の好きなものを着るのも良いと思うんですけど、人から見られた時に服装って目に入る部分が多いので印象に残ると思うんです。なので今は少しだけパステルカラーを取り入れたりしてます。
ーーー『Sai』の商品は女性が惹かれる色合いですが、男性が差し色で持つのもオシャレですね。
色合いからなのか、お客さんの9割は女性の方です。ただ、女性向けにブランドを作っていたわけではないんです。私が実家で母親と祖母と暮らしていた経験が影響しているのか、女性が好む色を自然と取り入れているのかもしれません。パステルカラーはシックな色合いの服に合わせると爽やかなイメージにも変わると思うので、男性にも『Sai』の商品をオススメしたいです。
■応援を力に変えて、継続し続けることで、想像を超えた景色が見えてくる
ーーーキックボクシングはいつ頃からプロを目指していらっしゃったんですか。
実はプロのキックボクサーになろうと思ってキックボクシングをやっていたわけではないんです。キックボクシングを始めた時、最初は全然うまく出来なくて、周りの人からも向いてないって言われてましたが続けていました。
アマチュアデビューしたのも、ちょっと珍しい経緯なんですが、友達が試合に出るのに付いていくことになったのがキッカケでした。少し遠い場所で試合が行われたので、どうせ行くなら一緒に試合に出たらと勧められて想い出づくりで出ることにしました。
ーーー急にアマチュアデビューが決まったんですね。
はい。キックボクシングを始めて2か月しか経ってなくて、試合に出て強い選手と戦うのはとても怖かったです。その後もアマチュアで試合に出ていて、敗戦ばかりでしたが続けていました。アマチュアの試合に出場していて、たまたま通っているジムで試合を開催することになり、ジムの会長からプロになってみないかと声をかけてもらえて、会長の推薦枠でプロデビューすることが出来ました。アマチュアでは勝利したことなかったんですけどね。
ーーープロになったのも珍しいキッカケだったんですね。敗戦が続く中でもキックボクシングを続けられたのはなぜですか。
昔から人より出来ないことが多くて、一生懸命続けることで成長できた経験は多くありました。敗戦はしていたんですが、毎回格上の選手と対戦していて、着実に自分が成長出来ている感覚はあったんです。そして周りの人もその成長に気づいてくれていました。
ーーー会長に推薦していただけるなんて、児嶋さんのキックボクシングに取り組む一生懸命な姿勢を応援していらっしゃったんですね。
キックボクシングをやっている時も、豚さんの魅力を広める活動を行っている時も、一生懸命な姿勢を褒めてもらう経験はありました。同じ試合に出場していた選手や、友達からも、なんでそんなに一生懸命になれるのって聞かれました。下の名前が「真人(まさひと)」と書くので、“真っ直ぐな人”でいられるのかななんて、最近思っています。
ーーー素敵なお名前で、児嶋さんにピッタリです。児嶋さんの周りには、一生懸命な姿を見て、応援してくれている人がたくさんいらっしゃいますね。
プロキックボクサーの引退試合の時も、豚革でシルバーのカッコいいボクシングパンツをプレゼントして頂いたり、常設店のオープン祝いに豚さんの一枚革を頂いたりと、応援してもらえることはすごく力になります。
頂いた豚さんの一枚革は、もともと常設店に飾りたいと思っていて、購入したいとお願いしていたものだったので、とても嬉しかったです。
豚さんの生きた証として、キズが沢山入っているヤンチャな豚さんの革を選んだので、常設店に来た際にじっくり見てみてほしいです。
■『辞めない努力』を胸に、豚さんの魅力を伝え続けて、命を価値あるものにしていく
ーーーオリジナルブランド『Sai』が今年で2年目になりましたね。
はい、1年前と今では、だいぶ変わりました。豚さんの魅力を、豚革小物を通して伝えたいという想いは変わりませんが、商品の良さをお客さんに教えてもらうことも多くて、とても嬉しいです。豚革は発色が良いので、革の色合いを見て興味を持ってくださり、実際に触って、優しい肌触りや柔らかさを褒めてもらうことが多く、豚さんの価値を自分でも再確認出来ています。
ーーー私も色合いと肌触りにとても魅力を感じました。今年の4月に常設店もオープンされたので、たくさんのお客さんに商品を手に取ってもらえる機会が増えそうですね。
常設店は東京スカイツリーのある押上駅から歩いて20分の場所にあり、駅から少し歩くのですが、常設店の横には美味しい珈琲店もあるので、コーヒーを買ってから『Sai』でゆっくりしてもらっても良いかなと考えています。
『Sai』の販売開始から1年、いろいろなイベントに出展したのですが、手にはとってもらえても、詳しく説明できないまま違うブースに移動してしまうお客さんも多かったので、常設店を作ろうと思いました。
ーーー昨年は全国各地のイベントに出展されていらっしゃいましたね。
