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「お金」についての読書ロードマップ

寝ても覚めてもカネがつきまとう現代では、カネについての知識は生死に直結すると言える。しかしながら、カネの勉強は義務教育でもなければ大学の必修科目でもない。本来であれば、料理や友達作りと同じくらい人間社会の根幹を為す生活技術だが、われわれのお金の知識は幼少期からほとんど変化しない。生活するためにお金を払う、払うために働く、働くために生活する、といった動物的衝動に従って淡々と生きている。
 
だが、我々とて自覚症状はある。日々を無心で過ごしているところ、ふと魔が差すことがある。このまま働いていていいのか。他の人が当たり前のように知っていることを、自分だけ知らないのではないか。意識し始めると、不安や焦燥感がどんどん満ちていく。勉強への義務感を抱えながらも、現状維持の安定感や世の中に対する猜疑心から抜け出せないのだ。
 
身の回りには、そんなネガティブな感情を煽るマーケティングがそこらに転がっているので、毎年お金の”決定版”みたいな怪しい本が出回る。そして、よくわからないランキングで上位を獲得した書籍を買ってみて、なんだか少し賢くなった気がするけども、結局実生活では何をすればいいのかわからない、といった経験はよくある。ほとんどの問題は、答え自体の難解さではなく、答えを隠す障害によって困難さが増すものだ。特に金に関しては、トラブルを避けるため他人へのアドバイスを避ける者が多いので、その重要性に反して知識が広まりづらい特性がある。
 
そこで、さまざまな悩みを抱えている諸兄らのため、お金を勉強する上での勉強ロードマップを作ることにした。これを順番に読んでいけば、徐々にお金に対する多角的な視点と深い教養を身につけていくことができるだろう。プロではなく、一般人として”常識的な”知識を身に着けたいというニーズを満たすに違いない。筆者は年間100冊ほど本を読んでおり、そのほとんどが実用書や科学書であるため、書籍を厳選できるある程度の素養があることを申し添えておく。
 
(ちなみに、筆者のカネに関する洞察は以下の記事に記録しているので、まずは読んでみてほしい。「わからない」「ものたりない」といった感想をもった読者にこそ、この先のロードマップは役立つに違いない。
>>[現代の経済的最適解]カネが必要ないという人間は、すべからくカネに支配されている
 
では、これより紹介を始める。


Step.1 自分の立場を理解する


まず、最初に読むべきは「金持ち父さん貧乏父さん」である。

意識高い系界隈でよく紹介されているので、胡散臭いイメージを持っているかもしれないが、中身は間違いなく名著である。子供が読んでもわかり易い内容で、本を全く読まないヒトでもすらすらと読むことができる。資産と負債とはなにか。労働者と資本家の違いとはなにか。どこかで聞いたことはあるが実際にはよく理解できていない、といった部分を噛み砕いて説明してくれる。まず自分の現状を把握するためにも、ぜひ一冊目に読むべきである。
 
次に、「僕は君たちに武器を配りたい」だ。

自己啓発寄りの内容ではあるが、”働く”というミクロな観点で資本主義の深部に迫る内容だと思う。実用的な知識が得られるわけではないが、「金持ち父さん貧乏父さん」を補完する形で資本主義の世界の解像度を上げてくれる本だ。余談だが、瀧本哲史氏の本は言説がかなりシャープで読んでいて面白いので、機会があれば他の本も読んでほしい。
 
そして、Step1の極めつけに、「超入門 資本論」である。

この本は上記二冊と異なり、よりロジカルに資本主義を解体し、わかりやすく再構築している。内容はマルクスの資本論をもとにしているため、古典経済学チックで現在の理論とは乖離する部分も少々あるようだが、「労働者」という立場の圧倒的不利さについて強烈にネガティブキャンペーンしている。したがって、ある意味で、もっとお金の勉強がしたい!労働ばかりやってられない!みたいな熱量をインストールするには最適な本だともいえる。

Step.2 株式投資をやってみよう


ここからはより実践的な知識について紹介する本だ。
ます、「臆病者のための億万長者入門」を勧める。

正直、少し怪しい箇所もいくつかあり、全面的に賛同できる書籍ではないが、投資についての全容を掴む際には、なかなか良いと思う。特に、「不動産投資はインサイダーマーケットで、株のようにオープンマーケットではないので、素人が手を出すのは危険」という点はとても同意できる。いろいろとバッサリ言い切るからこそ、賛否両論出るのだとフォローしておく。
 
次に、「なぜ投資のプロはサルに負けるのか?」だ。

これは投資のなかでも、特に株式投資に主眼を置いて解説している書籍だ。投資とはどんなゲームか、株価とはなにか等、基本から実践まで懇切丁寧に説明してくれる。一般人の資産形成目的ならこれ一冊で株式投資は十分と言っても過言ではないほどよくできていると思う。
 
最後に、「金融庁のNISAホームページ」だ。
書籍と言っておきながらネット記事を参照にして申し訳ないが、株式投資を行う上で、NISA(非課税口座)は避けては通れない。NISAは2024年からいろいろと改訂があるため、とてもややこしいことになっている。特に口座開設時は手続きが煩雑でやる気が起きない方も多くいると思うが、ぜひ金融庁のホームページなりプロのネット記事なり読んで理解してほしい。はっきり言って、株式投資をやる上でNISAを利用しないのはありえない。ここさえ乗り越えれば、あとはマウスをポチポチするだけで、投資家の仲間入りである。

