「~いなく、」が不安定なワケ
「下水処理が十分行き届いてなく、」
「決して怒ったりしてはいなく、」
「土日は役場も開いていなく、」など、
打ち消しの表現をしているのですが、どこか文章に違和感があります。一体なぜ違和感を感じてしまうのでしょうか。
■文法的には問題無し
「い」は補助動詞「いる」の未然形。「なく」は打ち消しの助動詞「ない」の連用形。連用形は主に動詞や形容詞に続きます。「間違いなく、わが子だ」というように文を切る場合にも使うので、「~いなく、」そのものは文法の接続として誤っていません。
■次につながる言葉で考える
例えば、「仕送りが届いていなく~」につながる言葉は2通り考えられます。まずは『て』がつながる場合。「仕送りが届いていなく『て』、困る」となります。次に『ても』がつながる場合。「仕送りが届いていなく『ても』、困らない」となります。このことから「~いなく、」の表現には、困るのか困らないのか、どちらに転ぶかわからない不安定さが生じます。
これが「~いなく、」のもつ違和感なのです。
■安定感のある表現にするためには
文章がどちらの意味を表すのか、「~いなく、」ではなく、「おらず」や「ず」を用います。「仕送りが届いて『おらず』、困った」「仕送りが届いてい『ず』、困った」とどちらも前半部分だけ見ても、『困った』に続きます。『困らない』に転ぶ可能性はありません。
打ち消しの助動詞「ず」の終止形をうまく使って、安定感のある文章にしましょう。
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