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【第9の3話】渋谷スクランブル交差点 ネットからのぞく者編

今回の1分で読める1000文字小説は、渋谷のスクランブル交差点が舞台です。ライブカメラからの配信をスマホで見ることがやめられない主人公は、会社への戻り道、スマホを取り出し配信を見る。時刻は15時少し前。そこには、第9話の1や2に登場した者たちがばっちりと映し出されていた。



1000文字小説

 たまらないという程ではないが、クセになるくらい好きなのが街中のライブ配信動画を見ることで、特に渋谷スクランブル交差点のライブ配信はよく見ている。昔は家で見ていたが、ずーっと見てしまうので最近は外出時の空き時間でちょっとだけ見るようにしている。


 何が起こる訳でもないしテレビやYouTube動画のように盛り上がるポイントが必ずあるわけでもないが、盗み見しているという感覚がやめられない理由の一つであるのは間違いない。捕まるような悪い事をしているわけではない。盗撮ではない。だってインターネットで検索すれば街中にあるライブカメラからのライブ配信はたくさんヒットする。


 外で見ていると電波の状況によっては画質が悪くなることも多々あるけれど、顔ははっきり見えずともどんな格好の人なのかはよく分かる。東京には行ったことがないので何ともいえないが、少なくとも渋谷には色んな格好の人がいるなぁと感心することは多い。


 そして何より人がとっても多い。信号は定期的に青になっているのによくもまぁ毎度毎度あれだけの数の人が信号を待つもんだと、昔は感心していたくらいだ。


 今日は珍しく電車で出張で、会社までの帰りの電車は30分ほどかかる。こういう時はスクランブル交差点のライブ配信だ。平日の15時前だけどすごい人が信号待っているな。人が多いほど俺は楽しめる。いやー、相変わらず外国人が多いな旅行者だろうな。ミニスカートなのかホットパンツなのかは判別できないけど、今日はやけに露出度が高い女性が多い。何かイベントがあるのだろうか。おっ、なんか急いでいる人いるぞ、あれはカップルか同じような服着やがって。どう見ても右斜めに歩いているよな、相当急いでいるのか、あんなに荷物持ってご苦労様だ。ちょっと待て待て、そのカップルに向かってスーツ姿の人が歩いてくるぞ、なんであいつ斜めに歩いてわざわざあのカップルの方に向かっているのか、邪魔する気か。何かキョロキョロしていないか、どうした。おいおいあいつらこのまま行くと鉢会うぞ、どうする。おー、サラリーマンのほうがぐいっと曲がったか、しかしこいつうねうね歩いて変なやつだな、誰か探してるのか。


 青信号が赤に変わる頃にはあれだけいた人は皆渡り、また人が溜まり始めていた。ただボッーと見るのではなく頭の中でセルフ実況すると一段と楽しめる。本日は一渡り目から美味なり。

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