顧問拒否のデメリットはなくせる

 IRISでは、希望する人が気軽に顧問拒否できる環境を作りたいと考えています。そのためには、顧問拒否に対するさまざまな不安を解消することが不可欠であると考え、次のイベントを企画しました。

「顧問拒否のお悩み解決」
日時:2023年5月20日(土)21:45〜23:00
主催:愛知部活動問題レジスタンス(IRIS)
参加者:3名(IRIS代表、三重部活動問題レジスタンス代表、茨城部活動問題対策委員会代表)

 少人数ではありましたが、ひじょうに中身の濃い議論ができましたので、その内容を記事にまとめます。これを読み終わる頃には、顧問拒否に対する不安が消え、顧問拒否に向けて動き出そうという気持ちになっていることを期待します。

1 顧問拒否のデメリット

 顧問拒否をするとどんなデメリットが生じるのでしょうか。可能性として考えられるものを列挙してみます。(あくまで可能性です)

(1)同僚からの嫌がらせ:職員室内での悪口や陰口、仕事上の協力を拒む、複数で取り囲む、生徒に悪口を吹き込む、など
(2)報復人事:遠隔地や困難校への異動、専門とは異なる分野の授業担当(例えば化学→生物)、仕事の多い分掌の割当、など
(3)教職員評価:顧問拒否を理由に評価を下げる
(4)生徒・保護者との関係:生徒・保護者との信頼関係を築く上でマイナス、顧問をしないことに対する疑問や批判、など

2 デメリットは存在するか

 上記の事柄は、実際に顧問拒否によって引き起こされるデメリットと言えるのでしょうか。結論を先に行っておくと、必ずしもそうとは言えません。

 同僚からの嫌がらせは、顧問拒否以外によっても生じる可能性があります。顧問拒否は引き金の一つにすぎません。問題の本質は病んだ同僚性です。
 職員が互いに尊重しあい、人権が大切にされ、誰もが気持ちよく働けるような職場をイメージしてください。そういう職場で、顧問拒否をきっかけに全てが一変し、突如嫌がらせが始まる可能性は低いでしょう。逆に、人間関係がギスギスした職場では、たとえ顧問を引き受けていたとしても、他のことが原因で嫌がらせを受ける可能性があります。
 顧問拒否をきっかけとした嫌がらせを心配される方は、職場環境のあり方そのものを問題視し、そのリスクにこそ注目すべきではないでしょうか。

 報復人事は、まずそれが本当に報復なのかと疑ってみる必要があります。
 報復だと明言した上で報復することはまずありませんから、報復だというのはあくまで主観的な評価でしかありません。仮に、報復としか思えない人事が行われたとしても、ではその原因を正確に特定することはできるでしょうか。推測の域を出ないと思います。
 同僚の嫌がらせの場合と同様、報復人事においても、顧問拒否は数ある原因のうちの一つにすぎず、顧問拒否のみがリスク要因とは言えません。顧問を引き受けていても、他のことが原因で報復が行われる可能性があります。
 逆に、顧問拒否をすることで配慮される可能性もあります。例えば、もともと部活動がほとんど行われていない定時制の高校に異動になったり、勤務時間を気にする人だということで、校務分掌の負担の軽減を図ってもらえる場合もあります。(いずれも、IRISおよびPEACHのメンバーで実例があります。)

 教職員評価は、項目として明示されていますので、見れば分かります。

 生徒・保護者との関係は、実際のところ、デメリットというよりメリットのほうが大きいでしょう。
 部活を通した人間関係・信頼関係は、それが築ける人でないとメリットにはなりません。築けない人にとっては、顧問拒否をすることがかえってメリットになります。また、そうした関係が築ける人であっても、失われるのは部活という限られた場面でのつながりだけであり、授業や学級での関係には影響がありません。部活の負担が減り、授業や学級での仕事に打ち込めるようになれば、そちらの関係はむしろ改善される可能性があります。
 顧問をしないことについてあまりしつこく言ってくるような生徒は保護者は、実際、ほとんどいないでしょう。特に保護者は、どの教師が顧問をしていないかという情報すら持っていません。保護者が教員にクレームを言うのは、自分の子どもに対する指導に不満がある場合ですから、顧問拒否をすればクレームを受ける心配がありません。生徒も同様で、顧問がやる気のない姿を見せたりすると文句を言ってくることがありますが、顧問をやらなければ文句を言われる心配もありません。

3 デメリットへの対処方法

 顧問拒否によるデメリットが必ずしも生じないことについて2で述べましたが、では、デメリットが生じてしまった場合にどう対処すればいいのでしょうか。

 同僚からの嫌がらせ問題の本質は、病んだ同僚性であると指摘しました。これを解決するには、管理職に然るべき役割を果たさせるしかありません。各都道府県で定められているパワハラ防止に関する綱領等を周知すること、嫌がらせが生じたときに管理職が毅然とした態度で加害者を指導することなど、パワハラ問題における基本的な対処を徹底させることが重要です。

 報復人事については、人事の原則である「希望と納得」を普段から徹底させておくことが予防策になります。もしその原則が守られなかった場合、組合が抗議し、撤回させるという実践を普段から積み重ねておけば、報復人事においても同じ方法が使えます。

 教職員評価の項目に部活動が含まれている場合は、削除するよう当局と交渉し、削除させることもできます。(愛知では、IRIS以外の組合の交渉により、記入例から削除させました。)

4 まとめ

 顧問拒否によるデメリットは、そもそも存在しない可能性が高いと言えます。同僚からの嫌がらせや報復人事は、顧問拒否以外が原因で生じるものもあり、顧問拒否によって引き起こされているとは言い切れない面があります。
 それでもデメリットが生じてしまった場合、その対処法として有効なのは、教職員組合が従来から行ってきた方法(パワハラ問題で管理職を動かすこと、希望と納得の人事を徹底すること、当局と交渉すること)を徹底することです。
 顧問拒否をしたからといって急にデメリットが生じるわけではありません(顧問拒否で問題が起きる職場は、顧問拒否をしなくても問題が起きます)ので、ある意味開き直って、顧問拒否をしていただければと思います。さらにリスクを減らしたい場合は、個人ではなく、組合に加入するのが安心です。組合といっても御用組合では意味がありませんので、闘う組合がある地域・学校では加入したほうがいいでしょう。そういう組合がない場合、IRISやPEACHが全国区で対応を行っていますので、ご相談いただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?