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秋葉原のこと

最初の記事で何を書こうかたくさん考えましたが、敢えて自己紹介ではなく最近のことにします。自己紹介は記事を書いていくことで、後から浮き彫りになると思うからです。

今年の1月下旬に、1週間ほど秋葉原に滞在しました。年末からあまりにも日常生活で心身の疲労が溜まっており、リフレッシュした方が良いと言われ続けていたので、思い切って休みを取りました。
私は睡眠する上で複数の問題を抱えているため、旅行では自分の睡眠と相性が良いホテルに泊まるようにしている。つまり予算に合うホテルならどこでも良いのではなく、条件からだいぶ限定されているのです。
私が東京に行った折に秋葉原に滞在するのは、そんな自分の体質に合う馴染みのホテルがあり、滞在中の食事やちょっとした買い物がとても便利だから。
もちろん、オタクな自分にとって、電気街や神保町の居心地が良いからというのもある。電気街を歩くだけで、ワクワクして心地がよい。

私が初めて秋葉原に行ったのは1999年の春のことだった。ずっと年上の男性が案内してくれた。ぶっちゃけると当時の恋人だ。彼は仕事柄、二次元の美少女が大好きなオタクだった。なんやかんやあって私と付き合うことになり、パーツショップや同人ショップ、成人向けの漫画などの本がたくさんあるチェーン店の書店に連れて行ってくれた(記憶があやふやなので違うかもしれないが、新宿書店だったと思う。果たして秋葉原店もあったのか、調べても分からなかった)
その頃の秋葉原は食事処がなかなかない。食事に困る街として知られていた。電気街の中心部から少しはずれた場所にあるカレー屋だったか喫茶店だけが手頃な値段で誰でも入れる食事処だった。
そこは家庭用のカレールーで言うと辛口以上の辛めのカレーしかなかったと記憶している。恋人は辛いものが大好きだったが、辛いカレーが苦手だった私は、初めて大人の交際をすることと辛い食べ物に慣れていくことが心の中でリンクしたものだった。今でも50歳以上の年季の入ったオタクに秋葉原の話をすると「食事に困った」という感想が返ってくると思う。

ここで2023年の現代に戻ります。今の秋葉原には、数百円でお腹いっぱいになる定食屋から、私にとって「誰がいつどんなシチュエーションで入店するのだろう」と思う立派な佇まいの料亭みたいなお店、はたまたコンカフェやさまざまな高級感ある飲食店がやたらとある。とにかく食事に困らない街になった。これはきっと、かつては電気工学マニアの街だったのが二次元が大好きなオタクの街となり、外国人観光客がたくさん訪れて一大観光地になったからというのも大きいだろう。

私はゲームやアニメなど、二次元のものが大好きだ。幼い頃も今も、心の拠り所である。今では悲しいかな最盛期とは言いづらいエロゲーも大好きだ。生活に追われてなかなかプレイできなくなって久しいけれど……。
電気工学の街だった頃の秋葉原は、やがて二次元の萌え産業(古くさい言葉ですが当時を表すにはこれがピンとくると思う)の街になりました。
私が初めて訪れた1999年にもその萌芽はありましたが、本格的に二次元の萌えだらけの街になったのは21世紀になってからでした。一般のゲームやエロゲーのキャラクターの等身大ポップ、ソフマップなど大型のショップの外壁に飾られるエロゲーの叙情的な広告、同人ショップの入口からも分かる同人誌の平積みもあったと思う。すごい時代になったもんだと思いながら見ていました。
やがてどういうわけか、バイブやオナホールなどのアダルトグッズを適切な値段で販売するショップもできました。そのショップができる前のアダルトグッズと言えば、新宿など繁華街の片隅の怪しい店で異常に高い値段(今の8〜10倍のぼったくり価格)で買うか、インターネット上の僅かしかない良心的な通販で買うものでした。
これには個人的に驚きました。オタクの誰もが好奇心と戸惑いを覚えていました。なぜ秋葉原=エロの街、ということになったんだろう。ぼったくり価格じゃないのはありがたいけども。
単に意欲的な人達が新しいビジネスを始めてくれたのだろうと私は考えたいのですが、ひょっとしたら二次元の萌えやエロが誤解された可能性も捨てきれない。
エロゲーというのは、いつの時代も「エロ本やAVと同じようなものだろう」と誤解されやすいものです。成人向けの同人誌もそうなんですが、現実のエロと二次元のエロは完全にイコールではない。現実のエロを二次元の媒体にするのは、理想化や概念化がなされてることが多いと思うのですが、現実を忘れたくて見るものに現実の成分はないのです。あったとしても、何かしらの美味しいフィルターがかけられている心地よい世界になっている。臨床心理士から聞いたのですが、ヒトは概念化のスキルに個人差があるため、現実を二次元に落とし込まない人もたくさんいるのだそうです。だからエロゲーや成人向けの漫画は、概念化が得意なオタクにしか理解できないのかもしれません。

ちょっと話が逸れてきたので再び令和に戻ります。今の秋葉原は、店先にえっちなものが並べられていません。2002年ぐらいから2010年ぐらいまではエロゲーの広告やアダルトグッズ店のワゴンがありました。やっぱり問題視されたのか、時代に合わせて変わっていったんだろうと思います。外国人観光客も増えたので、イメージを良くしたいのもあったと思う。元々あの辺りは小学校もあるし。
そうして浄化みたいなことがされて、一見すると観光地っぽくなった秋葉原。建物の中に入れば相変わらずオタクの街ですが、とらのあなは無くなっちゃったしエロゲーを扱うお店も激減した。

だけど、私は今の秋葉原がとても丁度良いと感じています。食事に困らず、オタクが趣味に没頭できる街。
店先に露骨に性的なものが飾られていない方が正解だとも思う。えっちなものを見たい人や欲しい人は、店に入ればいい。二次元に近い三次元のオタク文化もちゃんと残っていて、様々なコスチュームの女の子や男の娘がいる店もある。古いアーケードゲームがたくさんあるゲーセンもある。一歩踏み入れればちゃんとオタクの街してると思う。
なので、私としては秋葉原が決してつまらなくなったとか退化したとは思っていません。好きなラーメン屋さんは無くなっちゃったけどね……。光麺が大好きでした。
最近の若いオタクは身なりを綺麗にしたオシャレな人が多いため、なおさらオタクの街っぽくない。でもそれは確実に良いことだなぁとつくづく思う。イメージアップは大事。

次に秋葉原に行けるのはいつだろうか。待ち遠しい。
半年もあればお店の入れ代わりで印象がすっかり変わる街だったが、ここ数年はあまり入れ代わりがないと感じています。