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【漫画原作】「カッパと木立先生」【すこしふしぎ】

読切用のマンガ原作です。
地元・長野県に伝わる昔話をオマージュして書きました。

複製、自作発言、無断転載、許可なき作画はNGです。

ジャンル

すこしふしぎ。全体的にゆる~い感じ。

あらすじ

高校生の崇介(そうすけ)は、ある日、不審者から「力比べをしたい」と声を掛けられる。レスリングクラブに通う崇介は自慢の腕っぷしで不審者を打ち倒す。不審者の正体はカッパ。かわた、と名乗るカッパは、近々行われる力比べ祭りで優勝するべく、強い人を探して、稽古を付けてもらおうと考えていた。崇介の強さに憧れ、弟子入りを申し出るかわた。その場のノリでOKする崇介。この出会いが思わぬ展開を生む事に…

登場人物

木立崇介:高校3年生。長身で短髪、真面目そうな印象。
かわた:カッパ。ゆるキャラ風の可愛らしい外見。子供っぽい性格。

本編

〇田舎・河川敷(春頃・休日)
〈過去・10年程前〉
 帰宅中の崇介。ジャージ姿、通学鞄(ボストンバッグ)を背負い、〈不審者のお知らせ〉のプリントを手にする。(プリントの内容:身長150センチ、小太り、長髪、ロングコート姿の外見情報と、〈力くらべをしようなどと声をかける〉の一文)。
崇介 「力比べしてぇ不審者か。どうせ柔道部のイタズラだろ。見つけたら、取っ捕まえて懲らしめてやる」
 目の前に現れる不審者。顔全体を覆う長髪、汚れたレインコート、手足はビニール袋で覆い、素肌は見えない。
不審者「ヤル、チカラクラベ」
崇介 「噂をすりゃなんとやら、ってか。イイぜ! やってやるよ!」

+++ 
 河川敷の公園(園内には二人だけ)。
 枝で描かれた直径数メートルの円、その中に崇介と不審者。
不審者「ソトニデル、ジメンニセナカツケル、マケ」
 相撲取りのように構える不審者。レスリングのように構える崇介。睨み合う二人。漂う緊張感。園内の鉄塔から時報のサイレン。ウー、と鳴る音を合図に、正面からぶつかり合う。組み合う二人。グイ、グイ、と崇介を押す不審者、ゆっくりと円の縁に向かう。焦らず、平常心の崇介。
崇介 「文句無ぇパワーだ。でもな!」
 崇介の目つきが変わる。不審者の股下に腕を入れ、持ち上げる。
崇介 「オレだって負けてねぇよ!」
 逆さになった不審者を地面に投げ落とす(プロレスのボディスラムに似た技)。右腕を上げ、勝利のポーズを決める崇介。
崇介 「ッシャ! オレの勝ち! …ったく、一般人に迷惑掛けやがって。力比べなら、いつでもオレが相手して…、っ!?」
 驚く崇介。カツラが取れ、素顔が露わになったカッパのかわた。大の字になり、目を回している。
崇介 「カッ…、カッパ!?」
かわた「フキュウゥゥ…」

*****
〇学校・教室(休み時間)
 自席で本(〈プロレス技特集〉)を読む崇介。傍で会話する男子達。
男子達「なぁ、例の不審者ってどうなった?」
   「捕まったんじゃねぇの」
   「柔道部が退治したかもな!」
崇介 「(ソイツなら…)」

*****
〇河川敷の公園(休日)
 半袖半ズボンの崇介。
 ジャージ(崇介のおさがり)を着たかわた、カツラを中央で分け、顔が見えるようになっている。
かわた「オハヨーゴザイマス、ソウスケセンセー! キョウハナニスルノ?」
崇介 「体力づくりと技の練習」
かわた「ハイッ!」

+++ 
 船のアスレチック。その周りを走るかわた。
 デッキでストレッチしながら様子を見る崇介。

〈崇介の回想〉
 前述の試合後。正座するかわた、涙目で悔しそうな顔。
 胡坐をかく崇介、真剣な顔で話を聞く。
かわた『アカヌマイケノカッパ、チカラクラベノマツリスル。デモ、カワタヨワイ、マケテバカリ。ダカラ、ツヨイヒトニオソワル。トックンシテ、チカラツケル。オネガイ、ケイコシテ! デシサセテ!』
〈回想終わり〉

