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動物飼いたい人間が限界を迎えた話(後編)

 前編ではペット不可の賃貸に住む私が、ペット飼いたい欲に苦しんだ挙句、限界を超えて多肉植物に情熱を燃やすこととなった経緯を書いた。
 種族不明のタニさん達は、現在温かくなってきた気温もあり小さな成長を見せ続けている。
 タニラーと自称するにはまだまだ未熟であるが、ホームセンターに立ち寄った際にはクリアランスコーナーの多肉植物たちを見る癖がつくようになってしまった。可愛げのあるセダムあたりが、次のターゲットである(鋭い眼光)。
 さて、そんな食堂の動物飼いたい欲が今回更なる変貌を遂げたので書いていきたいと思う。今度【飼う】生き物はズバリ、微生物である。

緑がもたらした活力

 前述させていただいた、多肉植物との生活は自分に大きな変化を与えていた。
 日光をより多く浴びせるために朝早く起きるようになり、多肉植物の鉢をベランダに出す。そして、朝の点検。その時に脇芽の小さな成長を愛でる。
 

(ははは、お前が此処に来たときはこんなに小っちゃかったのに大きくなったなぁ、アハハ……)

 その触れ合いを通して、今までまったく植物…ひいては庭いじりに魅力を見出せていなかった自分の中に「植物っていいな…」という気持ちがむくむくと沸き起こっていた。
 一日一日の成長はものすごく小さいが、一週間で考えると確実に変化している。そんな姿が大変いじらしい。元気をもらえるのだ。
 ガーデニングにはまる人がいるのもわかる気がする。
 この心境の変化を、うまくQOLの向上に活かせないだろうか。
 そんな時である。脳内のTOKI〇が囁いた。

どのレベルから作るの? 土から?

 「そうだ、家庭菜園を作ろう!!!」

 以前家庭菜園モドキと称してハーブ鉢を作ろうと思い立った際、うまく発芽せず、断念した。
 しかし、植物への愛情をもった今、リベンジを果たせるのではなかろうか。
 幸い自宅に巨大な発泡スチロールがある。捨てるのに解体するのも骨が折れるやつだ。こいつをベランダの畑、名付けて「DASHむら」にしてやろう。
 第一に、畑のイロハのイともいえる土づくりだ。畑をしている祖父母からの教えもあり、畑を作るための良い土づくりに着手することとした。

 場所も資源も限られている中で良い土を作るために私が始めたのは、生ゴミたい肥――いわゆる「ベランダコンポスト」である。
 自炊を割とするので、生ゴミが結構出る。野菜くずや卵殻、コーヒー豆のかすなど。自炊をする段階でそんな野菜くずを小さく刻んで置いておき、水分がある程度抜けたら百均で買った腐葉土に混ぜ込む。
 コンポスターにしているのは、ネットショッピングで発生する段ボールである。不要となったTシャツを切って通気性のある蓋にし、同じく百均で買った洗濯ネットで包み、防虫ネットの代用とする。
 
 ここから微生物との生活も始まった。

白いあったかいモフモフ

 たい肥を作る微生物のエネルギー源として、生ゴミに加えて米ぬかをまくといいらしい。近所に精米所があったので少量の米ぬかで試しに入れてみる。
 なるほど、微生物も野菜ばかりだと分解するエネルギーが足りないのか。炭水化物が必要なのは人間と一緒だな、と思いながら空気を混ぜ込むように一日一回しっかり土を混ぜる。水分も必要なので土が乾燥していたら米のとぎ汁を入れる。
 今回は小さめの段ボールで実施しているので、生ゴミを投与した次の日は生ゴミを追加せず、混ぜるのみの日を設ける。
 調べたところ、腐葉土の中の微生物が生ゴミをうまく分解し始めると、土が温かくなるらしい。
 「そんなまさか~!」と思いながら土をそっと触ってみた。

 あ、あったかい……!!!?(集中線)

 人肌ほどの温かさである。ホカホカしている。生き物の温かさだ。
 (コイツ、生きてる…!?)と心底ビビった瞬間である。
 同時に微生物に大きな愛着をもった。目に見えなくてもしっかり生きてるんだな、えらいなお前たち……。
 そんな最近のコンポストの中身がこちらである。
(一応生ゴミたい肥なので、ファイルとしてワンクッション置かせていただく)

 ネギの切れ端がモフモフしている。このモフモフが白カビである。
 モフモフが土に発生すれば良い分解が進んでいる印らしい。
 しっかり食べて、美味しい野菜を作る為の土を作ってくれ!私はその野菜を食べる!!!(ややこしい文章)

グラノーラを食べる微生物

 近所に精米所があるとはいえ、米ぬかが常に調達できるとは限らない。他にも畑が近いこともあり、いつも米ぬかは小さいビニール袋くらいしか手に入らない。
 そんな時、台所の奥からあるものを見つけた――グラノーラである(賞味期限が2年前に切れている ※開封済)。
 グラノーラとは言え、ここまでの事態のものはなかなか無い。 胃腸が強い遺伝子をもっている私でも、さすがに食べる勇気もない。

・・・・・・。

(米ぬか代わりになるか…?)

  ミルミキサーで細かくしたグラノーラを米ぬかよろしくコンポスターに撒く。
 そして翌日。

 >>あったかいーーーーー(意訳:食ってるーー!!!!!!<<

 賞味期限が大幅に切れているとはいえ、私よりもお洒落な物を食べている微生物ちゃんたちである。
  小さめコンポストなので、3月末まで生ゴミ投与と分解をして、4月は熟成期間に充てる予定である。DASHむらの本格的稼働は5月あたりに始まりそうだ。

動物飼いたい人間が限界を迎えたところ、植物と微生物を飼い始めた……という結果を招いたことが自分でも面白いな、と思ったので記事を書かせていただいた次第である。
 だが、充分満たされているので、ペットが諸事情で飼えない皆様も、一度試してみてはいかがだろうか。充分可愛いぞ。

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