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[労働者の幸福]幸福量最大化に向けた消費と生産の方法

 われわれが、生まれてから死ぬまでの間に感じる幸福の総量を最大化するべく生きているとしたら、その命題を達成するためには、どのような手法が考えられるだろうか。生物として考えてみると、子孫を産みその子孫たちが社会的に成功し繁栄する様を眺めながら大往生する、といったことがかなり幸福そうに思える。おそらく、この根幹はゆるがない。だがしかし、人間は社会的で文化的な動物であるから、これ以外の要素も複雑に絡み合い、生を謳歌するものである。だとしたら、我々の幸福を最大化する方法は、そう単純ではないだろうが、今回はここらへんを掘り下げ、幸福な人生の指針を捜索してみる。

まず私が思うに、誰かの幸福について知りたければ、その人の休暇の使い方を知れば事足りる。誰にも縛られない自由時間とは、誰もが幸福への変換効率を最大化するべく使い方を思索するものだからだ。一般的な感覚でいうと、日々の労働で疲弊した精神や肉体を癒やすために、少し贅沢な食事をとったり、旅行に行ったり、なにかしらの趣味に興じたりするのが普通である。つまり、基本的には、自由時間=消費の時間なのだ。これは、平日=労働時間=生産の時間という近代的な労働生活リズムと対を成している。

もう少し深掘りしてみる。消費とは、自らが市場で獲得した信用貨幣を再びなんらかの商品に交換することである。商品とは誰かの労働力によって作られるので、消費とは誰かに労働させることであるとも言える。また、消費の中でも、モノとコトの購入は区別できる。モノの購入は、間接的労働の購入であり、サービス業を始めとするコトの購入は直接的労働の購入である。こうして考えてみると、我々が自らの幸福を目指して他人の労働力を購入していることがわかる。このとき、幸福量=労働量と仮定すると、買い手が得られる幸福量=商品の価値=売り手が失う幸福量となる。これはまだ良い方で、売り手が失う幸福量は所得税によって、買い手が得られる幸福量は消費税によって毀損されるので、基本的には買い手が得られる幸福量≦商品の価値≦売り手が失う幸福量となり、消費による幸福の獲得は、ゼロサム(マイナス)ゲームとなる。つまり、売り手がその労働に幸福を感じていないことを前提とすると、資本市場での消費は、“本質的には”国民の幸福の総量を減少させる行為であるといえる。まぁ、これはかなり乱暴な論であり、実際には経営者のレバレッジによって買い手が得られる幸福量≦商品の価値≧売り手が失う幸福量となり、差額分は経営者や株主の懐に入ることになる。つまり、経営者や資本家が消費によって幸福を得ることには経済合理性があるが、労働者という立場では、労働→消費→労働→…という永遠ループでは自らの幸福量を毀損し続けることになってしまう。

われわれ労働者にとって、単なる消費とは不幸になる手段なのである。極めて世俗思想と離れた考え方かもしれないが、これは紛れもない事実である。現代社会において、われわれが共有する空間、時間のほとんどは広告によって埋め尽くされている。これによって、現代人は惑わされ、消費が極めて下手になっているのだ。したがって、労働者諸君の再教育のため、幸福を生む消費とはどのようなものか、消費を介さず幸福を生み出す方法とはいかなるものか、ここらへんについて論ずる。

まず、幸福を生み出す消費とはどのようなものか。

ひとつめに、誰かと時間を共有する上で、致し方なく生じる消費である。我が国では、余暇の使い方が消費一辺倒になっているが、他国へ目を向けてみると、そもそも休日は店が閉まっているので消費ができない場所も多い。そんなとき彼らは何をしているのかというと、家族や恋人などと凝った食事を楽しんだり、スポーツをしたり、友達とパーティを開いたりしているわけだ。休日を特別な日にしようと“頑張って”何かを購入するのではなく、あくまで日常の延長線上にある幸せを求め、他人と共有する時間を自ら積極的に作り出しているのだ。その中で、飲食代やカフェ代の購入のために信用貨幣を使う、といった程度の経済活動を行う。これは極めて重要なポイントである。

われわれは個の生物であると同時に社会的な動物であり、基本的には他者との関係性の中でしか精神的幸福を見出すことはできない。今現在、われわれはこの関係性を市場で商品として購入している。なんらかのイベント、なんらかの展示、なんらかのおしゃれな場所。関係性構築に要する計画力・アイデア力・企画力・コミュニケーション能力といった高度な技術を持てないために、他人との関係性を外注しているのだ。