崇介 「ノリでOKしちまったけど、悪いヤツじゃなさそうだし、いっか。つか、マジで居るんだな、カッパって」

+++
 芝生の広場。レスリングの練習をする二人。手(腕)を組む、背中の取り合い、技を掛け合う等基本的な動作。
崇介 「よし、休憩」
 
 木陰のベンチ。水を飲む崇介、頭のお皿に水を掛けるかわた。
かわた「センセートレンシュウスル、スゴクタノシイ」
崇介 「オレもな。かわたと練習するの、イイ経験になってる」
かわた「センセーモ、チカラクラベノマツリスル?」
崇介 「夏にな。オレみてぇに強いヤツが沢山集まるんだ」
かわた「ワァ! カワタミタイ! センセーオウエンスル!」
*****

〇赤沼池(後日・深夜)
 森の中。大きな池。屋台やちょうちんの飾り。池のほとりにカッパの観客。ヨシの茂み、カッパの着ぐるみパジャマを着た崇介、真剣な眼差しで様子を伺う。
 池に浮かぶ浮島。土俵に似た円形の土台。まわしを付けた大柄なカッパ(すもう)が、相手のカッパを行けに投げ飛ばす。
相手 「ウワァァッ!」
すもう「ヘッ! オレニカナウヤツハイネェヨ!」
 現れるかわた。胸に〈かわた〉と書かれたレスリングのユニフォームを着用、キリッとした真剣な顔で相手を睨む。
 すもう「カワタカ。イツモノヨウニ、ウチマカシテヤル」
 四股を踏むすもう。レスリングの構えをするかわた。互いに睨み合う。ボー、と鳴る法螺貝の音。それを合図に張り手しながら突進するすもう。顔の前で腕を構え、ガードするかわた、グイグイと円の縁に追いやられていく。黙って見守る崇介。
すもう「オラオラ! コノママジャ、オッチマウゾ!」
 縁の手前で止まる。ニヤリと笑うすもう、両手を突き出し、かわたを押し出そうとする。
すもう「コレデオワリダ!」
 素早く身を屈めるかわた、突き出た両腕の下からすもうの腹部に入り込み、抱きつく。
かわた「トックンノセイカ、ミセテヤルッ!」
 まわしを掴み、すもうの身体を持ち上げる。逆さまになるすもうの身体。
 驚くすもうと観客。勝利を確信し、笑みを浮かべる崇介。
すもう「ナッ…」
かわた「フギュゥゥウウゥッ!!!」
 池に向かってすもうを放り投げる。宙を舞い、池に落下するすもう。
 旗を上げる審判。観客から歓声。腕を上げ、勝利のポーズを取るかわた。拍手する崇介。
*****

〇河原(後日・昼頃)
 向かい合う崇介と変装中のかわた。かわたの胸に輝く石のメダル。
かわた「カワタカッタ、ソウスケセンセーノオカゲ。アリガトゴザイマス」
 小さなショルダーバッグから葉の包みを取り出し、崇介に渡す。
かわた「コレ、オレイ。カワタトクセイナンコウ。ヌルトイタイノナオル」
崇介 「おぅ! ありがとな」
 川に入り、手を振るかわた。
かわた「マタネ!」
崇介 「いつでも練習相手してやるよ」
 笑顔で見送る崇介。
 かわたの姿が見えなくなると、顔を歪め、鼻をつまむ。
崇介 「クッセェェェ! 軟膏じゃなくてウンコだろ! どうせなら金目のモンくれっての」
*****

〇町の体育館(後日・夏頃)
 練習中のレスリングクラブのメンバー。ベンチに座るコーチ二人。
コーチ「木立(こだち)はまたサボりか。全く、大事な時に」
   「それが文化祭で怪我したって。プロレス同好会の出し物で…」 

