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他には、何もいらない。|劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』
舞台は1930年のニューヨーク。
主人公のボビーは、銀行の跡取り息子だが、ダンサーを夢見る男性。
今日も、有名プロデューサーのザングラーに自分のダンスを見てもらいたい、と銀行の仕事を終えてから劇場に足を運んでいた。
しかし、ボビーの母は彼にショービジネスを諦めさせ、銀行の仕事に集中させるために、ニューヨークから遠くにある砂漠の街にある劇場を差し押さえに行くように命じる。
母の命令どおり、砂漠の街に着いたボビーは、そこで差し押さえるはずの劇場主の娘であるポリーに一目惚れ。
ポリーも、「劇場でショーをやって、抵当から外そう!」というボビーに惹かれるが、彼が劇場を差し押さえに来た銀行の人間だと知り、彼を拒絶する。
一方、ポリーに拒絶されても、何とか劇場を存続させたいボビーは、有名プロデューサーのザングラーに成りすまし、劇場でショーを開催しようとするが……
1992初演の、ぐうの音も出ない、これぞ完璧なラブコメディー作品。
記憶に残る音楽と、寸分の狂いもなく繰り出されるコメディ。
『クレイジー・フォー・ユー』と言うと、もう、この一言に尽きる。
“I Got Rhythm”
一言じゃなくて一曲か。
作曲者は『ラプソディ・イン・ブルー』でも有名なジョージ・ガーシュウィン。
元々、タイトルも、ストーリーも何も知る前から、この曲だけが印象的でした。
私が初めてちゃんと聞いたのは、東京ディズニーシーのブロードウェイ・ミュージカル・シアターでオープン当初から上演していた『アンコール』というショーでした。
印象的なサビの歌詞
I got rhythm, I got music
I got my man, who could ask for anything more
劇団四季の日本語版では
このリズム このミュージック
この恋 他にはいらない
と、なっている。個人的には、後半の“I got my man”がちゃんと聞き取れなかったのもあって、“I got rhythm, I got music”という部分を聞き取って、ショービジネスに人生を捧げたいボビーの歌なのかな?と思っていたけど。
実際はこの後半の“I got my man”の方が重要なのね。(ボビーが変装した)ザングラーに恋をするポリーが、「あなた以外、何もいらない」と歌ってる歌だったのね。
ボビーは、一目惚れしたポリーが自分ではなく、自分が変装したザングラーに恋をしているという、ややこしい(でもそこが面白い)状況になるんだけど。
はて、この感じどこかで……と思ったら、思い出したわよ!ビリー・ワイルダーの名作『お熱いのがお好き』よ!
マフィアの犯罪の現場を見ちゃった男性2人が、マフィアの追ってから逃げるために女装して女性だけの楽団に潜り込むんだけど。
1人は楽団のマリリン・モンローを好きになって、時々男性に戻って、マリリンを口説こうとして、もう1人はお金持ちの男性に好かれて……というラブコメディー。
何となくだけど、この展開に似てる。
この『クレイジー・フォー・ユー』も主人公のボビーとポリーが魅力的。
銀行の跡取り息子、というステータスを持っているのに、主人公のボビーは歌や踊りが大好きで、夢には情熱を持っているけど、押しにはちょっと弱いお坊ちゃん気質。
対するポリーは男だらけの街の紅一点で、乱暴何だけど、どこか可愛くて、勢いがある。
そんな2人が惹かれ合い、反発しながらも、ショーを公演する、という目的に向かって寂れた街全体が活気づいていく。
どうして、この作品映画化しないんだろ。
基本筋『天使にラブソングを』みたいな感じで
キャラクターは『お熱いのがお好き』みたいな古き良きアメリカのラブコメディーみたいになると思うんだけど。
ミュージカル映画ってちょいちょい出るけど、割と“名作です”って感じの苦悩と不幸に一筋の光が……みたいな重めのものは作られるイメージ。
実際にミュージカル自体が、そういう演目が人気なんだろうけど。
いや、そりゃ生で観れたら、それに勝るものはないんだけど。
映画でいつでもそのストーリーを観ることが出来るのって嬉しいじゃない?
これも、映画にならないなぁ、と思ってしまうくらい、楽しい作品でした。
劇団四季ではこの作品を全国各地で公演するようなので、是非、チェックしてみてください。
私も楽しかったので、また観に行きたいです!
(チケット取れたらだけど……)
https://www.shiki.jp/applause/cfy/
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