見出し画像

絵を買ってもらうこと

展示と私

もうすぐ、個展です。

数年前の数年間、それまで隔月くらいでやっていた展示を一気にストップし、展示自体を休んでいた時期がありました。
表には出さなかったものの、私生活が荒れ、とにかくいろんなことに疲れてしまい、「止めてみようかな?」と思ったのでした。
ここでは「作家にとって」という大きな主語で語るのはやめておいて、あくまで私個人の気持ちでいうと、当時、当分のあいだ展示をしないという決断をすることは、相当に勇気がいることでした。
もともと自分の作品に自信があるタイプではないし、素敵な作家さんもたくさん知っているし、後続に続いてくる若いひとたちのエネルギッシュで美しく、魅力的で技巧も高い作品もどんどん出てくる。

確実に忘れられる。
その恐怖を飲み込んで決断してしまえるくらいには疲れていました。

具体的な休止期間は決めていませんでした。
そして一昨年、また展示を再開させてもらいました。

展示のタイトルは「また歩くために」。
こんな私を受け入れてくださり、展示期間を賭けてくださったのが
今年も個展を開催させていただく、ギャラリーhana*輪さんでした。

結果として、私のことを覚えていてくださった方もご来廊くださり、また、ギャラリーの常連さんである、私にとって新しいお客様も私の作品をご覧いただくことができました。

芸術は生業

私はデザインやイラスト、講師業をフリーランスで、様々な方や会社から仕事をいただきながら、作家として展示を続けています。
どちらも大切な私の仕事であり、私自身の「意味」。
ただ、純粋な作家であるか?と質問されれば、私はNOと言われる人間だと思います。展示の作品のみの収益でご飯が食べられている訳ではないし、前言のように展示を休んだりもします。
発表したら私らしくなくて驚かれるようなデザインやイラストの仕事もやらせていただいていますし、それでもお役に立てることも嬉しいし、描くことが大好きで、作品も作り続けています。あっちこっちにいって、まとまりがなくても、なんだかフラフラしていても、それでもしょうがないな、と思います。

先日、私の版画作品をツイッターでご覧になった方からDMをいただき、作品を購入していただきました。とても暖かく対応していただき、「美術品は買える!」とつぶやいてくださったのが、とても嬉しかったです。
私のような中途半端な作家であっても、やはり作品が売れることによって生まれる収益も、とてもとても大切なものです。
それによって画材が買える、制作に時間がかけられる、衣食住できる。
何より、その具体的な数字が想像以上の励みと重力になるのです。
当たり前のようでいて、芸術はどこか浮世離れしているような世界だと未だに思われているのですが、それでもやはり職業であり生業なのです。
それは、生粋の作家であっても、アマチュアであっても同じマーケットの上にあって、作品は畑でとれる野菜と一緒です。

農家と八百屋、作家とギャラリー

「マーケット」というものは、インターネットの普及でかなり広がりました。私たち作家も、展示をせずとも作品を販売したりすることも近頃では随分手軽にできるようになってきました。
しかし、どんなにネットワーク上のマーケットが普及しても、おそらく手で描くものや、「飾る」「手に入れる」という行為が残っている限り、実際に足を運んで目で見る実店舗がなくなることはないでしょう。
特に私がよく展示させていただいているギャラリーや画廊と呼ばれるところは、ウィンドウショッピングを楽しむ感覚で、また美術館に足を運ぶ延長で美術に触れに行くことができる、そういう場所です。
そして美術館と大きく違うところは、飾ってあるものが実際に誰でも買えるというところです。もちろん買わずに作品をただ楽しむために行かれる方も大勢います。(私もたまに買うけれど、そちら側ですし)

私たち作家は、アトリエや工房や家で作品を作りますが、発表し見てもらい、作品を買ってもらえる「現実の場所」を持っている人は決して多くはありません。それを助けてくれるのがギャラリーさんです。

ギャラリーさんは大きく分けて、二つの種類があります。
貸しギャラリーと、企画ギャラリーです。

貸しギャラリーは展示場所と期間を作家に有料で貸すことで収益とするギャラリーさんです。空間を自由に使えるため、持ち込みの作品や飛び込みの作家さん、グループで初めてやってみる展示など、作家の自由がききやすく、料金を払うため売り上がらなかったとしても、作家の赤字だけで終われる利点もあります。

企画ギャラリーは、ギャラリーのオーナーさんが選んだ作家さんや、立てた企画のみを厳選して行うギャラリーさんです。ほとんどの場合、出展料ではなく、作品の売り上げのマージンがギャラリーの収益になります。そのため作家の出展料初期投資が最小限に抑えられ、招待いただける作家としては非常にありがたいシステムです。しかし集客のみでなく売り上げがとても重要であり、オーナーさんの個性や作家を厳選し、投資と賭けをするパワーがギャラリーを支えていると言っても過言ではないでしょう。

私が普段お世話になっているのは後者のギャラリーさんです。
もうこれは、本当に本当に、私は感謝しかないのです。
私たちは、作品を作るしかできない。職人のように安定した作品作りができる人ばかりではない(私がまさにそれ)。
衣食住とは関係がなく、おそらく生存を優先した場合まっさきに切り捨てられるであろう文化面での投資や購買。おそらくそういう危機がいつだって隣り合わせのこの時代に。
買いたいと思える作品に出会えるのも、奇跡の巡り合わせのはずなのに。
不器用な作家と共に生きて行く道を選んでくれた人がいる。それがギャラリーのオーナーさんや画商さん、キュレーターさんたちなのです。

田舎の小さな野菜直売所さえ持てない農家のように、私は作品をただただ生み出し続けている。それが町で野菜を並べて、「おいしいですよ」と宣伝してくれる人がいる。

私は決して売れる作家ではありません。でも選んでくれて、その期間を私に賭けてくれる。私はそれに報いなければいけない。
「手に入れたい」「そばにおきたい」「眺めたい」「飾りたい」
そう思ってもらえるような作品を作りたい。
そうやって狙わなくたって、そのままの魅力で売れる作品を作れる人もたくさんいる。でも、正解がわかるなら知りたいし、その力が手に入るならどんな努力もしたい。
ギャラリーさんのがんばりを、あたたかさを、応援の気持ちを知っているから。本当の意味で「一蓮托生」としっかりと握手できる作家でありたい。
展示の前にはこんなことばかり考えてしまうのです。

私の展示を、私の作品をという訳ではありません。
どうかあらゆる場所、あらゆる作家の、心動く作品に出会ったら、ご購入も視野に入れていただきたいのです。
それは複合的に、「たくさん」を応援することに繋がります。
こんなことをいう私も、きっと芸術だけじゃない、正しく作られ、正しく売られている世界中の全てものもが、経済のひとくくりだけでなく、人を人々を支えていることを、想像しながら生きていけたらいいなと思うのです。

ひっそりとちゃっかりと個展の告知です

渡邊 春菜個展『包容』
Beauty & Gallery hana輪 大阪・平野区
11.19(木)〜27(金)休廊 24,25日 13:00〜18:00
新作版画とジークレー、水彩の作品。
がんばります、よろしくおねがいします!
http://gallery-hanawa.com

包容DMomote

包容DMura

twitter →https://twitter.com/watanabe_haruna
WEB PORTFOLIO→https://creatorsbank.com/haruna/

見てくださってありがとうございます!イラストをはじめ、コラム、防災グッズ等も力をいれていきます。サポート、SNS等で拡散いただけると、とても励みになります!