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[空想中毒の未成人への処方箋]生活を最上の娯楽に変える方法

近年の空想中毒の激化は極めて激しくなってきており、もはや傷病の域に達する勢いである。そこで、ここで一つ極めて単純化した文章で、皆に目を覚ましてもらおうと思う。
 

生きるとは、食って寝てセックス(コミュニケーション)して家族(仲間)のために仕事をする、これだけである。これ以外の商品や思想はすべて、空想のニーズから生まれたものであり、本来は必要ないものである。豊かな人生などという言葉は消費を煽る詐欺師の嘘であり、すべての人生は元から豊かなものである。もしそうでないと感じているなら、感性を破壊されているだけである。正常な人間は、上記の「普通の生活」に満足することができる。もちろん、ここに芸術が加わることもあるが、ほとんどの場合はコミュニケーションの手段であり、新たな概念を提唱するような真の芸術を生み出せる人間はごく僅かなので、一先ず無視することとする。
 
本来であれば、人間の生活に暇や退屈など存在しない。朝日に起きて、星に眠る。うまいものを食う。美しい人間とセックスする。家族の団らんを楽しむ。仕事を通じて、社会とつながる。一見、”あたりまえ”の人間生活に見えるが、すべてを達成できる人間などわずか一握り。アッパークラスの人間しかいない。われわれは、この当たり前で極上の幸福を達成するために日夜努力を重ねるべきなのだが、世の中に流布する空想によって、あたかもそれらが容易に達成できるロールモデルとしてまかり通ってしまっている。
 
よく考えてほしい。懸垂ができるか。料理ができるか。だれとでも陽気にコミュニケーションがとれるか。社会に必要とされているか。恋人がいるか。実際には、ほとんど達成できていない。この目標に向かって努力すれば、誰もが理想とする”成人”になれることは自明なのだが、現状に不満を抱くことができない。このような、正常に作動すべき”不快感スイッチ”が作動していない状態こそ、空想中毒の症状である。
 
現代では、そこら中に快感が散りばめられている。本来であればたどり着きようもない誰もが羨望する人生を、フィクションによってその”感嘆や感情”だけ味わい尽くすことができる。絶世の美男美女と、容易に性交することができる。運動せずとも、高カロリーな栄養食がいくらでも食べられる。SNSによって無数の人間とコミュニケーションしている感覚を味わえる。絶えず打ち込まれる致死量の超感覚によって、現代人の感性は完全に破壊されてしまっている。
 
こうして空想中毒となったヒトは、成人として持つべき感性をもてない未成人として社会に放り出されることになる。これこそ、現代の不幸の最も大きな要因のひとつである。
 
では、われわれが成人を目指すために、どのような対策ができるか。
 
まず、目指すべきところとして、ジジババ世代の感性がある。彼らと交流した経験のある人なら、われわれ現役世代からは想像もつかないような、冷酷無比なリアリズムに基づく感性を垣間見たことがあるだろう。彼らは、現実が忖度してくれないことを知っているのだ。なにか不思議な力で人生がうまくいくとは思っていない。あくまで実情から鑑みた正当な評価を以て、極めて残酷な言葉を吐くことがある。生に対して極めて真剣だからこそ、激を発することができるのだ。フィクションで薬漬けにされた人間からは決して出てこない懸命さだ。
 
一方、お花畑に囲まれた世界で育ってきた我々は、知らず識らずに牧歌的で独善的な世界観をインストールしてしまっている。われわれ”の”世界ではなく、世界”に”われわれが在るのだ。ここを勘違いしてはならない。今こそ、現実世界で思想的成人を迎えるため、不幸を生み出す自己中心的感性を焼き払い、再構築する必要がある。尊ぶべき生活を取り戻すのだ。

まずは、感情の過剰摂取をやめるべきである。現実に目を向け、正常な感覚を取り戻すため、物語や毒の摂取を抑えなければならない。
・酒
・タバコ
・ポルノ動画
・SNS
・フィクション(映画、小説、ゲーム、Youtube)

上記の項目は、すべて非常に強い麻薬である。一度やってしまえば、中毒に陥る。空想の世界に容易に逃げ込むことができるアヘンの鍵である。人付き合いに酒が必要だの。SNSがないと縁が切れるだの。フィクションは豊かな人生に必要だの。すべて愚かな言い訳である。一つでも当てはまる項目がある諸君らは、自らの精神的健全性を見つめ直す必要がある。
 
