2026年 パーマとバケーション

人生を変えるのはパーマかバケーションですよ
黒目の小さい女が言った
女は美容師 茶色のシナモンのにおいがする
私は人生を変えるつもりはなかった

レストラン コンビニ バス そこにはもう労働者はいない
ロボットと管理人 犬の散歩のアルバイトの構図
人かロボットなら人 人類は美容師を残し彼女は働く
髪結い床と呼んでいた江戸のころのまま
今日何してた 最近どう 休みは何するの
夏休みになんの予定もないなんて愚の愚ですよ
彼女は私の人生を諦めていない

女は手を動かしながら夏休みの計画をはじめる カタルーニャ
細く尖った鼻先から想像した通りの小さな手が忙しなく銀を光らせる
サグラダファミリアを見上げる
銀色のハサミが重なり戻る その繰り返しの音がする
いくつもの塔頂から地中海に向かって髪の毛が優雅に舞い落ちる

人生を変えるのはパーマかバケーションですよ
シナモン色の布に視界を奪われた洗髪という拘束状態
映画なら喉を切られる 私は人生を諦めている 抗いようがない