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北アイルランド(英国)とアイルランド共和国の輸出入取引(VAT取引)

マイナーな話で恐縮ですが、北アイルランドとアイルランドの輸出入取引は、英国のEU離脱後、大変複雑なものになっています。

英国EU離脱の際に、大きな問題の一つが、「英国領である北アイルランドとアイルランドの国境をどう取り扱うか」でした。
英国がEUではなくなると、陸続きである両者の国境を越えると、EU圏外となるため、関税やその他の取引をどうするかが論点でした。

結局混乱や煩雑性を避けるために、北アイルランドとアイルランドの取引には特別の定めが置かれています。

物の取引はEU圏内取引とみなされ、サービス取引はEU圏外取引

そのうちVATの基本情報を下記にまとめています。
ざっくり言うと、物の取引については従来と同じ(VAT還付可能)、サービス取引についてはEU圏外の取引として扱う(VAT還付不可)こととなりました。

もう少し詳細に整理すると以下のようになります。

すなわち、北アイルランドとアイルランドの輸出入取引について、物の取引は従来のEUの規定をそのまま適用することができ、北アイルランドがEUであるかのように振る舞うことができます。

これはつまり、EU圏内であるアイルランドは他のEU圏内で生じたVAT還付が可能であるため、北アイルランドで生じた物の取引に付随するVATに関しても還付可能ということです。

一方でサービス取引は、北アイルランドとアイルランドが地続きであると言うそもそもの問題点に付随しない問題なので、北アイルランドは原則通りEU圏外とみなし、EU圏外と判定され、サービス取引に付随する発生するVATは還付できません。

実務上の注意点

仕組みとしては割とシンプルな設定となっていますが、実務上、注意しなければいけない点がひとつ。
VAT還付手続きの際に請求書を税務署に提出する必要がありますが、該当請求書に物取引及びサービス取引が混在していると通常の還付手続きがとれません。

つまり、物取引とサービス取引が同時に発生している場合でも、別々の請求書で発行してもらうと還付手続きがスムーズだということです。

例えば資産の購入とその資産の設置作業と言うサービスを同時に取引するケースは多いと思いますが、そのような場合でも資産の購入に関する請求書と、資産の設置作業のサービスに関する請求書を分けて発行しないと、資産の購入に関するVATも簡単には取り戻せない可能性があります。

あらかじめサプライヤーにお願いして、そのような取引はVAT還付のために、請求書を分けて発行してもらっておくのが賢明でしょう。

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