はい。本当にたくさんのイベントに出展しましたが、人が多いイベントブースでは、他のお客さんのことを気にしてなかなか聞きにくいこともあるのかなと感じました。そこで、常設店を構えて、昨年イベントから気になってくれている方へも、ゆっくり出来る空間で丁寧に豚さんのこともお伝えした上で、じっくり商品を選んでもらえたらいいなと期待しています。
ーーー徒歩20分の場所だと、コアなファンの方が増えそうですね。
『Sai』のファンの方が集まるイベントもやりたいなと考えています。集まった人たちで『Sai』のことを語ったりしてくれたら楽しいなと思っています。そしてファンの人たちと一緒に、『Sai』を通して豚さんの魅力をより多くの人に伝えていきたいです。
ーーー色んな人のアイデアで、さらにブランドが成長していきそうですね。墨田区に来て豚革の魅力を伝える活動を始めてから、たくさんの出会いがあり、今まで想像をしていなかったことが実現できていて、可能性がどんどん広がっています。いろんな形で伝え続けていくことが大事だなと感じているので、ファンの方々の声に耳を傾け、良いアイデアを取り入れて『Sai』をファンの方と一緒に育てていきたいです。
ーーー『Sai』を通して私も豚さんの魅力をたくさん知ることが出来ました。
『Sai』の商品は豚さんだけでなく、たくさんの工程で関わって下さる人達のおかげで展開できているので、自分ひとりのためだけではないと実感することも多く、『辞めない努力』というキーワードを心に刻み活動しています。活動を続けていて、まだまだ豚さんの魅力が知られていないなと思う機会がたくさんあります。でも「こんなに魅力があるのに知ってもらえていない!!!」という悔しさをエネルギーに変えて、これからも豚さんの魅力を多くの方に伝えていきます。牛革も合成皮革もそれぞれに特徴があり魅力もあります。豚革の特徴も知ってもらうことで、選択肢の1つになってほしいなと考えています。
少しでも興味を持ってくださった方は、是非お気軽に常設店にお越しいただけると嬉しいです。
※土日祝日限定オープン
営業日はインスタグラムをご確認ください。
■ご紹介(HP、note、Instagram等)
【pigup】:代表、豚革プロデューサー
・HP:豚革の魅力引き出す - ピガップ (pigup2021.com)
・stand FM:国産ピッグレザーブランドSai | stand.fm
【Sai】:パステルカラーの豚革小物ブランドの運営
・HP:Sai (sai2021.official.ec)
・Instagram:Sai | 優しい肌触りのピッグレザー(@sai_pig) | Instagram
【キックボクシング】:元キックボクサー、キックボクシング教室、トレーナー、レフリー
・twitter:児嶋 真人(@koji_koji1992)さん / Twitter
・note:児嶋 真人|note
■編集後記
5月末に行われた『モノマチ』という台東区のイベントで初めてお会いした児嶋さん。実は『モノマチ』に出店していたのもいろんな縁や機会が重なって特別に台東区デザイナーズビレッジに入居する『otayori』さんというジュエリーデザイナーさんのスペースで、販売させてもらっていたそうです。
私は『モノマチ』でのイベントの後にインタビューをさせていただき、この記事を編集後記の前まで書き終えたところで、まだ行ったことがない常設店へ行かずにはいられなくなりました。
押上駅から徒歩で20分、向かう途中に気になるカフェを3件ほど通過し、踏切の目の前の『Sai』の常設店へたどり着きました。
一枚革の豚さんはブルーとピンクが飾ってあり、近くで触らせていただきながら、部位ごとの革の質感や表情を詳しく教えていただきました。
そして、それぞれの商品が出来るまでの工程もインタビュー時には聞けなかった細かい工程まで教えてくださいました。
革の型を抜く職人さんと、革の縫製をする職人さん、革の型押しをする職人さんなど、革の加工には各工程の専門技術が求められることを知りました。
また、イベントブースとは異なり、商品がゆったりと配置されているので、全身鏡でコーディネートを合わせながら、じっくりと商品を選ぶことができました。
お客さんへ丁寧に商品を説明するために『Sai』の常設店をオープンし、「今年は変化していくタイミング」とおっしゃっていた児嶋さんがとても印象的でした。
そんなタイミングでインタビューを引き受けてくださったのも、応援してくださっているファンの方にインタビュー記事を見てもらいたいという気持ちがあると最後にうかがいました。
『Sai』の商品に携わっている職人さんや、応援してくださっている方々のことを常に考えながら、進化していくために挑戦を続ける児嶋真人さん。
お忙しい中、貴重なインタビューの機会をくださり、そして豚さんのことについて詳しく教えてくださり、本当にありがとうございました。
私も『Sai』の商品を愛用しながら、応援していきますので、引き続きよろしくお願いします。
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