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 ユーモアという優しさ


くしゃみをすると止まらなくて
11回くらい連発してしまうことがある。

何らかのアレルギー反応だと思う。

そんな時、たいてい家族や友人たちは
心配そうにわたしを見つめている。

失礼しましたとか、ごめんねとか言って
すこし申し訳ない気持ちになる。

彼らはくしゃみの終焉をしずかに待ち
大丈夫?と聞いてくれる。



ただ一人を除いては。



その友人は、わたしのくしゃみが始まると
必ず合いの手をいれてくる。


ハックション、よ!
ックション、はじまりました!
ックション、もういっちょ!
ックシ、よっしゃ!
クシッ、まだまだ!
ックシ、いいよいいよ〜!


まるで花火を見物するかのように楽しそうにしている。
優しさとは言えないかもしれない。

でも、心配されるよりもなぜか嬉しくて
全力で合いの手をいれる姿がおかしくて

彼女はわたしと、その周りにいる人たちをたくさん笑わせてくれた。


高校時代の友人で、今はもう滅多に会うことはないけれど、時々くしゃみが止まらなくなると、ふと彼女を思い出す。

やっぱり合いの手が聞こえなくなって
すこし寂しい。


尾崎放哉が咳をしても一人というなら
わたしはくしゃみをしても一人。

合いの手って、実は愛の手だったんじゃないかとか
つまらないことを考える(その友人の名前に「愛」という字が入っているので)。


心配は優しさだ。

でも、ときにはユーモアだって
最強の優しさなんじゃないかな。

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