昔は、どんな人間でも、関係性を構築することができた。しかし、近代化が進む中で、先祖代々受け継がれてきた社会福祉的イベントは失われてしまった。年末の集い、法事、地方祭、いわゆる前時代的縛りだと思っていた行事の枠組みは、先人が築きあげてきた関係性構築のフレームワークだったのである。それらを失った今、わたしたちは他人とすごす時間を一から作り上げなければならない。その前提に留意した上で、労働者たるわれわれは、市場における商品の購入を最小限にしつつ、独力で精神的幸福を実現するための関係性構築を行わなければならないのである。これが、誰かと時間を共有する上で、致し方なく生じる消費である。

一方で、肉体的幸福は、また話が変わってくる。
>>[頭を鍛える方法]頭脳とは所詮肉体であるでも言及したように、われわれの精神は所詮肉体から生じるものなので、幸福の基盤として、肉体的幸福にも配慮しなければならない。こちらは極めてシンプルで、自身の肉体的損傷・ストレスを緩和するために消費をする、ということが必要である。肉体的幸福には、兎にも角にも時間を要する。例えば、どんなスポーツマンでも筋肉痛の回復には時間を要するように、肉体の回復期間は物質的特性として決まっているため、どんなに高度な療法を受けても、どんなに精神的ストレスが皆無でも、“時間”がなければ肉体的回復は訪れない。つまり、日々の時間を増加させる消費こそが、肉体的幸福のためには重要である。時短家電を買ったり、しょうもない雑事を外注したり、自動化したり。肉体的幸福というと、短絡的に入浴や運動といった消費を思い浮かべるかもしれないが、わざわざ銭湯やジムで消費をしなくても、自宅でゆっくり入浴したり自重トレーニングをしたりするだけで十分なので、気にしなくて良い。消費せざるを得ない事物を購入することこそ、最も重要な購入基準である。これが、自身の肉体的損傷・ストレスを緩和するための消費である。

ここまでは幸福のための消費の方法。
そしてここからは、そもそも消費をせず幸福になる方法である。消費の問題点とは、先に示したように、市場を介することによる幸福量の損失であるが、これを避けるためには、単純に市場を利用しなければ良い。つまり、幸福に必要な消費財を自ら生産してしまえばよいのだ。

幸福のために“最低限”必要なものは、人間関係と時間であるといったが、あくまで最低限のボーダーラインであり、そこだけを守っていてはギリギリの生活になる。水清ければ魚棲まずともいうように、たまにはダーティーに消費したくなるのが人間というものだ。だがそこで、必要なものを手に入れるために消費ではなく生産という選択肢を持つことで、生き方の幅が大きく広がる。例えば、肉体的贅沢のために必要な食を自分で作ってみる、精神的贅沢に必要なアートを自分で作ってみるといったところだ。圃場を借りてフルーツを作ったり、DIYでおしゃれな家具を作ったり、やってみれば案外なんでも作れるものなのだ。

>>[モノの質的充足]身の丈以上のモノを手に入れるにはどうすればよいかでも生産方法について言及しているが、とにかく生産という行為から幸福を感じられるようになれば言うことはない。これは、会社での労働も同じことで、労働(生産)から幸福を感じられるようになれば、(労働者マインドに耽溺するのが良いかどうかは置いておいて)、先に言及した不等式は成り立たなくなる。

そもそも、人生における新たな経験や知識や人間関係というのは、殆どの場合生産活動に伴って獲得するものである。自分の頭で考えて、自分の手を動かして生活するということが、どんなに尊いことか。ただ幸福になりさえすれば良いのであれば、ハッピーホルモンを絶えず身体に注入し続ければよい。永遠に電気信号を脳に与えて都合の良い夢だけ見ていればよい。われわれが目指したい幸福像は、そんなものではないはずだ。

休暇の如何を問わず、常に生産し続け、消費する必要があるものだけを消費する。これはミニマリズムではない。Less is moreではなくless is boreとはよく言ったもので、消費の抑制にとどまる生活は極めて退屈だ。そうではなく、消費を生産に移行することで、More is lessとなるだろう。これこそが、幸福への近道であり、幸福に向けた消費・生産方法なのだ。

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