空気になるというTPO

他国の民族衣装ににてるとか、いっそ浴衣にしろとか色々いわれてた表彰式のメダル授与の衣装、今まで2度実際の授与式の先導で中継でうつったとこみたんだけど、実によかった。というエントリになります。

ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*

個人的に発表された時に初見で思ったのは、体のラインを拾わないシルエット、ハリのある生地(再生プラスティックでしたっけ?)にきれいなグラデーション、好みでウエストをブラウジングできる腰紐、そうやった時ですらヒップラインをひろいすぎない&歩いたときにきれいに翻るだろうバックプリーツと短すぎないスカート丈、男女共用の短いジャケットの襟のデザインやストレートパンツ、インナーシャツのシンプルさ、なんだかすごく好みでした。
テーマになってるサスティナブルや多様性をちゃんと意識してる。
この衣装なら体型をある程度問わず、性別や障害やそれこそ美醜なんかの情報を拾いすぎず誰でもそれなりに着こなせるんだろうなあって。
(なかなかないのよ?男女問わずーとか年齢問わずーとか言っても、やっぱこれ標準体型のある程度身長ないと似合わんだろ?みたいなの多いのよ?)

でも嫌いなひとがいるのもわかる。
無印のsizeONEみたいなの嫌いな人は絶対嫌いだろうなとは思った。
シャツもジャケットも胸元ダーツとってないからウエストラインも曖昧、腕は多分カットで吸収してる。ワンピースも所謂ドレススタイルではない。なんかある種の制服っぽさっていうか。そういうのが「ふさわしくない」「華やかでない」って思ってしまうのもわかる。見慣れないのあるだろうしね。
(一定層いる「日本のワンピースはウエスト絞ってなくてすごくだらしなくみえる」という層は絶対苦手)
それに足元はソックスにスポサンだしね。これはトレンドだとは思うけど、苦手なひとは苦手よね。

TPO(Time/Place/Occasion)であてはめた場合の、いわゆるオケージョンシーン、ファッション誌的にはほぼパーティー(結婚式およばれから謝恩会まで)に限定されていて、表彰式は多分これにあたる。
従来の大会だと、やっぱりここは綺麗どころのお姉さんが振り袖でーっていうのが「ふさわしい」ってされてきたと思うのだけど、実際の大会の中継であの衣装がうつった時おもったことは、「これ実に空気だな」ってこと。
これが素晴らしい。

思ってみたらそうなのだ。
オリンピックをはじめとするメダル授与式で一番目立たなければいけないのは選手なんだ。別にメダルもったり先導してるお姉さんが、大会が選抜した超美形でウエストピタピタにしぼったドレス(北京のときは話題になりました。。w)や、きらびやかな振り袖でいつまでも舞台上にいる必要はなくて、表彰されるべき選手が目立つのが一番大事なんだ。

私がみた2回の先導役の人は、一人は20代男性、もうひとりは50代くらいの中年女性で、ふたりとも超絶美形でも美男子でもない「ただの人」だったが、同じテーマの服を「制服として」着こなしていた。これでいいんだよ。
だって後ろの選手ジャージだもん。
映えある彼ら/彼女らより目立つ必要なんてひとつもない。

この先導役やメダルをもってる間は、このひとらは「失礼なく少し華やかな空気」であればいい。
そのあとのメダルを授与してくれる元メダリストや、その時にメダルを授与される選手たちが一番目立てばいいんだ。
べつにここにきれいどころが並んでる必要性ゼロやったわ。

これってすばらしく、TPOとして正しい。
空気になるのが必要になるオケージョンシーンの最高潮が多分あの授与式なんだ。あの場で一番目立つ主役は絶対選手であるべきだもの。

「だったらなんでもないリクルートスーツでもええやん!」
うんまあそれはたしかにだが、あの衣装、もう一度ちゃんとみてみて?
スーツのような堅苦しさもなく、足元もヒールでも革靴でもない。楽ちんなラインの誰でもさっと着れる洋服スタイル。滑ったりカツカツ言わない足元。
それでいて生地はとてもきれいなグラデーション、衣装の素材による織りの少しのうねりと光りかたもきれい。削ぎ落とした最小限のデザインがまた実にいい。
まあほとんど映らないし、映っても悪目立ちしない。
本当に美しい空気になれる服なんだとおもった。

この大会、無観客という特殊下のオリンピックだったけれど、応援の声がすくなく、横断幕とかもないからすごく画面がシンプルで雑音が最小限。
競技を視聴するというのに特化していて、とても向き合える。
削ぎ落としたこの大会に、とてもふさわしい服でもあったなとも思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?