〇崇介の家・自室(同日)
 ベッドで大の字になる崇介。取り外し可能なギプスが付いた左腕。
崇介 「痛ってぇ! 調子こいて大技決めるんじゃなかった…。ホネ折れてねぇし、筋(すじ)も切れてねぇとは言え、こんなんじゃムリだよな…」
 壁に目を向ける。
 額に飾られた県大会の賞状(2位以下の入賞)。落ち込む崇介。
崇介 「高校最後の大会、カッコよく決めたかったのにな。痛みさえ消えりゃ、思う存分戦えるのに…」
 ふと何かを思い出す崇介。

  ベランダ。ジップロックで密閉された葉の包み。疑い深げな顔で見る。
崇介 「かわたのヤツ、痛みに効くって言ってたな」
 袋から取り出し、葉を開く。スライム状の物体。不安そうな顔をする。
崇介 「…塗ったらカッパになるとか無いよな…」
(※カッパになった崇介の絵)
 暫く思案する。ヤケになり、ギプスを外す。
崇介 「えぇい! どうにでもなれっ!」
 葉ごと持ち、物体を左腕にこすりつける。痛みが消え、不安げな崇介の顔が明るくなる。
*****

〇体育館(後日)
 ※このシーンのみセリフ無し。
 県大会。トーナメント表、決勝に進む〈木立崇介〉。
 決勝戦。対峙する崇介と相手選手。技の決め合い、点の取り合い。一進一退の展開が続く。残り時間わずか。仕掛ける相手、崇介にタックル。かわして、懐に入る崇介、相手を押し倒す。フォール勝ち。ベンチのメンバーやコーチが駆け寄る。何かに気付く崇介、二階席に向けて腕を上げる(勝利のポーズ)。観客席、小綺麗に変装したかわた。横断幕(崇介の顔と〈そすうけ、がんぱろ〉のぎこちない日本語)を掲げている。

*****
〇公園(大会後)
 船のアスレチック。デッキに座る崇介とかわた。崇介の傍にトロフィー(若しくはメダル)。
かわた「ソウスケセンセー、オメデト! サイゴノワザ、カッコイイ、カワタモヤリタイ!」
崇介 「今度教えてやるよ。…その代わり、軟膏の作り方教えてくれね?」
かわた「イイヨ。デモ、ナンデ?」
崇介 「ちょっとな」
 ニヤッと笑う崇介。
*****

〇診療所(現在)
 川沿いに建つ古民家風の建物。入口にカッパの置物と、〈こだち整骨院〉の看板。
 診察室。ベッド上、うつ伏せになる中年男性。男性の腰あたりに手を添える崇介。
崇介 「それじゃ、いきますよ。1、2の、3、ダーッ!」
 ゴキッと音を立てる腰骨。悶絶する男性。
男性 「がああっ…、せっ、先生、もう少し、優しくやって…。あれ? 動く! ほねつぎ名人、木立先生。噂通りの腕だ!」
 嬉しそうに起き上がる男性。
崇介 「暫くは過度な運動を控えて下さい。歩く際、若干痛みを感じるかもしれません。その時はコレを」
 机に並ぶカッパの顔をした小さな容器が数個(緑、ピンク、青等顔の色が異なる)。
崇介 「カッパ秘伝、痛みが消える軟膏です。ミント、桜、石鹸、ニオイは様々。好きなのを選んで下さい」
男性 「カッパの薬ねぇ…。効くんですか?」
崇介 「勿論! 頭痛、歯痛、腰痛、痛みならなんでも取り除きます! この素晴らしい効能を世に広めるため、柔道整復師の資格を取って、整骨院始めたんですよ! ほら、整骨院って身体痛めた人来るでしょ? スポーツで腕痛めたり、畑仕事で足痛めたり…」
 胡散臭そうな笑みを浮かべ、熱弁する崇介。引き気味の男性。
男性 「急に怪しいこと言って…。大体、カッパは作り話で、実在しないでしょ」
 優し気に微笑む崇介、窓に目を向ける。
崇介 「居ますよ、すぐ傍にね」

河原。レスリングの練習をするカッパ数匹。コーチするかわた。

『カッパと木立先生』  終

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