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条例制定の処分性

1 処分の定義
 公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められたもの
→①公権力性
 ②外部性,個別具体性,法効果性
 +α 権利救済の実効性

2 水道料金条例制定(百選Ⅱ155)

 「本件改正条例は,Y市が営む簡易水道事業の水道料金を一般に改定するものであって,そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではな」い。「処分と実質的に同視することはできないから,本件改正条例の制定行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないというべきである。」→処分性(個別具体性)を否定

・条例制定の処分性の一般論について言及はない。
・条例制定制定後の給水契約者にも適用があり,制定時点においてその影響を受ける者が特定していない点が公立保育所廃止条例事件と異なる(百選解説・大田直史)。

3 横浜市公立保育所廃止条例事件(百選Ⅱ204)

 「Y市における保育所の利用関係は,保護者の選択に基づき,保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,保育の実施の解除がされない限り,保育の実施期間が満了するまで継続するものである。そうすると,特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は,保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有する」。
 「条例の制定は,普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから,一般的には,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもない」。しかし,
「本件改正条例は,本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって,他の行政庁の処分を待つことなく,その施行により各保育所の廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから,その制定行為は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる」。→処分性を肯定

・一般に条例制定行為が処分性を有しないことを明言した。
・本件の場合は,保育所の民営化を目的として,Y市の4つの公立保育所のみをターゲットとした内容であったため,個別具体性が認定された。
・「保護者の保育所選択権」を児童福祉法から認定し,そのうえで,保育実施期間満了まで当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を認定した。本件の条例制定はこれを奪い取るという法効果性があるとした。(公立小学校廃止条例について,一般的規範にほかならず,具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる法的利益を有するとは言えないとした最判平成14年4月25日もあるため注意)
・上記の通り条例制定行為の処分性は認められたが,判決時に保育実施期間が満了しているため訴えの利益が失われたと判断された。

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