２０２６年　ＲとＳ

　現実世界REALIDADのＲ
Ｒに残された独特の概念　背徳
ソフトシェルクラブ
感触の快　秘汁の快　甲殻類の大発明の盲点
月に導かれた周期　月に刺激された肉食獣の血への欲求
獣の宴の盆　月と蟹
苺に練乳
赤を汚す白　固体を飲み込む液体
立体を隠す平面　水々しさを忘れさせる毒々しさ
完全なる専用の匙の機能美
口の端に残る白濁液　舌に残るゴマのエグ味

　鏡世界ESPEJOのＳ
コンピューター上の仮想空間　鏡世界　Ｓ
人びとはＲよりＳでの生活時間が長くなっている
Ｓの充実にＲを犠牲にする　空想第一主義
カサついた肌　髪の毛の先の乱れ　底のない底辺生活
Ｓには鏡がない　皮肉か冗談かエスプリか
Ｓでは自分を省みることはない
自分が今を省みないのに　他人が過去を省みる
誇張されて返ってくる自分の姿　呼応して反応
練乳を蟹に垂らす愚
Ｓでは実感は必要ない

　わたし
半分だけ入ったワイングラス
飲みかけか　注ぎかけか　直感的に区別がつく
道で倒れている人
駆け寄らずとも生死は分かる
香ばしさと愛嬌との違いで迷ったりはしない
そのうち夜が明けた