映画館に行こう!

皆さんは映画を見るとき、どのような媒体で見ることが多いですか?
自宅のテレビで鑑賞する、通学・通勤の最中にスマートフォンやタブレットで観るという人もいるかもしれません。

自分の好きな時間で見ることができたり、無駄な時間を有効活用できたり、それぞれ利点があるのですが、僕は映画館をおすすめしたいと思います。

やはり家で観るとどうしても視界に余計な情報が入ってきてしまいます。テレビなどにはない臨場感もあり、映画の制作者も映画館で流すことを想定して作っています(Netflix制作などで最初からテレビで流すことを想定している映画も近年増えていますが)。

しかし、友人などと話していると、あまり映画館に行かないという人をとても多く感じます。理由を聞いてみると、「高い」と言った理由や「わざわざお金を払って見るほどではない」という理由を挙げる人が多いです。

それでも映画館で映画を見ることをお勧めしたい理由があります。


シネコンとミニシアター

まず、映画館は大きく分けて二つのスタイルがあります。
一つの映画館の中に規模が大きいスクリーンや音響設備のあるスクリーンを10枚近く有し、大作映画などを中心に上映するシネコンと呼ばれるもの。
そしてだいたい3つくらいのスクリーンしかなく、大作よりも制作規模の小さいインディーズ映画や自主制作映画などを上映するミニシアターと呼ばれる映画館です。

どちらも一般1900円という価格は同じくらいですが、設備の規模が違います。シネコンでは規模の大きいところで1スクリーン400〜500席くらいありますが、ミニシアターの多くは30〜100くらいが相場です。

もちろん席数が多ければその分面積が広いですから、スクリーンの大きさも大きくなり、音響設備も拡充されます。フィルム面積が大きく高画質で、5chサウンドシステムという、より音響を繊細に楽しめるIMAX上映は基本的にシネコンでしか楽しめません。

ちなみに2K映像を5chの音声で上映するのがIMAXデジタルシアター
4Kの映像を12chの音声で上映する拡充版をIMAXレーザーと言います。
本来の映画館のスクリーンは2:35:1のシネスコープというサイズですが、IMAXカメラで撮影した映像は、画面のアスペクト比が1:43:1であるため、どうしても画面の上下が少しだけ切り取られた状態で上映されています。

その欠点を補ったのがIMAXレーザー/GTテクノロジーという上映方式です。これはIMAXフィルムと同じアスペクト比で上映されるため、撮影されたままのサイズで上映することが可能です。さらに従来のIMAXより画面のサイズが約40%広がったため、より迫力のある映像を楽しめます。
このIMAXレーザー/GTテクノロジーを採用している国内の映画館は池袋のグランドシネマサンシャインと大阪の109シネマズ大阪エキスポシティしかありません。
僕は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をIMAXレーザー/GTテクノロジーで楽しむために公開日に仕事をこっそり抜けて池袋に行ったのでした笑

追加料金のかかるIMAXでなくても、基本的には画面の大きさや音響はシネコンの方がミニシアターより優れている傾向にあります。

『シャンチー』の批評の際にも書いたのですが、マーベルの『ブラックウィドウ』という映画は大手シネコンと揉めていたので、僕は某ミニシアターで鑑賞したのですが、迫力がどうも足らずがっかりしたことがあります。確かにアクション映画や多額の製作費を使った映画(ブロックバスターと言います)は確実にシネコンで見た方がいいと思います。

しかし僕はどちらかと言えば、ミニシアターの方が好きです。

ミニシアターは基本的にスクリーンもそこまで大きくないし、音響の迫力もシネコンには敵いません。客席の規模も小さく、上映している映画もインディーズ作品や自主制作映画などが基本なので、平日の夜に行くと自分の他にお客さんが3、4人しかいないなんてこともよくあります。

ミニシアターの魅力はその規模の小ささです。
シネコンでブロックバスターを鑑賞すると必ずと言っていいほど、途中でスマホをいじり始める不届き者がいますが、ミニシアターはそもそも人が少ないし、映画オタクばかりなのでそのようなマナー違反の者はあまりいません。
※通話だけでなく画面の光もすごーーーーく周りの人の迷惑になっています。スマホをいじるのはやめましょう。またエンドクレジットで余韻に浸っている人もいるのでエンドクレジットが始まったからと言ってスマホをいじるのも絶対にダメです。我慢できないなら劇場の外に出てください。

人がほとんどいない状態で映画を見るというのは没入感がありますし、見終わった後の言い知れぬ心地よさがあります。あまり好きな言葉ではないですが「エモい」とでも言うのでしょうか笑