Step.3 元本(資本)を増やす

年収600万以上あるサラリーマンならば、step2までに学んだことを愚直に実行するだけで定年前には2000~3000万程度の資産を獲得できる。これだけあれば、毎月10万ずつ切り崩しても資産はそこまで目減りしないので、老後は年金+月10万+緊急時の資産3000万という申し分ない財務状況を得られるだろう。したがって、Step3以降は、資産形成が厳しいほど元本が足りないヒト、あるいはさらなる金を求めるヒトに向けて書籍を紹介する。この二者の願いを叶える方法は、事業を興すことのみである。現状の労働市場で評価されていないヒトや既に平均値を超えているヒトが労働者としてのサラリーを増やすために時間を費やすのは、極めて効率が悪いからだ。素直に自分の商品を考えて、世間に売り込もう。このステップでは、商品を作って小さな事業を作るために学ぶべき手法や思想について書かれた本を紹介する。行動する前から知識ばかりつけても意味がないので、今回は必要最小限の本のみ挙げておく。その他については、事業を興していく上で必要に応じて知識を会得すれば良い。
 
まずは、「レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術」である。

自己啓発臭い題名だが、思想として極めて示唆に富む内容である。同じ課題に取り組んだとしても、レバレッジ思想を知っているか否かで大きな差が生まれる。例えば、100通の郵便を出す必要があるとして、一方はすべて手作業で行い、一方はパソコンで住所を自動入力して機会で封緘したとしたら、どうだろうか。同じ時間働いても、成果物には何十倍もの差が生まれる。私は、レバレッジには人・機械・IT・金融の四種類があると考えている。経営者は人を使うことで成果をシステム化する。物理労働は機械で、頭脳労働はITで、そして投資は借入でレバレッジが実現する。もし、投資なり事業なりにチャレンジしても、どこかのタイミングでレバレッジをかけなければ、労働量と成果量が一対一の関係になるため、儲けの上限は自分の体力の上限にとどまるだろう。
 
次に、「日商簿記三級」である。

サラリーマンとは違い、自営業では自ら金の管理をせねばならない。複式簿記の概念はあまり馴染みがないかもしれないが、確定申告では避けては通れない。どちらにせよ、単式簿記よりも断然金の流れが読み取りやすく成るので、資格は取らずとも内容を読んでおくと良いだろう。
 
次に、「ゼロ・トゥ・ワン」である。

内容としては、起業を目指したスケール感なので、個人レベルの読者には少し重いが、内容は商品開発において極めて有用である。例えば、「重要だけど知られていないこと、賛成する人がほとんどいないことを見つけて競争より独占を目指せ」のような金言がそこかしこに散らばっている。兎にも角にも自身にしか生み出せない商品を作らないことには、事業は始まらない。参入障壁をどこに設けて自分の商品を守るか。自分の商品でしか実現できない点はどこにあるのか。じっくりと考えながら本書を読むべきである。
 
最後に、「ヤバい経営学」である。

これは人を雇った後の内容ではあるが、我々の常識に反する経営の真実について述べられている。事業を起こす段階では、かなり時期尚早な知識では在るが、目指すべきフェーズのイメージを獲得しておいたほうが良い。やはり、どうせ事業をやるなら人を雇うフェーズまで行くべきなのだ。雇用の創出こそ、カネを稼ぐものに課せられた使命なのだから。

Step.4 もっと学ぶ


このステップでは、上述したステップでは紹介できなかったやや理論よりの書籍を紹介する。筆者としては、金を稼ぐために必ずしも以下に紹介する書籍を読むべきだとは考えていない。理論寄りの知識を会得することで思考に厚みが出ることは確かだが、結局は読み物にしかならないからだ。というわけで、暇があれば読んでみてほしい。
 
21世紀の資本

言わずとしれた名著である。「資本収益率rはつねに経済成長率gより大きいr>g」という衝撃のデータが示されている。ここらへんまでくると経済学の知識も必要になってくるがぜひ読んでほしい。
 
資本主義と自由

カネというよりは、政府と個人の経済活動について論じている。そもそも金は政府が作り出すものなので、政府の介入は不可欠である。金の流れをもう少し広い視野で学びたい、という人におすすめ一冊。
 
新解釈 コーポレートファイナンス理論

企業とはどうあるべきか、株価とはどのように決まるか、会社が儲かるとはどういうことか等、基本的ではあるが、故に奥深い。この著者は難しい事柄をわかりやすく説明するのがとにかく上手い。コーポーレートファイナンス理論の入門書として、会社の概念について理解を深めたい人におすすめ
 
その他、随時更新中

Step.5 書籍からの卒業

ここまでくれば、もう書籍からは卒業しなければならない。本当に人生に必要な暗黙知や個人の知恵は決して文章から読み取ることはできない。人から教えてもらった何気ないコツ、自らの力で紡いだ経験が、財産になるのだ。ただ本を読んで知識を詰め込んだ頭からは、いかなる富も生まれない。金額を打ち込む指、人をつなぐ口、訴える目のみが現実世界に影響を及ぼすのだ。諸君らが懸念する”悪い事態”のほとんどは起こらない。知識ばかり得るとリスクを過大評価するようになる。未来を恐れて立ち止まるようなことがあれば、それはインプットをやめるサインだ。他人の書いた知識や経験を必要以上にむさぼることは、無知にも劣る行為だ。この記事を読んだ諸君が、明日から輝かしい能動的な日々を過ごすことを願い、筆を置く。
 
陳謝筆上
 
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