これらを全て断絶させることで、現実を見つめることができるようになるだろう。朝の目覚めにはSNSではなく、朝日を眺める。陽光に慈しみを覚え、ふと鳥のさえずりに気がつく。周りに満ちている豊かな自然を再発見し、生活もとい、人生の豊かさに気づくのである。これまでの感性を焼き払うために、能動的に行動を起こす必要はない。ただ必要なのは、やめるべきことをやめるだけである。そうすると、今まで浪費していた時間の膨大さに気づく。近視眼的な快楽から開放されることで、自らの主導権を取り戻すのだ。やめるときのコツとしては、代替物を用意しておくことが大事だ。例えば、酒ではなく高級な花茶。タバコではなくお菓子。ポルノ動画ではなく生身の女。SNSではなく、友とのスポーツ。フィクションの消費ではなく、フィクションの生産。殆どの場合は代替物の方が取得難度は上昇する。これまで消費してきたお手軽快楽はジャンクフードなのだ。飲食物への満足、コミュニケーションへの満足、性的満足、本来その感情を得るために払うべきコストは膨大である。これを支払うためには、体を鍛えたり、知識を得たり、金を稼いだりすることが必要なのだ。つまり、代替物といったが、本来は逆で、これまで消費してきたジャンクフードこそが努力の果に得るだろう感情の代替物である。払うべきコストを払うため、やるべき努力を見つめ直し、そのために時間を費やすことこそ、これまで接種してきた感情薬物への依存を忘れさせてくれる唯一の対策法なのだ。
 
こうして生活していると、頭や体のキレが増し、不快感スイッチが回復することで現実生活の改善点や不満点に気づきはじめる。次にやるべきなのは、生活の再構築である。感情薬物を完全に排除していると、はじめはメリットばかり感じるだろうが、しだいに不都合も出始める。精神的ストレスが蓄積され続けてしまい、解放されることがなくなってしまうのだ。人間の脳は極めて高度であることと引き換えに日々にストレスを感じてしまう。これが続くと精神が肉体を死せしめるときさえある。故に、古来からシャーマンのような薬物マスターが存在しており、時折人間の脳を麻痺させることによって精神的負荷を取り除いてきたのだ。ここまで感情の過剰摂取をこき下ろし続けてきたが、実を言うと清廉すぎる生活は極めて脆い。人間は動物なのだから、生活のなかに健全な快楽が必要なのだ。ではどうするべきか。定期的に生身の人間とセックスすることが鍵である。これは冗談で言っているわけではない。
 
「自ら主導権を持って、自らの裁量で完全に制御下にある中毒をほどほどに楽しむ」という高度な自己抑制能力と管理能力をもつ人間なら自分で感情薬物を管理しながら、ストレスが溜まってきたから小説や映画をほどほど接種し感情を昇華させておく、などとできるだろうが、日本に何%そんな超人類がいるかわからない。覚醒剤中毒患者に、「ほどほどに使いなよ」などといって覚醒剤を渡して無事ですむだろうか?といったレベルの話だ。つまり、ほとんどの人間にとっては感情薬物を持たないほうが賢明なのだ。一方で、セックスは万人に適応できるストレス解消方法である。もちろん、大前提として繁殖のための行為ではあるが、人間はそれを快楽として進化してきた背景がある。種的に近しいボノボなどが受精意外の目的でやりまくっていることを見るとよくわかるだろう。人間に関しても、一昔前までは性に対してもっとオープンだった。セックスが満ち足りてこそ、精神的ストレスが除外されてこそ、精神的リソースが生まれるのだ。こうしてできた余裕を、不快感スイッチで発見した不満点の解消のために全力を尽くす。こうして、人は成人が持つべき能力を目指し、日々の生活で努力を重ねることができるように成るのだ。感情の過剰摂取を打ち切り、精神的余裕を最大化させることで、極めて健全な生活を再構築することができるのである。
 
ここまでくれば、心身ともに満ち足りた成人が誕生する。成人は食って寝て仕事するという基幹的生活に満足することができる。満足しているため、近視眼的な快楽に溺れることもない。余った精神的リソースを用いて、余暇に自己実現や社会実現といった長期的目標に向かって時間を費やしたり、仲間とともに全力で遊んだりすることができる。昨今は「今を生きる」といったフレーズが好んで使われているが、本当に今現在だけを見つめていては、今を生きることはできない。真に人生の最大値を叩き出すには、より遠くを見つめた上で常にフルコミットすることが大切である。そして、少し進んで振り返ったときに充実した過去の連続があればよいのだ。その連続が人生であり、成人のなすべきことなのだ。
 
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