一部のミニシアターでは映画にちなんだオリジナルドリンクを販売することがあります。これはスタッフの努力と熱意の賜物で、本当に映画が好きなんだなと思えますね。

また過去の歴史的名作をリバイバル上映したり、今はほとんど見られなくなったフィルム上映を体験できるのも、ミニシアターの魅力と言えるでしょう。
僕は毎年夏に、塚本晋也監督の『野火』と片渕須直監督の『この世界の片隅に』を必ず映画館で見るようにしています。これは兵士の目線での戦争と市民の目線での戦争の記憶を忘れないようにしたいという個人的な想いなのですが、毎年映画館で見られるのも恐らく同じような想いを持つミニシアターさんが毎年夏にこの2作を上映してくれるからなのです。
特に塚本晋也監督は夏に『野火』を上映してくれるミニシアターを回って、製作背景や戦争に向かっているように感じる昨今の国内の空気についてトークショーをして回っていて、僕も何回も参加して塚本監督の著書にサインをしてもらいました。
ちなみにトークショーの後のトイレで塚本晋也監督と一緒になり、他に誰もいないトイレで2人並んで用を足すという経験ができたのもミニシアターならではかなと思いました笑

高すぎる映画料金問題

一般料金で映画を見ると、ほとんどの映画館で1900円という値段がかかります。アメリカでは700円くらい、インドでは500円以下で鑑賞できる映画館が多い中、日本の1900円という相場価格は世界トップと言っていいレベルに高いのです。

映画に携わる仕事は大きく分けて3つあります。

「制作」「配給」「興行」です。

制作は実際に映画を作る人たち、配給は映画をどこの劇場に流すか決めたり、映画のプロモーションをする人たち、興行は映画を上映する映画館の人たちです。

この3つの仕事の関わり方が映画料金が高い原因であり、日本映画の質を下げかねない問題を生み出しています。

海外は制作、配給、興行が独立していますが、日本では制作会社、配給会社、映画館が強い繋がりを持ち、配給会社が映画館に対して強い影響力を持っています。なぜ強い影響力を持っているかといえば配給会社と多くのシネコンの経営母体が同じだからです。TOHOシネマズは東宝系、T・ジョイは東映系だったりと言った形です。

配給会社が映画を卸さなければ映画館は映画を上映できません。映画館は興行収入の7割を配給会社に支払うことになっており、例えば東宝の配給作品を別系列の映画館が別の値段で上映することは配給会社が許しません。

このような形で、大手シネコンは横並びの値段でずっとやってきました。映画料金を下げれば観客は増えるでしょうが、映画料金を下げれば配給会社が儲からないというジレンマに陥ってしまいます。日本の映画業界はテレビの盛衰や、ストリーミングサービスの登場などの時代の流れになすがままにされて、対策も取れずゆっくり衰退しています。

余談ですが、映画やアニメは配給会社も含めて多くのスポンサーからお金を集めて制作されています。これが製作委員会制度です。多くの会社から少しずつお金を集めることで、作品が大コケした際のリスクヘッジになります。一社が5億集めて作品が失敗して1億しか儲けられなかったら、4億の赤字になってしまいます。ただ少しずつお金を集めれば失敗しても、損失は少なく済みます。

しかし、スポンサーは金を儲けることと広告効果しか考えていないので、多くのスポンサーを入れることで、制作の自由度が失われることになります。

「うちの販売している車がこんなにボロボロになる姿は映さないでくれ!」
「広告会社を悪の組織みたいに描かないでくれよ〜」
「最後バットエンドにしたら売れないかも。ハッピーエンドに変更して」

こんな注文を色々つけられてしまうと、監督や脚本家の描きたい作品が作れません。日本映画でお金をかけて描写やストーリーの攻めたものや難解なもの、アート性の高い作品は作られない理由はこれです。
こういったものを作りたければ、大手の配給会社やスポンサーが入らないようにしなければなりません。そうするともちろん製作費は集まらないし、上映館数も少ない規模の小さい映画になってしまいます。

こうして日本映画は世界的に評価される作品が制作されづらい環境になってしまっているのです。

あと余談の余談ですが、日本の芸能事務所と違い、アメリカにはエージェント事務所があります。事務所に「所属する」日本と違い、エージェント事務所はあくまで仲介する契約関係。ギャラ、スケジュールや仕事の方向性を事務所側がコントロールする日本と違い、エージェント契約ではあくまで主導権がタレントにあります。タレントの要望によってギャラやスケジュールを交渉したり、仕事を探したりしてくれます。

