OHに最適な解法は? ~ Roux vs ZB

先日,Dhruva Sai Meruva選手がOHで平均8.27秒という記録を叩き出し,その後の大会でも8.46を出しています.現時点でのCFOP最強と言って間違いないでしょう.

Dhruvaはtpsで稼ぐスタイルで,一般的にOHのCFOPで使われるZBLLやOLLCPなどのテクニックはほとんど使っていません.しかし,CubeRoot氏のコミュニティ投稿につけられたコメントによると,DhruvaはZBLLを練習しており,ZBLLを使ったCFOPはRouxよりも優れていると主張しているそうです.
OHにおけるZBといえばJuliette Sébastien選手が有名ですが,JulietteはインタビューにおいてZBLSとZBLLを使うことでRouxよりも少ない手数で解くことができると主張しています.

DhruvaがZBを使うようになれば公式sub8は確実でしょう.では,OHにおいて最適な解法はZBでしょうか?それは違うと思うのです.

手数の比較

5人のトップOHerの手数の平均と,参考のため標準偏差もまとめてみました.ソルブのデータはreco.nzを参考にしています.(ただし,reconstructionが載っているソルブは,YouTubeに動画が存在するソルブであり,良いタイムが偏って存在していることには注意が必要です.)

$$
\begin{array}{}
\hline
名前 && 解法 && 平均 && 標準偏差 \\
\hline
\text{Juliette Sébastien} && \text{ZB} && 52.3 && 7.0 \\
\text{Dhruva Sai Meruva} && \text{CFOP} && 64.5 && 9.0 \\
\text{Sean Patrick Villanueva} && \text{Roux} && 53.1 && 6.8 \\
\text{Magnus Lensch} && \text{Roux} && 54.1 && 8.2 \\
\text{Fahmi Aulia Rachman} && \text{Roux} && 49.0 && 8.7 \\
\hline
\end{array}
$$

現時点でほぼすべてのソルブでZBLLを用いているのはJulietteぐらいしかいないので,Julietteのソルブの手数を見てみましょう.JulietteのOHのソルブの平均手数は52.3でした.Dhruvaの平均手数が64.5であることを踏まえると,通常のCFOPよりも大幅に手数を削減できていると言ってよいでしょう.

Rouxerとしては,世界記録保持者のSean Patrick Villanueva選手と,データの多かったMagnus Lensch選手,Fahmi Aulia Rachman選手の統計をとりました.SeanとMagnusが50手ちょっとだったのに対し,Fahmiは平均49.0手と他を引き離しました.多くのRouxerがD面色デュアルなのに対し,Fahmiは4色用いているので,その分手数を減らせているのでしょう.

ZBとRouxを比べてみると,JulietteはSeanやMagnusよりも少し手数が少なく,Fahmiよりは手数が多いという結果になりました.概ね,ZBLSとZBLLを用いることで,Rouxと同等あるいはRouxよりも少し手数を減らすことができています.

持ち替えと手順の回しやすさ

どちらの解法も50手近くまで手数を減らすことができていますが,それよりも重要だと思うのが人間工学的な回しやすさです.
Rouxは手数が少ないことが注目されがちですが,ソルブの大半が片手で回しやすい動きで構成されていることもOHのRouxが強い所以です.RouxのSBは持ち替えなしのRrMUgenで,LSEはMUgenなので片手でも回しやすいです.ネックとなる部分があるとすればSBによるRとrの動きの間で親指のホールドが少し変わるところでしょう.これについては後述します.FやDなど回しにくい動きが含まれうるのは,FBとCMLLです.FBは自由度が高いため,片手で回しやすい解法を選択することができます.CMLLは基本的には11手前後の回しやすい手順が多いです.
一方でCFOPおよびZBはどうでしょう.クロスですが,これはRouxのFBとほとんど同じようなものだと思います.自由度が高いので片手で回しやすい解法を選択でき,手数もFBと同じぐらいです.F2Lは基本的にRUgenで,RouxのSBのようにrやMはないですが,y持ち替えやz持ち替えが発生します.自分はy持ち替えなどよりもRとrのホールドの変更の方が得意ですが,ここは人による部分だと思います.しかし大きく異なってくるのがLS以降です.ZBLSやZBLL,特にZBLLはCMLLより回しにくかったり長い手順が多いです.これは当然と言えば当然です.CMLLではF2Bを崩さずにコーナーを揃えば良いだけですが,ZBLLはコーナーだけでなくエッジもすべてそろえる必要があります.CMLLは,同じCPケースのZBLLの中から一番簡単なもの,あるいはそれより簡単なEOが崩れる手順などを使うことができるからです.

以上から,ZBよりもRouxがOHには優れていると結論付けます.

おまけ: Rouxのことをどれだけ知っていますか?

ここからは少し感情的な話も入るので,根拠としては弱いですがいろんなテクニックを学ぶきっかけとなれば幸いです.
キューブの解法を学ぶとき,まずはCFOPから入る人がほとんどです.OLLCP,エッジコントロールなどといったCFOPで使われるテクニックはRouxerでも知っていることがほとんどです.しかし,CFOPerはRouxのテクニックを知っているでしょうか.たとえば,あなたはLSEに関する以下の用語のうちいくつ知っていますか?

  • 4c読み

  • EOLR

  • misoriented center

  • センター交換回避

これらはOHのRouxである程度速くなる上で不可欠な技術です.また明確な用語はありませんが,SBにおけるペアリングはM列が空いている分自由度が高く,このようなものも身に着ける必要があります.逆にこれらを知らないと,Rouxを実際そうである以上に冗長な解法だと勘違いしてしまいます.Rouxを批判している方は,このような技術を知らない可能性があります.
少し説教臭くなってしまいましたが,僕が言いたいのはぜひこのような技術を学んでみてください,ということです.これらのLSEの技術はうぃるうぃるさんの記事に書いてあります.また,SBLSの手順表などから,ペアリングに関するヒントを得ると良いでしょう.

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