マガジン

最近の記事

「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を観たわたしの話。

わたしはアーティストと呼ばれるような才能ある人間の事を、ひとつも知りたくない。 だから、感想にもならない。 すべてわたしの勝手に。どう受け取ってどう飲み込んでどうしていくのかを自分のために残したいと思って書く。 フジコ・ヘミングの選び出す言葉と色のない表情が印象に残った。 壮絶な人生、ため息ばかりの人生、弟はしあわせ、人からも自身もそう語るままの顔をして、「人生に必要なものは?」と問われた時には「愛」と言い切り、人間嫌いだと呟く口で「挫けないで」「気を落とさないで」「心を揺

    • ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ感想

      聖者の行進を叫び続けたリッキーが、看守のジャッキーに首を絞められた末に死んだ。 その時のジャッキーはジョーカーを引いた。 たぶんそれだけのこと、そんなものだ、世界って。 ジョーカーは必ずいる。これはルールだ。 ジョーカーが手札に無いグループに属する人たちもいる。 その人たちは違う遊びをする。 でも、トランプには必ずジョーカーがいる。 必ず。 そう確信するのは、どうしようもない理不尽があってその理不尽は絶対になくなることがないから。 「幼少期の傷」と片付いた言葉で、原因と

      • 1

        もうここには居られない、と思った。 机に向かって、3時間が経っていた。目を開けながら気を失ったかのように、時間の経過に気づかないまま突然声が降ってきた。 「アンタ、大丈夫?頭おかしいんじゃない?」 ああ、どうしてこの人はこう言う風にしか物を言えないんだろう。考えることが、出来ないんだろう。 まだ時間が止まった感覚のまま、顔を上げて母親に視線を向ける。認識した彼女の顔は、ぎょっとしていた。 「何で泣いてるの?何?何なの?」 わたしは泣いていたらしい。拭うのにも腕が重い。大きな

        • 映画「違国日記」

          ネタバレしますしめちゃめちゃ批判します。 映画「違国日記」を大事にしている方はお引き取りください。 「私は決して、あなたを踏み躙らない!」 槙生ちゃんの言葉を聞いて胸が焼けるような苦虫を噛み潰すような、そんな気持ちになるとは思ってもみなかった。 大事な大事な「盥」の場面。そこに至るまでに槙生ちゃんが朝を、親を突然失った子どもを、これほどないまでに踏み躙っていた。 槙生ちゃんが遺体確認の場にいたら、黙っていなかったと信じる。ましてや朝の横に突っ立っているわけがないだろうと

        「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を観たわたしの話。

        マガジン

        • 映画
          2本

        記事

          「ミッドサマー」ペレの話。

          ネタバレめっちゃします。 ミッドサマーを観た直後の感想は「面白かったけど、面白くなかった」だった。 ホラーは大の苦手、人生初の映画館ホラー鑑賞の感想としてはなんとも不思議な気がする。 グロテスクなシーンは確かにあった。けれどどれも、なんというか、血抜きしたのかねえ?と思わされるような、リアリティもなくタチの悪いジョークグッズを大画面で見せられているような、怖がらせたいのかそうでないのかよくわからないモノだった。 ミッドサマーを観て、わたしの中に強烈に居座るキャラクターが

          「ミッドサマー」ペレの話。