芸能事務所とタレントの関係はしばしば「育てる」「お世話になる」と言いますが、エージェントはあくまでクライアン関係なのでもっとドライ。

日本は芸能事務所の力が非常に強いので、事務所と円満に辞められなかったタレントを芸能事務所が「干す」ことがしばしばあります。アメリカでも業界全体で「干す」ことはあっても、エージェントが「干す」ことはありません。別のエージェントに移ればいいだけですし、もしエージェントが他のエージェントのタレントの仕事を妨害したら裁判沙汰になるでしょう。

日本の場合、タレントが過激な作品に出演し、過激なシーンを演じたくても芸能事務所がノーと言ったら出演できません。良くも悪くもタレントは事務所に守られた「物」なのです。

こうして日本映画では、各事務所からの要望で俳優にあまり攻めた役を演じさせられず、映画の質を下げてしまう、国際的な俳優が育たないなどの問題が生まれてしまいます。

事務所の問題はゆくゆくは見直されなければならない問題だと思いますが、いかんせんジャニーズや吉本興行、レプロなどの事務所が強すぎてすぐ改善されないでしょう。

映画を安く見るには

ストリーミングなら月額1000円くらいで見られるのに、やっぱ1900円は払えないよって人も多いと思います。なので、映画を極力安く見る方法とお勧めの映画館をご紹介します。

まず、映画を安く見る方法は主に二つです。
サービスデイを利用することとメンバーズ割引を利用することです。

サービスデイを利用すると1100円〜1300円の値段で鑑賞できます。

毎月1日のファーストデイはほぼ全ての映画館で実施されています。ただ1日が必ず休日なわけでもなく、他の日よりも混み合う傾向にあります。

レディースデイ・メンズデイも多くの映画館で実施されています。
レディースデイは毎週水曜日、メンズデイは毎週木曜日のところが多く、料金は大体1200円。ただメンズデイは実施していないところも多いので注意が必要です。

20時以降に始まる回をレイトショーといい、レイトショー料金を設定している劇場も多いです。レイトショー料金は1300円〜1400円でファーストデイやレディース・メンズデイに比べて高めに値段が設定されていることがあります。

サービスデイの利用のみだとなかなかスケジュールが合わせられないという人もいるでしょう。そこで合わせて利用したいのがメンバーズ割引です。

多くのシネコン、ミニシアターがメンバーズ割引を用意しています。

TOHOシネマズのシネマイレージは6回見ると1回無料になるメンバーズ制度です。また映画を見てマイレージを貯めると、グッズを応募できたり、フードやドリンクメニューのサービスを受けられるのが特徴です。
TOHOシネマズは都内の多くの劇場でレイトショーを実施していないので、通常時に割引が受けづらくなっているのが欠点かもしれませんが、代わりに水曜日は誰でも1200円、シネマイレージメンバーは火曜日が1200円になります。火曜日、水曜日に見て6ポイント貯めるというのが一番お得な見方です。

ユナイテッド・シネマとシネプレックスなどのクラブスパイスというメンバーズ制度は、金曜日は1100円で見れるうえに、それ以外の日も300円割引があるので常に割り引かれた状況で鑑賞できます。
入会費500円と更新料500円かかるので、初年は4回見ると元が取れる計算です。6回見れば一回無料になりますが、2回で1000円で鑑賞することもできるので、それほど頻繁に映画を見ない人も割引が受けやすいといえます。
ユナイテッド・シネマグループの劇場は都内に豊洲、お台場、恵比寿、練馬にしかなく、都内在住者でも訪れるのがちょっと大変という人も多いのがネックです。

松竹系の映画館のSMT Membersは一回見ると一ヶ月の期限付きで割引クーポンが貰えるので、毎月1本ならどの曜日・時間でも1200円で見られます。月に1本程度しか映画館で見ないという人なら一番使い勝手のいいサービスかもしれません。さらに6回で1回無料になるので、毎月一回見ても1年で2回無料で見られます。さらに誕生月は1000円で見られるクーポンが1枚貰える、他の映画館では見られない特典もあります。

僕が最もおすすめするのは東京テアトルグループのTCGメンバーズカードです。年会費1000円を払うことで、鑑賞料金は毎回1300円、火曜日と木曜日は1100円で鑑賞できます。さらに水曜日はメンバーズカードがなくても誰でも1200円で鑑賞できます。1年間に2回鑑賞すれば年会費の元は取れる計算です。テアトルの映画館はミニシアターが多いものの、渋谷、有楽町、新宿、池袋、など山手線沿線の要所要所にあるため、通い易いです。


今回は映画館の知ってるようであまり知らない話、映画館で映画をお得に見る方法を書きました。是非未知なる映画、映画館との出会いをお楽しみください!

※割引情報は変更になる可能性もあるので、HPで最新の情報をご確認ください

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